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90.塀の中では…(side:ソンシティヴュ)

当主が操られていた10家の者が財産・資産を半分没収された上で牢から出され1か所に集められた

当然の様に牢をでるタイミングで管理チップと同等の機能を持った紋章を手の甲に刻印され、さらに逃走防止の魔術が施されている

「ここにいる者達への暫定処置が決った」

宣言するかのように言われた言葉にざわつく


「私達が一体何をしたって言うんだ?父上に加担しなかった以上咎はないはずだ」

まだ若い青年が吐き捨てる様に言った

たとえ当主に従い攻め入っていたとしても動きの鈍さから真っ先に返り討ちに遭いそうな見た目、いわゆる短足デブだ

加担しなかったというよりは、足手まといになりそうだから置いて行かれたのではとカクテュスの者達は思った


「当主を止められなかった責任は負ってもらう」

「そんな…私たちは従っただけだわ」

「従うという選択をしたのはお前自身だ。この場で言い返せるのに当主に言い返せない等という戯言は不要だ」

あっさり言い返され黙り込む


「成人している男は外に出て、そこにいる者の指示に従え」

「男だけ?」

「何なんだよめんどくさい…」

この場にいる成人した男は剣を握れない軟弱者や最初の青年の様に足手まといになりそうな者のみ

カクテュスの男たちからすれば屑ばかりだ

“とっとと動け”と一喝されれば簡単に走り出す程度の小物でもある

数分もすればこの場には女性と未成年の子供達だけになった


「お前達には畑を与える。その畑で取れた作物は20個単位でフジェで買い取ってやる」

「畑?農家の真似事をしろと?」

「絶対嫌よ!」

「言っておくが、今後は与えた場所以外の畑から作物を取ることは出来ないからな」

「なんですって?」

「農地は全て魔力認証で管理する。お前たちが食料を手に入れたければ与えられた畑で育てるしかないということだ」

「そんな…」

膝から崩れ落ちる女性が数名


「フジェで買い取る際、1個でも欠けていれば買値は半額だ。先ほど牢を出る際に両手の甲に紋章を刻んであるだろう。それが買い取りの際の許可証になる」

刻まれているのは昨日の会議で決めた当主自らがソンシティヴュに攻め入った称号持ちの家族であると示す紋章だ


「買取価格はサイズ育てやすさに応じて1000シア~1500シアと次に植えることの出来る種だ。買取時はお前達専用の貨幣を使用する。お前たちはその貨幣でのみフジェで買い物することを許す」

「20個で1000~1500シアだなんてはした金じゃない。何も買えやしないわ。それなら全て自分で食べればいいのよ。これまでのようにね!」

「今はどれだけ金があろうがパン1つ買えず、その畑から野菜を盗んでいるのではなかったか?」

あざ笑う様に言われ悔しそうに顔をゆがませた


「どう判断するかはお前たちの自由だが…これは施しではなく罰だ」

”罰”という言葉を強調されていきり立っていた女たちが言葉を飲み込んだ


「当然一定の働きがない者に関しては自分の立場が分かっていない愚か者と判断し、し尿処理の仕事に回すことが決まっている」

「し尿処理なんてあんまりよ…」

この世界のし尿は地下ルートを通して1か所にためられている

大人の腰くらいまでの壁で区画が区切られていて、満タンになれば次の区画に溜められる

その満タンになった区画のし尿を特殊な粉末の薬とかき混ぜると透明な液体になって流れていくのだがその混ぜる作業は肉体的にも精神的にもきつい作業と言われている

酷い臭いと熱さの中で何日もかけてし尿をかき混ぜる作業は囚人の仕事だ


「嫌なら畑を守ればいい。何もせず許されるなどという奇跡は起こらない」

これまでが異常だったのだといい加減に気付かない物かと騎士は思う


「畑は2人で1区画、ただし5歳以下の子供は母親と一緒だ。全ての作物をダメにした場合も、し尿処理行きになる。せいぜい頑張ってくれ」

そう告げられた途端青ざめる女性が数人、悲鳴を上げる女性も数人…


「フジェの町まで10日ごとに荷馬車を出してやる。そのタイミングからずれる場合自分たちで何とかしろ」

通常旅をする場合、ゆとりを持って途中の町で休憩するため、フジェまでは馬車で1日半~2日かかる

今はその途中の町も無人となっている上に魔術師が同行するため1日で往復できるのだ


「今から順に名前を読み上げる。呼ばれた者は呼んだ者に従え」

最初に呼ばれたのは6歳~成人前の子供だった

彼らは罰とは言え多少の優遇がされる

礼儀を持って質問すればアドバイス位はしてくれる人物が置かれるのは勿論、最初に農具の使い方や、これからの作業手順を説明される


次は5歳以下の子供のいる母親達が呼ばれた

彼女たちには子供を休ませる簡易の小屋がある少し広めの畑が与えられる


最後に残りの者が呼ばれ、案内された


割り当てられなかった畑は、子供たちにアドバイスするために派遣された農家の者が収穫のみすることになっている

収穫した野菜の一部は常駐するカクテュスの者の食事になったり、今回関わっていなかった称号持ちに高値で売り、その売却金と残りの野菜は10日ごとに出る馬車で運ばれフジェに寄付されることになった

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