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誰か翼のラクリマ  作者: 仲元心影
プロローグ
5/6

序章四話 《緊急クエスト》



 そう機嫌きげんを損ねたアスナの口調は続く。



「そもそも、何で今、動き出したのかなあ。〝手がかり〟なんてこれっぽっちも……」

 言葉が弱くなった。



「……いつから?」




( アカネの立場たちばじょう、三日前は知ってるはず )


 そう思考した上で、アスナは確信した。



「……あの《夢》は《現実》で、何か〝イレギュラーな戦闘〟が、起こった?」



「ッ!?」



「え、何て!?」

 状況が分からない。



「《姫様》は知ってるんですか!? 〝敵〟の動きを!?」



「え、あ……何でもないわ。そう思っただけよ」

 ウルルの前で言ったのが悪かった。


 必死でアスナは首を振る。



「そう思ったって……貴女あなたの《ラクリマスキル》は……」



「あ、いや。さすがに分からないと思うよ」

 少し動揺してしまったが、ヤマトは何とかフォローを入れる。




「アスナちゃんの《ラクリマスキル》は《奇跡オラクル》。自分に対して有利な効果を持っていくスキルですよ。さすがに《未来予知》のスキルでは無いと思います」



「うっ……だって、《姫様》は……」



「いや、いくら《テラリア様》の《加護》があるとは言え。そんな心身に負担するスキルは、扱えないと思いますよ」



「………………」



( 何とかごまかせた…… )



 ウルルは納得いかない顔を出しているが。


 ヤマトはとりあえず、ため息を付く。



「……ごめん、ややこしくなったよね?」

 申し訳なさそうに、アスナは頬をかく。



「次からは気を付けてください」


「……うん、分かった」

 ちょっと怒られたので、話を修正していく。




「えっと。とりあえず、クエストをください。出来るだけ、〝グリード〟には近付かない様にするから」



「………………」

 ウルルはまだ納得していない。


 だけど話が進まないので、もう諦めた口調で話し始めた。



「……はぁ。分かりました。とりあえず、このクエストを斡旋あっせんさせて頂きます」



「はい……」


( めっちゃ睨まれた…… )



 内心、アスナは危機感を持ちつつも。


 持ってきた〝依頼書クエスト〟に、目を通す。




「貴女達は一応、レベル三十以上の実力者なのですが……。受けませんよね?」



「受ける訳がないじゃない」


「まぁ、部長がいない事には……無理ですね」

 キッパリとしたアスナと、苦くしたヤマトは答える。



「そうですよね。安心しました」



( どんな〝クエスト〟? )



 ウルルのあんな笑顔、ヤマトは見た事がない。



「それでは、紹介させて頂いたクエストの内容についてですが。いくつかの注意点を挙げさせて貰います」


「あ、はい……」

 若干、不安が残るものの。


 アスナ達は説明を聞いていく。



「まず、最初にお伝えした通り。現在〝アンチ・グリード〟の大量発生によって、《緊急クエスト》が発行されております」



「うん、そうだね……」


「まさかとは思いますが、〝規制〟ですか?」



「〝規制〟ですね」


「あー、なるほど……」


( それほどまで、緊急事態なのかな? )


 片手を上げたヤマトは、再び苦い表情を浮かべる。



「幸い、低レベルの発生ですから。何かと余裕があるんです」



()()……」


( 絶対《くさかげしゅう》が動いてるわね…… )


 アスナの脳裏に〝アカネ達〟の姿を思い浮かんでしまったが。


 話がややこしくなるので、口には出さなかった。



「ですから絶対、余計な所には行かないで下さい」


「うっ……」

 あの真っ直ぐな視線に、アスナは突き刺さる。



「うう……」


「まあまあ……。とりあえず、指定した場所でエネミーを狩ればいいですね?」


「はい、そうです。討伐対象である〝ブラックナイト・スライム〟の生息地、《翡翠ひすいいろの草原》で遂行してくれれば」



「《翡翠色の草原》……」

 アスナの中で、何かが引っかかる。



( 確か、場所的に〝アンチ・グリード〟が関わってきそうなんだけど…… )



 軽く見た〝依頼書クエスト〟をよく見ても、状況的には行っては()()()()()()なんだけど。



「……だから、()()()()()()()()()と」

 ヤマトは察した。


 そこを指定した場所の近くに、〝とある聖域〟がある事を。



「…………」

 彼女は少しの沈黙を選んだ。


 どうやら何かしらの〝事情〟が関わっていそうだ。



「……とりあえず、お受け、致しますよね?」



「…………」


「…………」

 何とも言えない、ぎこちない笑顔だったが。


 思わず、ヤマトの顔を見てしまったが。




「……分かった。引き受けるよ」

 問題はないと。


 そう頷いてくれたから、アスナはウルルに向かってこう言えたのであった。






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