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82.謎の既視感

「クロキュス、お前少し休んだ方が…」

ベッドのそばでずっと手を握り続けるロキにフロックスが声をかける

オリビエが意識を失ってから2日半

ロキは頑なにそばを離れようとはしなかった


「我々がいながら申し訳ありませんでした」

フロックスが休みに行ったタイミングでオリビエ付きのシャドウが姿を現した


「お前たちのせいじゃない」

「しかし…」

「あれはオリビエに向けられた敵意じゃない。だから…側にいた俺も間に合わなかった…」

「…」

あの時オリビエに向けられた敵意ならば誰かが救えたと言い切れる

でも、オリビエは庇いに走ってしまった

オリビエを守るべく動いていた者たちにとって想定外の行動だったのだ

だから動くのが遅れた

その一瞬の差は明暗を分けるのに十分すぎたのだ


「責められるべき者がいるとすれば…あのバカ親子だけだ」

殺気の籠る言葉にシャドウは沈黙する


「騎士たちはどうなった?」

「城の牢に。これから3国でどう裁くかを決めるようです。雇われていた傭兵は早々に鉱山に送られました」

「…そうか」

ならば軽い裁きはありえないなとつぶやくロキに、シャドウは頭を下げて姿を消した


「オリビエ…頼むから目を覚ましてくれ」

握る手を額に当てて懇願する

目の前で傷つけられるのを、止めることが出来なかったことを、どれだけ悔やんでも足りない

ロキが今できるのはただ側にいることだけだった


「―――て…」

「オリビエ?」

ロキはかすかに聞こえた声にオリビエをのぞき込む

「やめて……!!」

悲しみや怒りの籠った悲痛な叫びと共にオリビエは目を開けた


***


「オリビエ」

よく知る優しい声と共に、ただ宙を見つめる私の頬に暖かい温もりを感じた

「…ロキ…?」

さまよわせた視線がようやくロキを捉えた

「ああ。俺だ。良かった…」

次の瞬間ロキに抱きしめられていた

大好きな温もりの中、その手はかすかに震えていた


「私…?」

「町で子供を庇って騎士に…傷はフロックスに治してもらったけど3日間昏睡状態だった」

「3日間…」

言葉にしても現実味はない

しいて言えば力が入りにくいくらいだろうか


「あの子は…?」

「無事だ」

「そう…今度は守れたのね…」

「え…?」

ロキの戸惑う声に自分の発した言葉を思い返す


「今度は…?」

自ら繰り返し戸惑う

なぜそう思ったのかが分からないのだ


「オリビエ?」

「ロキ…私おかしいよね…」

身体の震えを抑えることが出来ない

そんな私の体をロキがしっかりと抱きしめてくれる


「元の世界で争いなんて経験したことない…でも知ってるの…向かってくる騎士…逃げ惑う人…目の前で消えていく……大切な命…」

知らないはずの何か大切なもの

言葉に出来ない入り混じった感情

自分でも訳が分からずただロキにしがみ付く

今までに感じた事の無いはずの自分を飲み込むような恐怖

身が切り裂かれるような絶望と悲しみ

それを自分事として知っているのだという奇妙な感覚…


「フロックス!」

「どうした?!」

ロキの余裕のない声にフロックスが飛び込んで来た


「意識は戻った。でも錯乱が…」

フロックスは心得たとばかりに私に魔力を流した


「ロキ…」

「大丈夫だ。側にいるから。ゆっくり休め」

遠ざかっていくロキの声を聞きながら再び意識を手放していた

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