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第1話 君に繋ぐ物語

「おにいちゃん!先に行ってるからね!」

これが僕が聞いた最後の妹の声だった。


僕の妹、柚木雲母は交通事故にあって眠っている。そう、1ヶ月も。しかしちゃんと心電図は心臓が動いていることを知らせている。しかし意識はまだ戻らない。


僕の妹は家を出てしばらくして信号無視をした車に撥ねられたらしい。

「家族の皆さん先生が。」

看護師の人がそういうと、父と母は僕を連れて先生のいる部屋へと案内された。先生は怪訝な顔をしながら私たちに告げた。

「娘さん、雲母さんは脳死と判断されます。」

そう聞くと父と母は泣き崩れた。しかし僕にはわからない。心臓は動いている。なのにどうしてそんな、死んでしまったような反応を親がするのだろう。こ

「なんで泣いてるの?心臓は動いてるって、雲母は生きてるよね?」

すると、言いにくそうに先生が言う。

「あのね、空くん心臓はまだ動いてるけど、脳が亡くなってしまったんだ、、」

それを聞いて僕はようやく理解した。妹の雲母は亡くなってしまったのだと。理解した途端我慢していた涙が溢れてきた。どうして、妹が死ななければ行かなかったのか、僕は無力感と後悔に襲われた。あの時僕が雲母と一緒に家を出てれば、、と。

その日は、妹の病室で一夜を過ごした。雲母は幸せそうに眠っているようだった。


翌日担当の先生から心臓の疾患で心臓のドナーを探してる女の子の話を聞いた。どうやらその子は僕と同い年の11歳らしい。この話を聞いて父と母は少し悩んでいた。しかし僕は少しでもその子を助けたいと思った。そして

「僕は雲母の心臓が他の子の命を繋いでくれるなら、その子が雲母分まで生きれるならその子を助けたい」

そう言うと二人は涙を流しながら、「そうね、、」と頷いてくれた。

そうして雲母の心臓は他の子へとバトンをつないだ。


そして数日後、妹の葬儀が行われていた。そして僕たち家族の前に喪服に身を包んだ二人の人が訪れた。手には手土産とみれる紙袋を持っていた。彼らはあの時の女の子の両親だった。二人は僕たち家族の前で深々と頭を下げて涙しながら感謝の言葉を述べた。

「あなたたちのおかげで私たちの娘はまだ生きることができます。本当にありがとうございます。そして空くん、気持ちの整理もまだついてないのに、娘のために移植手術を勧めてくれて本当にありがとう」

「妹ならまだあの女の子の中で生きてるから!」

そう言うと二人は涙を溢れさせながら「ありがとう」と言ってくれた。そうして二人は手土産を僕たちに渡して焼香の列へと並んで行った。そうして雲母の最後のお別れとなり、棺の中の彼女の顔を見るとまるで笑っているようだった。そうして雲母の葬儀は終わった。

雲母のいない家はとても静かだった。その後しばらくは何もかも手がつかなかった。父と母も同じような感じだった。

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