第5話 新たな3人の友
オノバーは扉を開けた。
そこには3人......いや、2人が争う光景があった。
ガヤガヤとうるさい声が聞こえる反面、中は家具や雰囲気は穏やかそのものだった。
「お前なぁ! 俺のケーキ食うんじゃねぇよ!」
金髪の筋肉質な男が先制攻撃を仕掛ける。
どうやら口喧嘩のようだ。
「名前を書かなかったアザゼルが悪い!」
灰色の髪の獣人はアザゼル?に対抗する。
「名前書いても、お前は食うだろ!」
「まぁまぁ2人ともそこは穏便に......」
糸目で黒髪の男が2人の間に入った。
「邪魔するんじゃねぇ!」
アザゼル?はその黒髪の男を壁まで叩きつけた。
その瞬間、口喧嘩から喧嘩に昇格した。
「カハッ......!」
2人は正面から睨み合っている。
何故か、その間にバチバチとしたものを感じる。
黒髪の男はこっちに気づく。
「あっ。いらっしゃい!」
その男は吹っ飛ばされたにも関わらず、無傷であった。
「この度、1152番寮にお世話になります。オノバー・ウィネー・レイクです。どうぞよろしくお願いします」
黒髪の男は中に入ってというように手招くのでそれに従い彼は中に入る。
「そんな固くなくていいよ。かしこまるような相手じゃないしね。あの人はともかく、この2人は」
「「あ゛!?」」
2人はそれに反応し、扉の方を向く。
オノバーを見るや否や、喧嘩するのをやめた。
「皆、自己紹介しようよ。僕は防衛部隊の一番小隊十級兵士スミス・リュード。戦闘は苦手だけど、雑用は任せてね」
「はぁ。見苦しいところを見せてしまったな。俺は戦闘部隊の五番小隊十級兵士アザゼル・ティエル! よろしくな! ......おい、お前もしろよー?」
アザゼルは獣人に向かって煽りを入れる。
「言われなくてもするって......私は特殊部隊の二番小隊九級兵士ルル・カムイ!」
ルルはウインクしてきたが、その真意は掴めなかった。
「あ、あとメンバーがもう1人いるんだけど、今。任務に行っててね。帰ってくるのはもう少し先になるかも」
「いや大丈夫ですよ。任務なら仕方ないですし。それより、なんちゃら部隊とか、なんちゃら小隊とかってなんなんですか?」
「あれ? 入ったばっかだから、知らないのかな? ここでは戦闘部隊・防衛部隊・特殊部隊の3つの部隊があって、兵士はそれぞれの小隊に入るんだよ。ちなみにその上司みたいなのが兵士長と呼ばれる精鋭たちだよ。多分、オノバー君も会ったことあるんじゃないかな? 試験官とか」
(あの人、兵士長だったのか、気付かなかった。昔の兵士長の印象が強く残ってるな......)
「そういや、前貸したゲーム、返せよ!」
「や〜だ! あれ、終わってないもん!」
アザゼルとルルはまた喧嘩を始めるが、スミスはそれを横目に料理を始めた。
「何か手伝いましょうか?」
「う〜ん、大丈夫かな。1人での作業の方が慣れてるし、オノバー君は風呂入っておいでよ。アザゼルかルル用に溜めておいたんだけど、あの調子だからね」
「分かりました」
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オノバーは浴槽の中に入った。
「久しぶりにちゃんとした風呂入ったな」
(そういや、国王によく、露天風呂に入らせて貰ったな......まるで、あの頃が遠い過去のようだ)
彼は手をかざし、思う。
(おっと、危ない。寝そうだった)
リラックス効果の弊害がオノバーを襲うが、オノバーは手に雷の電気を纏わせ、それを水につけた。
途端に体全体にビリビリとしたものが走る。
(これでよし......そろそろ上がるか)
浴室から出ると、目の前の木箱に服が置いてあり、自由に使って!と書かれている紙が貼られていた。
(風呂に入ったのに汚い服着たら、意味無いもんな。多分、スミス......さんだろうな。よく気が利く)
彼はリビングに戻った。
机には美味しそうな料理が食卓に並べられていた。
米と栄養がありそうなサラダ、コンソメスープ、卵焼き。
そして食卓の中央にはフライドポテトや唐揚げなど油物。
「丁度良かったよ。できたから、食べよう!」
オノバーの家ではこんな豪華なものは食べれなかった。
野菜はともかく、肉となると。
「「「「いただきます!」」」」
オノバーはまず、卵焼きを贅沢に頬張った。
「美味い......!」
「そう? それは良かった」
「おい、ルル! 唐揚げ取りすぎだぞ! 俺たちの分がほぼないじゃないか! しかもフライドポテトまで!」
「何を言ってるのよ! これは早い者勝ち! 唐揚げとかフライドポテトを最初に取らなかったアザゼルがいけないんだからね!」
そう言いながら、ルルは唐揚げを口に放り込む。
「だからといって、ほぼ全部食っていい理由にはならん! 食事はな、皆で同じものを食べるから美味しいんだ!」
(コイツら。いつも、喧嘩するじゃん)
「二人とも、喧嘩するのはよしなさい。オノバー君が見てるからね? 先輩としてみっともない姿を晒さないこと」
スミスは2人に喝を入れる。
その姿はまるで、お母さんである。
すると、アザゼルとルルが物静かになった。
ルルは自分のところに大きい唐揚げを残し、小さい唐揚げを皆に配った。同時にサラダを自分の皿に乗せず、三等分にし、皆に配る。
「食え」
アザゼルはそのサラダをルルの皿に移す。
「やだ」
ルルはまた、サラダをアザゼルの皿に移した。
それをずっと繰り返す。
「はぁ......」
スミスがため息をつくと、ルルはサラダを食べ始めた。
アザゼルも急いで、料理を食べる。
オノバーは気にせず、スープやサラダを食べている。
そうして食事を終えると、スミスはエプロンをつける。
アザゼルとルルは皿を持ち、スミスの方を向かう。
「へっ、さっきはスミスに迷惑かけたからな。皿を片付けるぜ。ルルもやるぞ!」
「もうやってるわよ! バーカ!」
ルルはまた、アザゼルに喧嘩を吹っかける。
「は? 誰がバカだって?」
「バカはバカでしょ? 後輩にあんな見苦しい姿見せてさ!」
「はぁ? 元はと言えばルル!お前がやっ......」
二人は怒りで我を忘れ、皿を落とし割ってしまった。
見事に全て。
あっ......これは、やばい。とスミスを除いた三人が思うことだろう。
「オノバー君、怪我ない?」
しかし、優しい笑顔でオノバーに話しかける。
「い、いえ。大丈夫です」
「俺たちの心配もないのか?」
「二人とも、早く割った皿を片付けて下さい。わかっていると思いますが、一応、言っときますね。後で説教しますから」
背中から発せられる気迫はこの場にいる者を黙らせた。
「「はい......」」
二人は急いで掃除すると、奥の部屋で礼儀正しく正座してスミスを待つ。
「あそこに寝床がありますから、オノバー君は先に寝といてください」
スミスはそう言うと、奥の部屋へと向かった。
オノバーは風呂場の近くでボロボロな歯ブラシを取り出し、歯磨きをする。
それが終わると、一番奥の布団へとダイブした。
しかし、寝ようとするも、中々寝付けない。
彼は目を開けた。
環境が違うせいだろうか?
奥の部屋で誰かが暴れ回っているからだろうか?
いくら考えても無駄であった。
ただ、分かるのはどちらも違うということだけ。
なので、オノバーは静静と目を閉じ、朝になるのを待った。
そこから、一時間経った頃。
誰かが扉を開け、右から二番目の布団へドサッと堕ちた。
続けて、またもた誰かが布団に堕ちる。
もう一時間後。
(なんだこれ......)
オノバーは自分の上に乗っている何かをどかそうと必死にもがいたが、その何かは動かない。
いびきが聞こえる。
その時に分かった、上にいるのはアザゼルだと。
退かそうと思っても、体格がゴツイせいか退かせなかった。
(重すぎだろ......無理だな、これは)
なので、オノバーは諦め、その状態で朝を迎えることにした。
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「オノバー、なんか疲れてないか?」
アザゼルは何事も無かったかのように、椅子に座り、料理を口に運ぶ。
「そうだね。君のおかげで全身筋肉痛だよ......!」
そのせいか、オノバーの一個一個の動作はぎこちないものであった。
「?」
アザゼルは何かあったことにすら、気づいてなかったようだ。




