二人の救出
遡ること数分前......
念視で総兵士長の戦闘を見ていた俺であったが。
流石にやばいと思い城へ乗り込む。
さて......どうするか。魔法空間をぶち壊してもいいんだ......いや、やめた方がいいのか?でも見殺しにする訳には......!
俺は人間の醜悪を知っている。
人は海だ。浅いところは明るくて見やすいが、逆に深くなるにつれ闇が露わになっていく。深く沈んでしまったんだ。
今までもそうだ。俺が若齢でありながら、強い力を持っていたことを知った先輩は化け物扱いした。助けたのにも関わらずだ。恩なんか気にしない。何故なら、化け物に助けられるぐらいなら死んだ方がマシだからだ。
ある人も店が潰れたのを俺のせいにし腐った食べ物や酒瓶を投げつけて来た。もちろん痛みはないが感情もなかった。
殺し屋のリストにのり殺し屋が送られて来ることも多々あった。だけど、同じ英雄級の皆は温かく迎えてくれた。
杯も交わした。
でも、俺の中にはあの絶望の時が忘れられなかった。
またあの時と同じようになったらどうしよう、俺をちゃんと見てくれているのか。そんな考えが頭をよぎる。
そんな時だ。アザゼルが窓を破ってきやがった。
「アザゼル!?なんで!?」
「オノバー!ここにいたか!」
「お前......気絶してたはずじゃ!?」
「やっぱお前、裏あるよな?口調もちょっと違うし......俺たちを戦場から遠ざけようともしたな。俺、頭悪ぃけどそんなことぐらいは分かるさ。あと、俺の神之啓示忘れたか?意識が続く限り倒れねぇ!」
「ふっ......そうか。そうだったな」
「お前、実力隠してんだろ?俺、倒された時、本当は起きてたんだよ」
「!?」
「そんな驚くこともないだろ?まぁいいや!とりあえず、気にすんなって!お前がどんだけ強かろうが俺たちの態度は変わらねぇよ!」
「本当か?すまない、俺は元々、人間不信でな」
「なるほどねぇ......だけどそれで強い力を使わないなんて勿体なくないか?助けられる人が目の前にいるのにその力を使わなかったら助からない命だってあるんだ」
「だが、俺は怖い......!どれだけ明るく優しい人でも狂気に染まることだってある。俺はそれを痛いほど分かっている。いや、痛みなんてなかった。一つの善をしただけでいくつもの悪が来る。それに畏怖している自分にも怖い。そんな状況に1回でもなったことがあるか?1回、そんだけだ。そんだけで人生に根付いてしまう」
「いんや、なったことはねぇ......お前がどんな境遇で生きてきたのかも知らねぇ、赤の他人がどうこういえる問題じゃないが......力を使うのがこえぇなら俺らの前だけでも使っていいんじゃないか?俺は死なない!スミスも一分間だけは死なん。ルルはまぁ大丈夫だろ。ギルマンもつえぇ。そしてお前は誰よりも強い。強く生きてきた......だろ?どれだけお前が責められようが俺らはお前を守る。仲間じゃねぇか」
アザゼルとザグの姿を重ねる。
「フフフ。なんか、アザゼルが真面目な事いってると笑えてくるな〜」
「は!?ひっでぇ!折角、慰めてんのに......」
「いやいや、ありがとう。おかげで迷いが消えた気がするよ」
「というか、なんでここなんだ?下では総兵士長と総戦士長がバトってやがる。でも、ここにはなんも無いぞ?」
「いいから見とけよ」
俺は概念化された結界を退歩させた。
「なっ!これは!」
「そう、魔法空間!実際に見るのは初めてだろ!これが魔法空間の"外側"さ」
「これは"アビス"さんでも無理かもな......」
"アビス"......アザゼルの話し方からして現ドゥースターの最高戦力だろうか。
「とりあえず、これを突き破る。アザゼルは待機しといて欲しい。中にとんでもねぇやつが潜んでやがる」
「いや、俺も行く」
「ダメだ。お前が幾ら死なないといっても加減がある」
「じゃあよ。ヤバくなったら俺を呼べ!それでいいだろ?」
「わかった。そん時はバフをかける。あと、お前を呼ぶ時は盾にする時だ。いいな?」
「まぁ扱いが雑だが、いいよ。それで」
ここから今に戻る。
「そんなのあったなぁ......」
「おいおい、もう少し覚えてくれよ」
それを話している間に処刑人の体はもう動くこともままならなくなっていた。
すると処刑人の光沢のある体が生々しい肉体になり損傷もなくなった。
「は!?」
「マジで言ってんの......?結構キツかったのに再生とかありかよ......」
いや、生身の人間なら再生も有り得る。だが、これは人形だ。魂を入れ込ん......わかった!そういう事か。
人形は器としての強度で無理矢理、魂を抑えていた。
でも、器が削れるごとに魂がどんどん力を増していく。
それにより魂が人形に勝った。人形に受肉したんだ!
ということは今目の前にいるのはマジモンの処刑人!
多分、俺たちのことを敵と認識する......!
処刑人は敵に容赦はない!
「アザゼル!下がれ!」
そういうが、アザゼルは遅いタイミングで下がってしまった。
処刑人がその隙を逃すはずもない。
アザゼルは体の数十箇所を刺突された。
傷の位置は臓器や大きな血管を正確に狙っていた。
「アザゼル!!!」
その瞬間、処刑人は俺の目の前に行くと魔法を放とうとした俺の両手を一緒に貫く。
処刑人はそのまま俺の心臓も犠牲にした。
そして槍を引き抜くと俺の首を斬ろうとする。
アザゼルも致命傷、絶体絶命である。
処刑人の刃が首に到達しようとしたその時。
「な〜んてね!」
俺は処刑人の槍を掴む。
何かに気づいたようだがもう遅ぇ!
処刑人の顎に蹴りを一発お見舞いした。
モロに喰らったせいか、処刑人がよろける。
「この強さ......"十六魔軍"の者か?それとも、"二十屍鬼団"か?いや、それなら一目見たことがあるはず。もしかして、どれにも属していない......?」
俺は立ち上がり、距離を取る。
「処刑人。俺は確かにその二つには属してねぇ。それは1200年前の話だ。今はお前がいた1200年後の世界」
「そうか、だが。貴様が誰であれ。ズリャオに仇なす者には鉄槌を、制裁を、厳罰を下す」
こりゃ、話を聞いてくれなさそうだな......!
「1200年前の亡霊が現代の者にそれらを下すのは、なんか烏滸がましくないか?」
「年は関係ない。俺は大罪を捌くまで」
「それがお前の選択か......ハズレだ。アザゼル、ちょっと離れてろ。いや、表現が少し違うな。ズリャオから出ろ」
処刑人はアザゼルの方を向く。
「生きている......神之啓示か」
「わかったわかった......けど死ぬなよ?」
「死なねぇよ。俺を誰だと思ってやがる。生意気なクソガキだぞ?どんなに卑怯な手を使っても勝つ」
まぁ、相手は全盛期より程遠いぐらい弱いがな。
アザゼルが全力疾走で逃げると。
処刑人は槍を短く構え、俺の目を潰しにかかる。
だが、俺の間合いに入ったのが命取りだ。
槍は到達する前に崩れ落ち、処刑人は地面へ堕ちる。
「お前は弱すぎだ。あらかた予想はつくが、人形の強度があまりにも高かったんだろ?それで魂も表面上に出るのは一部だけ。元々、魂を入れるにあたって術を使ったろうが、それが不完全だった。それにより魂は一部しか封入出来なかった。今の状態は魂の一部から出たほんの欠片でしかない。なんなら思考だって人形の影響を受けているらしいしな。もう救うことは出来ん。その代わり安らかに眠れ」
処刑人が立とうとした矢先に中心から大きな爆発が起こった。
それをアザゼル達はじっと見ていた。




