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第一話 目覚めの夜

スマホからいつものアラームが響きわたり、ただ生きるだけのつまらない日常が始まってしまう……


…………?? うん?アラームが聞こえない。起きるには早すぎた?それともスマホが壊れた?

アラームが鳴ってないならそもそも憂鬱な朝を迎えるのが嫌だから目を瞑ったままでいいや。


起きるのが早すぎただけなら時間になれば鳴るし。まぁ、鳴らなくても……別にいっか…。

学校行ってもつまんなくて、寝てるだけだし…寝よ。


...おかしい……? アラームが聞こえてこない。一度目を覚ましてから大分経ったし、鳴ってもおかしくない時間なのに。


柊花は寝返りをうった。顔と手に柔らかく薄いものが触れ、くすぐったく、耳元と体の方からガサッと聞こえた。いつものベットとは明らかに違う感触がした。パッと目を開けた。自分の視界に映っているのは、自分の部屋じゃない。視界の中で満面に広がる草と木々。


寝起きで動かない頭を無理やり、働かせる。

暗い…。朝じゃない。ってか私の部屋じゃない...?ここはどこ?

驚きのあまり急いで体を起こそうとして頭を上げると、全身が痛く起き上がれなかった。


いたた…。体がこんなに痛くなるなんて何時間寝てたんだろ。でも、とりあえず、起きて状況を把握しないと。


手を地面につきながら、ゆっくり起きた。周りを見渡してみるが、木々に覆われていて、どこかの森の中にいるということだけしか分からなかった。森は静かで、人の気配どころか動物の気配すらない。

不安になりながら空を見上げると、月がなかった。だが、代わりに月に似たような青色の天体があった。その天体は、月以上に明るかった。そして、無数の見たことのない星が広がっていた。月に似た天体と星々のおかげで、森の中にいるのだと視認できた。

月が青い。他の星も見たことない。知っている星があれば、なんとなく、方角がわかったかもしれないのに。


柊花は天体に関する本を読むのが趣味だった。読んできた知識を活かすときだと考えたが、知らない星ばかりでは役に立たなかった。


「はぁ、マジでここはどこなの。」

と誰かが答えてくれるわけでもないのに、つぶやいた。


「え?男の人の声が聞こえたような...自分の口から。」

と男の声が自分の口から発せられる。


「あー、あー、私は炭埼 柊花。」

とりあえず自分の名前を言ってみる。だが、変わらず男の声で自分の名前が呼ばれる。喉が掠れて、低く聞こえるというわけでもなく、はっきりと男の声だと分かる。


「もしかして、性別が変わってる?そ、そんな..そんなことあり得ない。」

声が震える。


「私は女の子じゃなくて、男になったってこと…な..の。」

性別が変わったことを受け入れられない。


「きっと、これは夢。夢の中だからこんなおかしいことが起こってる。いつも、現実逃避しているから、夢の中で知らない世界の人間になった気になっているのかも。」

鏡を持っていないから両手で顔の形を確認する。やはり、自分の顔よりも角ばって、ゴツゴツしている。


「でも..でも夢の中だったら、痛みを感じないはず。」

柊花は両手で頬を思いっきりつねった。

「いてて…。普通に痛いし。」

思い返してみれば、さっき起き上がるときも体全身が痛かった。


他に変わったことがないか自分の体を足先までくまなく調べた。体を見ると、制服を着ていた。柊花は、普段スカートではなく、ズボンを履いて登校していた。


制服のポケットにスマホが入っているかもしれないと思って、探ってみるがない。入っていたのは、ハンカチとティッシュだけだった。この場で役に立ちそうなものではない。


「せめて、スマホがあればまだましだったかもしれないのに。」

静寂な森の中で、ため息をつく。

今置かれている状況を自分なりに整理してみた。


五感が問題なく働き痛みもはっきり感じるし、身の回りの状況も夢とは思えないほどリアルだということが分かっている。そして、なにより自分の性別が変わってる。この情報から、見ず知らずの世界へ来ているということと異世界に来たことで性別が変わったと推測できる。だけど、こんな変なことを信じたくはない。


色々考えているうちに手と足が震えていた。突然、未知の場所へ来て、パニックにならないわけない。


ぎゅっと目を瞑り、しばらく深呼吸をする。それと同時に手を力一杯握りしめた。

「もっと、情報が欲しい。」


柊花がそう呟くと、目の前に【???? ステータス】という文字が現れた。

「え!何!?文字が浮いてる!?!?」


思わず、後ろに一歩後退りする。文字も柊花の動きに合わせて、ついてくる。

恐る恐る文字に触れる。触れた瞬間、文字が変化した。


【???? ステータス】の細かい情報が表示されたのだろうと思わせる内容の文字が現れた。

とにかく、読み上げてみる


「性別は..男。種族は魔族(吸血鬼)。体力500。魔力?能力が吸血。称号 異世界転生者。」


「え、えーと、これはこの世界での私のことが書かれているのかな。う~ん、やっぱり性別は男になってる。しかも、人間じゃなくなってるんだけど。魔族で、吸血鬼。…吸血鬼ってあの伝説とかでよくみる動物の血を吸う吸血鬼のこと?」


すると、文字がまた変わった。


そこには、【吸血鬼】と書かれ、下には?がいくつも並んでいた。

「質問したけど、何もわからないんじゃ意味ないね。この世界では、吸血鬼がそもそも存在してなくて情報がないって可能性もありえるのかな?」


文字は何も反応しない。


「いっこ前の状態に戻って」と言うと、すぐに先ほどの文字が現れた。


「んで、体力が500と。体力が数値化されてるって意味わかんない。しかも、多いのか少ないのかさえもよくわかんないし。魔力?って、どうゆうこと?まぁこの世界には、魔法があるってことだよね。?になっているのが気になるけれど、まさか、魔法が使えないってことじゃないよね」


柊花は、魔法が使える異世界に来たのだとしたら実際に使ってみたいと思った。


「私が、魔族の中で吸血鬼という一つの種になってるのだとすると、他にも魔族はいるんだろうな。この森の中で、いきなり襲われても戦えないし、足も速くないからすぐにやられちゃうだろうな」

ありもしない妄想をして不安になり、思わず辺りを見渡すが、特に何もいないようだ。


「森の中にしばらくいるけど、魔物どころか獣とかも見ない。まぁ、いないに越したことはないけれど。」


「次、能力は吸血。吸血ってやっぱ誰かの血を吸う感じなのかな。血を吸わないと生きていけないのだとしたら最悪。ねぇ、吸血ってどんな能力なの?」

そう質問すると、すぐに文字が変化する。


【吸血】他者の能力をコピーし、使うことができる。なお、コピーするには、対象に触れる必要がある。


「誰かの能力を自分のものとして使える!?!?便利な力だけど、どうにかして、触らなきゃいけないのね。」

自分の能力に驚いたが、試す術がここにはない。


「えーと、で、一番下の称号に、異世界転生者。ということは、さっきの予想は的中してたんだ。私は異世界に転生しちゃったんだ」

現実であってほしくないことが、現実だとつきつけられているような気がした。


「というか何で【???? ステータス】になってるの?炭埼 柊花って書かれてるはずじゃないの」


『????』に触れた。すると、文字が変わり「名前を変更しますか?一度決めた名前は二度と変更することができません」と表示された。


「名前を変えられる?嘘でしょ」

名前を『????』から変えたい気持ちはあったが、特にいい名前が思いつかず、諦めた。

名前よりも自分の置かれている状況を把握するだけで精一杯だったのだ。


「転生者ってことは姿も変わってたりするのかな、私はどんな見た目をしてるんだろ?人前に出ても平気だといいんだけれど」


柊花は、喉が渇いてきたのと自分の見た目を確認するため水場を探すことにした。


目印として、月に似た青い星の方へ向かって歩いた。さっきのステータスみたいに、マップとか地図とか声に出して言ってみたら周辺の地形がわかるかもしれないと思って、話しかけたが何も出てこなかった。

地道に、自分の力で調べるしかない。


青い星に向けて真っすぐ進んでしばらく歩いていたとき、視界の左端に川が見えた気がした。気のせいかもしれず、よく目を凝らしてみると、間違いなく川があった。柊花は川へ一目散に走った。


「はぁはぁ、や、やっと、自分がどんな姿をしているか分かる」

少しドキドキしながら、しゃがむ。水面に顔を近づけていき、ぼんやりと顔が映る。川に映っていたのは、白髪で、赤い目をした男だった。


「こ、これが今の私?」

自分の予想よりもはるかに変わり果てた姿に言葉を失った。起きたときに普段と変わらない感じがしたから大して変わっていないだろうと思っていたのだ。だが、それは間違いだった。実際は全く違う姿をしていた。


「髪が短い、白い……。目が真っ赤になって…」声が再び震える。

知らない世界で、知らない自分になってしまっている事実を受け入れられない。


「ああああああああああ。なんで、なんで、なんで」

柊花は不安に耐えきれなくなった。朱色の目から涙が零れ落ちる。静かな森に低い声が響く。


「なんで私はここにいるの!?どうして?」

「帰りたい。帰りたい。帰りたい。帰りたい。」

ただ、帰りたいと願った。


「あれ?どこに帰ればいんだっけ?」

そう思ったとき、頭から激痛が走った。突如、ステータスが現れ変化する。


【称号 異世界転生者/見捨てられた者】


頭を押さえながらその文字を見る。

「見捨てられたって…どうゆうこと……うっ!」痛みがさらに増す。だんだんと視界が暗くなり、柊花は気絶してしまった。

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