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第九話:名無しのナナ

世界の質感、か。不思議な言葉があるものだ。ぼくは目の前にいる、世界の質感という意味の名前を持つ、冴えないマスコット人形の様なクオリアさんを見る。この何もない白い世界に、世界の質感を感じられないこの世界に、クオリアさんは自分自身を質感と称した。

なんだか滑稽で、なんだか少し寂しくて、そしてなんだか愛おしい様な気がした。

「もし決まらないなら、俺がつけてやろうか?」

「何をですか?」

「本題忘れてるだろ、お前」

クオリアさんは、心底呆れたという風にぼくを見た。そうだ、今は自分の名前を考えているところだった。さて、どうするか。

「それじゃあ“ナナ”って呼んでください」

「意外と普通な名前を付けたな。ひねくれているお前の事だ、なんか意味あるんだろう?」

ひねくれているという言葉が引っ掛かったけれど、確かに意味はあった。そして、多分自分はひねくれているタイプの人間だという自覚もあったから、反論せずに自分の意図を説明した。

「“名無し”だから“ナナ”。自分の名前がないから、名無です」

クオリアさんは、数秒間、まるで豆鉄砲を食らったハトの様な顔をした後、

「そうか、なるほど言いえて妙だな。名無か、悪くない」

と、しきりに「なるほど」とつぶやいた。


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