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第二十五話:パソコンとピアノ


その後、クオリアさんはぼくに、ぼくが出した220wpmという記録がいかに常識外れ、規格外かを教えてくれた。wpmいうのは、word per minutesの略で、一分間にいくつ単語を入力出来るかを表す単位らしい。それで、ぼくは1985年にどこかのおばさんが出して、いままで誰も更新できなかった記録、212wpmという記録を、8単語も更新したらしい。

「そんなに凄い事なんですか?」

「ああ、100メートルを8秒台で走る位の頭おかしい数字だ。ナナ、お前すげえよ!」

何だか恥ずかしくなってきた。今まで褒められた事なんて、認めてもらった事もなかった。自分はどうでもいい、いてもいなくてもさして変わらない存在だと思っていたけれど、今目の前にいるクオリアさんは、ぼくを見てくれている。認めてくれている。嬉しかった。

「今まで何かやっていたりしたのか?」

クオリアさんは生き生きとした声で、目を輝かせて聞いてきた。

「パソコンとピアノくらいだったんですよ」

「何がだ?」

「ぼくの相手、してくれるの。だからかもしれないです。タイピング早いの」

クオリアさんはそれを聞くと、そうか。とばつが悪そうに言った。

気まずい沈黙が流れる。ぼくも、自分で何でこんなこと言ってしまったのだろうと、酷く後悔した。

クオリアさんは何かを言おうとして、それを飲み込んだ。

そんな拷問の様な静寂を破ったのは、吹き飛ばされそうな暴風と、一つの甲高い怪鳥音。ぼくらの足元に影が落ちる。反射的に上を見上げた。巨大な翼竜が、空を飛んでいた。ぼくらに対して友好的には見えない。まあ、要するにぼくらは狙われているのだろう。

ほら、ぼくの勘は当たった。変化は常にいいこととは限らない。


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