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誰か翼のラクリマ  作者: 仲元心影
プロローグ
4/6

序章三話 《ギルドカウンター》




――――エメラルド王国にある、とある建物。



 それは立派で、《ギルドカウンター》と呼ばれる場所であった。



「………………」

 アスナ達はその建物に入り、辺りを見渡みわたした。



 ここでも多くの学生がいたが、国家を守る〝警察けいさつ〟の様な役割を持つ《ギルド》、《王国近衛騎士団エメラルド・ナイツ》のメンバー達まで来ていた。



 皆は〝掲示板けいじばん〟にかかげられた依頼いらい――――〝クエスト〟を見たり、その手に取ったりしていた。



 他にもショップでポーションを買う人、飲み物を飲みながら雑談ざつだんする人、自分の《ギルド》を勧誘かんゆうする人のエトセトラ。



「ううっ……」



「あはは……結構多いね……」

 そう苦い顔を浮かべながら、アスナ達はカウンターの方に足を運んでいく。




「――――お、あれって……」


「間違いないな……」



「………………」

 余りにも視線が、注目が集め過ぎている。



「――――ッ!」

 目の前を通り過ぎるだけで、騎士達から〝敬礼けいれい〟を送られる。



「……また、あの《姫様のギルド》だ」


「何で、《生徒会》に入らないだろう?」



「…………ッ」

 学生達のウワサが、アスナの神経にさわる。


 人混みの中に居たくない理由の一つだ。



「あ……」

 急に速度を上げたアスナをつい、手を伸ばしてしまう。


「………………」

 ヤマトは分かってしまう。


 知りたくない無力感を。



「―――――」


( 何で、誰も……()()()()()()? )


 苦しい、悲しい、イラつく。


 それを〝昔の様に〟飲み込もうとして、ちょっと出てしまった。


 いつもの事なのに。



「………………」

 急に悔しくなった。


 そして、急にむなしくなった。


 アスナは立ち止まってしまった。



( ……らしく、ないな……わたし )


 冷静な判断が出来る様になって、アスナは受付の人に声をかける。



「……あの、すみません」



「……はい」

 何か諦めた様な口調で、女性が反応する。



 彼女の名前は、ウルル・インベントリ。


 赤いリボンを付けた、赤いオカッパの看板娘かんばんむすめ


 受付嬢うけつけじょうらしく、赤い帽子とスーツを着ている。




「何か稼げる、討伐クエストってありますか?」


「《姫様》、ご自身の立場をご理解してから言ってください」

 真顔で言われた。



「理解して言ってます」

 ストレスを感じながら、アスナは真顔で返す。


「あはは……」

 頬をかきながら、ヤマトは加勢する。



「まぁ、《生徒会》に部費ぶひを削られてしまったからね。だからこうして、かせぎに来たって訳です」


「……だったら、《生徒会》に入ればいいんじゃないですか」



「―――――ッ」

 ウルルの言葉が、アスナの心をむしばむ。



「そう言う訳にはいきません。《生徒会》――――《王選学園エメラルド・生徒会ジャッジメント》はアスナちゃんの事を、ただの〝お飾り〟程度としか思っていません」


「いや、お飾りって……」



「実際にそうですからね」

 内心をぶちまけながら、ヤマトはアスナをかばう様に立つ。



「十才の子供が、強制的に〝政治〟を押し付ける。 それってどうかと思いますよ」



「いや、《姫様》を戦場に連れていくの方が、問題がありますよ!?」

 こっちも正論だった。



「それでも―――――それがアスナちゃんの《意志》なら、僕はそれを尊重そんちょうしたい」



「……ヤマト」

 アスナの胸が、心が軽くなる。


 でも、ヤマトの立場が悪くなるのが怖くなってくる。



「………………」

 ウルルは困惑する。


 チラリと後ろを振り向き、お偉いさんとコンタクトを取る。



「…………(無理無理無理無理)」



「……はぁ」

 結果は惨敗ざんぱい


 彼女は溜め息を付くしかない。



「分かりました。〝依頼〟を紹介させて頂きます」

 もう折れざる得ない、そう言った感じでカウンターを後にする。



「―――――」

 ヤマトに悪い事はない。


 自分が望む事が出来る。


 そう言う嬉しさが、アスナの胸いっぱいに溢れ出してくる。



「…………」

 アスナの顔を見てたら、笑えてくる。


 そんな風に、ヤマトも釣られた。






 気分穏やかに待ってみると、ウルルが一枚の〝紙〟と一緒に戻ってきた。



「……ゴホン」

 気を取り直して、ウルルは口頭で何かを伝え始めた。



「それでは、《姫様》。最近の〝外〟の状況、分かっていますか?」



「……? 何かあったの?」


「……あ」

 何か心当たりがあるなと、ヤマトは思い出した。



「もしかして、〝部長〟が言ってたのって、これの事?」



「え?」



「ええ。まさしく、その通りです」

 内容を察したウルルは頷く。



「〝外〟は今、大量の〝アンチ・グリード〟で対応が追われています」



「えぇ!?」



「その為、レベル三十以上の実力者には《緊急きんきゅうクエスト》を要請させて頂きます」



「そこまで?」


( その割にはずいぶん楽しそうなんだけど )



 横目で見てるヤマトにアスナは呟く。 



「……まず。何でわたしに伝えないの?」



「あー。たぶん、アカネちゃんが伝えるな。と言われたんでしょう」



「さすがに〝グリード〟相手に、一人で戦わないわよ。バカ」






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