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第7話 平和な休暇と戦士の国ズリャオ

任務が終わった彼らは、訓練を休んでもいい任務休暇が与えられ、皆、買い物に来ていた。

今日も変わらず、賑やかで綺麗な景色が目に入る。

子供は愉快に走り回り、大人は忙しそうに働いている。


「スミスは何買うの?」


ルルはスミスの顔を覗き込むように話しかける。


「僕は買うというよりかは修理かな〜。愛用してるまな板が、ボロになってきたから」


「大事にしてるもんね。アザゼルは?」


「俺は斧の新調だな。前のゴブリンのせいで、今にでも壊れそうなんだ。直しても今後、使い物にならなくなりそうだしよ」


そう言うと、アザゼルは壊れかけの斧を見せた。


「あっそ、オノバーは?」


ルルは素っ気ない態度で会話を流す。


「お前から聞いたのに、あっそはねぇだろ?」


「適当に、プラプラ周ろうかな」


オノバーは気にせず、質問に答えた。


「じゃあ、オススメの店があるから行こう!」


「聞けよ!」


アザゼルは怒りを露わにするが、それを横目にオノバーはあの頃とは違うドゥースターを見渡していた。

その視線はある店で止まる。


(なんだ、あの店。射的? もしかして、殺し屋か? ドゥースターも物騒になったもんだな......)


彼は何か勘違いしているようだった。


「オノバー君、どこ見てるの?」


「イヤ、ナンデモナイデス」


「あ〜そう? じゃあ......」


「行くよ〜〜〜!!!」


ルルは飛び跳ねた。


-----


お爺さんは虫眼鏡を取り出し、まな板を隅々まで見る。


「年代物だねー、直すには時間がかかる。そうだな.....五日後の昼ぐらいに来てくれ。その時には終わってるだろう。料金は、金貨一枚な」


「意外と安いんですね」


スミスは金貨一枚を麻袋から出すと、慎重に机に置いた。


「毎度あり〜!」


鈴を構えたお爺さんは彼らが出る際にそれを鳴らした。

その周りにいた店員さん達も「ありがとうございました〜!」と一斉に声を上げ、拍手もした。


四人は恥ずかしそうに頬を赤らめる。


------


今度はアザゼルのために武器屋さんに来た。


「切れ味が良くて、長持ちする斧はあるか?」


「ふぅん? 珍しい注文するねぇ? 斧よねぇ? ちょっと待ってってぇ」


妖艶な雰囲気を放つ女性は武器棚を裏側へ変えると、そこから、大きい斧を片手で取り出し、カウンターテーブルの上へ置いた。


「ふむ......」


アザゼルは斧を持たずにそれをじっくりと眺める。


「なるほどな、俺の目を騙そうってことか。噂通りの使い手を選ぶ人だ」


「ふふ、よく見抜いたわねぇ。武器はその人にあったもので無くてはならないと思っているのぉ。珍しい物や価値の高い物が多く揃ってる、ここでは特にねぇ」


女性が隠していた左手には先程より大きな斧が潜んでおり、それを机にゆっくりと置く。


「高いと思うけど、金貨二十枚でお願いするわぁ」


「それはあまりにも高すぎじゃ.......」

オノバーが値段に驚きを見せるも、アザゼルはその金貨を軽く出し、大きな大きな斧を手に取った。


「ありがとうございましたぁ」


「こちらこそだ」


店を後にする。


スミスの方へオノバーは寄った。


「皆さんは何も言いませんでしたけど、あんな大金を使って大丈夫だったんですか?」


「大丈夫だよ。バリバリ現役鍛冶師の家系でね、武具に関しては、かなり目利きがいいんだよ。あと、シンプルに目がいいのもある」


「へぇ〜、凄いですね。ん? いや、それだったら、親とかに頼めばいいのでは.......」


「親が嫌いらしいよ」


「なるほど」


「親というよりかは、あの家の空気感っつ〜か、雰囲気っつ〜か。まぁ、そんなところかな」

その会話の中にアザゼルは間に割って入る。


「そういえば、耳も良いんだった......」


先程よりも距離を縮め、スミスは呟く。


「マジですか」


オノバーも小声で返す。


「だから、頼めないことも無いけど、色々と面倒でな。今度、紹介してやろうか?」


「是非とは言いづらいですね」


そう話していると、少し離れた場所にいるルルが頬を膨らませ、三人を睨みつけた。


「ルルが不機嫌になったな。早く戻ろう」


彼らは急いで戻る。


「よーし。ちょっと時間かかるけど、皆着いてきて!」


彼女は駆け出した。


ルルのオススメでオノバーらは飯屋、薬屋、魔導具屋、服屋、靴屋、家具屋を巡る。

それらを見ている間にすっかりと夕方になっていた。

皆は帰路につく。


「......結局。オノバーは服を買い換えただけだったな。買い無さすぎだろ」


アザゼルはジュースをストロー越しに飲みながら、そう言った。


「それとは逆にお前は買い過ぎだ。いくら、自分の金と言えどもな」


ルルは袋十個以上を両腕に通して、ルンルン気分で歩いていた。


「女の子には沢山の物が必要なの!」


「はぁ......」


アザゼルは溜息をついた。


「散らかりそうだなー」


と、スミスは感情がないくらいに、棒読みであった。

それだけ掃除が嫌なのだろう。


「あ〜......スミス、買いたいもんあったら、いつでもいえよ?」


「ありがとう」


「オノバーもだ、新入り一人だけでは心配だしな! どこでも着いていってやる!」


「ついて来なくていいよ。一人でできるって!」


オノバーの顔に少しだけ笑みが宿る。


「オノバーって気難しいやつなのかと思ってたけど。可愛らしい顔できるじゃん!」


そう言うと、ルルがオノバーのほっぺたをつつく。

それを30秒ぐらい繰り返す。


(長いっ)

あまりの長さにオノバーは驚きを見せた。


「そろそろ離れなさい」


永遠につつくルルをスミスが引き離してくれたが、ルルはその行動にハブてた。


アザゼルはそれを見て、フッと笑いかけた。


「おい、笑ったな!」


「すまんすまん。随分と滑稽だったもので」


「許さ〜ん!」


ルルは飛びかかろうとした。


「だ〜め」


しかし、スミスがルルの脇下から腕をかけ、動きを抑制する。


「ちょっと待ってよ!」


彼女はその拘束から抜け出そうと体をよじったり、暴れたりしたが、いくらやっても、びくともしなかった。


「もうやらないから、離して!」


と言いつつも、ルルは、またもやジタバタする。


「うーん。そろそろ、日が落ちそうだし、そうしようかな」


スミスは暴れんぼうの獣人を下ろした。


「お腹減った〜!」


「お前は忙しい奴だな」


「じゃあ、今日は鍋かな」


「「了解!」」


------ある国にて。


戦士と国王は深刻そうな顔をしており、かなり緊迫した状況であることが分かる。


「国王! 沈黙がアナタ様の答えですか? そうなのであれば、私はこの会議から降りる」


その男は勢い良く席を立ち、両手で机に強烈な衝撃を与える。


「おい、ルガゼ。お前がそんなに焦る理由も分からなくもないが、国王に怒りを吐くのは違うと思うぞ?」


気品のある戦士はルガゼに静かな怒りを見せる。


「ゴジャ! だがこれは......!」


ルガゼの目の前の席に座っている男が溜息をつく。


「ルガゼ。少し外の風に、当たって来たらどうだ? 今日のお前はおかしい、冷静さが欠けている」


「逆にお前らの方が風に当たってこいよ。ウフェ! 何故こんなに冷静でいられる! ゴジャも! ジッテルも! デイアンさんも! 国の存亡が危ういというのに......!」


デイアンさんと呼ばれた男は席を立ち、タバコをつけた。そして、ルガゼの席の方にゆっくりと歩いていき、彼と肩を組んだ。


「どうした、どうした?」


「デイアンさん。俺はどうすれば......!」


「心配することは無いさ。皆、冷静に見せようとしているだけだ。こんな状況でお前だけ焦ってる、なんてことはない。俺は目が良いんでな、良くわかる。実は俺も焦ってるんだ」


デイアンは肩を組むのをやめ、今度は国王の方に行く。


「国王、どうする? 白旗を上げるかこっちが仕掛けるか。ちなみに俺はどちらでも構わねぇよ?」


国王は肘掛けを指でトントンと二回打つ。


「なるほど。あんさんはそれを選ぶわけか」


しかし、その空気を読まずに兵士が前に出る。


「すみません、デイアン殿。我々には、この会議内容が聞かされておりません! 出来れば、説明していただけないでしょうか! 兵の指揮にも関わってまいりますので!」


「ハハハ! 君、勇気あるね〜。気に入った! というか、国王話してなかったのかよ〜! あ〜、えぇとな。少し前にここ、『戦士の国ズリャオ』様に対して宣戦布告があった......」


「『あの戦争』で戦力が削れている今を狙うなんて......もしかして、帝国ですか!?」


「ブッブー、不正解」

デイアンはタバコを灰皿に押し付けて強引に消した。

そして、戦士の方を、戦士長の方を見る。

「ドゥースターだ」



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