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75.悪友の到着

昼の混雑が落ち着きおやつタイムまでの間にロキと少し遅めのランチタイムを取っていた

「ロキの悪友は今日着く予定なんでしょう?」

「ああ。早朝に鷹が来てたからそろそろじゃないか?あいつの事だから馬で来るだろうし」

そんな話をしているとドアが開いた


「いらっしゃいませー」

入り口を見ると遠慮がちに立っている2人の男性と1人の女性が立っていた


「失礼。こちらにクロキュス・トゥルネソルがいると聞いたのですが」

綺麗な顔立ちの男性がそう尋ねて来た


「ひょっとしてフロックス…ロキの悪友さん?」

「そうですが…悪友…」

どこか納得いかないとでも言うような顔をした


「ロキ、聞こえてるんでしょう?」

奥に向かって声をかけるとロキが出てきた


「久しぶりだな」

「…お前どんな説明してんだよ?」

「ん?ダビアと一緒に悪友だって言ってあっただけだけど?」

とぼけたように言うロキにフロックスは恨めしそうな顔をする


「こんなきれいな令嬢になんてことを…」

えっときれいな令嬢って…?


「狙っても無駄だぞ」

「は?」

「俺の嫁。ついでに俺のソル エ ユニーク」

「あ、オリビエです」

会釈すると3人ともに呆然とする


「クロキュスが…結婚?」

信じられないのはそこだったらしい


「4か月くらい前にな。とりあえず座れば?」

テーブル席を指して促した

それに従う様に3人は席に着く


「今到着されたんですよね?お食事は?」

「いや、途中で携帯食をかじりながら来ただけだ」

「ですよね。じゃぁあの中から選んでください」

私はランチメニューを貼り出しているボードを指して言う


「えっと…?」

「うちのランチメニューあれだけなんですよ。その代わり日替わりですけど」

「あ、じゃぁ私はフジェの…」

「俺も」

ロリエに続きカトリックが言う


「俺は…迷宮産?」

「何で疑問形なんだよ?」

「いや、あまりにも予想外なメニュー」

「ですよね。すぐ準備しますね」

私はキッチンで簡単に仕上げをして準備すると3人の前に運ぶ


「ロキもこっちで食べる?」

「ああ。お前のも持って来いよ」

ずっと話をしていたようなので尋ねるとそう返ってきた

この時間は殆どお客さん来ないから問題ないかと頷いた


「それは?」

「これは創作ですね」

「見たことない料理」

「それが売りです」

そう言うとロリエが笑い出す


「今度食べてみたいわ」

「あら嬉しい。あなたたちはロリエとカトリックでいいのよね?」

「ええ。17歳で王のメイドをしてました」

「クロキュスには感謝する。ダビアから結構前に話は貰ってたんだが…ロリエをどうしようかと悩んでいるうちに身動きが取れなくなって困ってたんだ」

「みたいだな。フロックスの話をした時にそう聞いた」

「でもクロキュス、称号持ちを受けないのは3国で決めた事なんだろう?お前が手を回せるようなものなのか?」

カトリックが尋ねる


「何だ、お前は知らないのか?クロキュスはカクテュスの王族の血を引いてる」

「「え?」」

フロックスの言葉にカトリックとロリエは固まった


「継承権は放棄してるけどな。フジェのことに関してはそれなりの権限は貰ってる」

それはモーヴから言い出したことだった

召喚された私への待遇も含めて柔軟に動けるようにと言うことらしい


「カトリックと精鋭に関しては騎士団に話を通してある。いつからでも任務についてくれと言ってたよ」

「それは助かる」

「精鋭は全員家族がいないと聞いてるから騎士団の宿舎に住めるように手配した。もし一緒に連れてくる者がいたら相談に乗る。問題はお前らなんだけどな」

「宿くらいあるんだろ?」

「宿はまだ空きがないと思う。職人が優先されてるから」

「まじか…」

フロックスがため息をつく


「安心しろ。家には空き部屋が大量にある」

「ひょっとして…」

「1部屋1か月6万シア。飯付きなら8万シア」

「ロキ?」

宿がわりにしようとすることに驚いた


「飯付きで頼む」

フロックスは即答だった


「私もお願いしてもいいですか?食事付きで」

「俺も」

2人もすぐに決断した


「ちなみにここの飯は住人がそろって取るから」

「ああ。問題ない」

王宮にいたなら慣れたものだろう

特に嫌な顔もされなかった


「戻った。オリビエ何か食うもんくれ」

そう言って入ってきたのはマロニエだった


「お帰りマロニエ。3人来てるよ」

「え?マジ?」

突然しゃきっとしてテーブルを見るマロニエに皆が苦笑する


「久しぶりだな」

「元気そうで何より。いつ着いたんです?」

「さっきだよ。昼飯ご馳走になって色々話してた」


「マロニエ何食べる?」

「おにぎりと唐揚げ」

「了解」

ケースから出してマロニエに渡すとカウンターに座って食べ始めた


「そういやカトリックは騎士団だよな?フロックスは仕事どうすんの?」

「お前はどうしてるんだ?」

「俺?俺はダビアとここの子守しながら冒険者」

「子守?」

フロックスが唖然とする


「ここ、成人前のチビが4人いる。そいつらにオリビエがとんでもない玩具与えてんだよ」

「とんでもない玩具?」

ロリエがキョトンとした顔で訪ねた


「迷宮品の1個50万シアのボールを1人1個与えてる」

「「「…」」」

3人の目が突き刺さる


「知らなかったのよ?ただのボールだと思ってたらとんでもない代物で、ちょうど2人が来た時だったから交渉してみたの。子守と…庭師やこのカフェの手伝いする代わりに食事付きでここに住んでいいって」

「…ダビアが子守」

フロックスはつぶやいてから噴き出した


「でも流石にそれでただで住ませてもらうのも申し訳ないからさ、こうして食料を提供してる」

マロニエがそう言いながらマジックバッグから取り出したのは木の葉に包まれた大きな白身の魚だ

どうやら迷宮に行っていたらしい


「あら、今日は魚の煮つけに決まりね」

「それは楽しみだ。シュロも後で持ってくる」

大きな白身魚は煮付けるととても美味しいのだ


「そう言えばシュロと一緒に行ってたんだっけ?」

「ああ。帰りに本屋に寄るって言うから先に帰ってきた」

「そうなのね。じゃぁ本棚の本も増えそうね。楽しみだわ」

シュロはソンシティヴュの本に興味がある様でよく買ってくるのだ

そして読み終えると当然のようにみんなの本棚に並べていく


「…クロキュス」

「ん?」

「お前何か…すごい嫁さん貰ったな?」

「ああ、日々規格外さに驚かされてる。おかげで退屈はしないな」

「…決めた。俺も冒険者するわ。人一倍食う分は食材で払えばいいんだろう?」

フロックスは心得たとばかりにそう言ってきた


「ここには迷宮狂いが3人いますからよかったらご一緒にどうぞ」

「3人?」

「ダビアとマロニエ、あと俺のいとこ」

「お前のいとこって…」

「王族。でも俺と一緒で継承権は放棄して今は冒険者だ。ちなみにSランク」

「マジか。それは楽しみだな」

どうやら迷宮狂いが1人増えたようだ


「お前はゆっくり考えればいい。金が足りなければ俺が出してやる」

少し困惑したロリエにカトリックが声をかける


「ありがと兄さん。甘えさせてもらうね。当分は大丈夫だと思うけど」

「その事なんだけど、もうすぐ騎士団の宿舎が完成する。希望するならそこの手伝いに推薦するぞ」

「いいんですか?」

「ああ。ちなみに住み込みだ。料理人や手伝いに関しては両国から取りたいと言ってたから丁度いいだろ」

騎士に身内がいるなら安心して働けるだろう


「それ、俺も入れますか?」

「騎士だから当然だろ。元々頭数に入ってる」

ロキが当然のように言ったのを見て宿がわりに提供した理由が初めてわかった

家族がいないと聞いている精鋭が誰かを連れてきたとしても、同じようにそっちに推薦するつもりなのだろう

突然3人もなんてロキにしたらありえないことだと思ったけど2人が一時的だとわかっていたからの提案だったのだろう


「オリビエおやつー」

リラが飛び込んできたのを見て時計を確認すると3時を回ったところだった


「お、無事到着したか」

コルザを肩車したダビアが入ってくるなりそう言った


「…本当にダビアが子守してる」

「うっせ。意外と楽しいんだぞ?騎士を相手にするより疲れるけどな」

「そうそう。予想外の行動ばっかだからなー。おかげで体力づくりにはなる」

マロニエも苦笑しながら言う


「みんな、今日から一緒に住む人達よ。フロックスにカトリックとロリエ」

「僕コルザ」

「ロベリだよ!」

「リラ!」

3人は我先にと名乗りながらも目線はショーケースに向いている


「ふふ…よろしくね」

ロリエが言うとリラはロリエの膝によじ登ろうとする


「抱き上げても大丈夫?」

「大丈夫よ」

応えると嬉しそうに膝にのせていた

コルザとロベリはデザートを選ぶと外に持って行く

サンドイッチを食べ終えたマロニエがその後を追う


「リラはプリンでいいの?」

「うん。プリン!」

それ以外にあり得ないとでも言うように肯定した

目の前に置いてやると嬉しそうに夢中で食べていた

もちろんロリエの膝の上で


その後もジョン達が入れ替わり立ち代わり食べに来たり、お客さんが来たりととても賑やかな時間になった

それから数日の間に精鋭達も到着して騎士団に迎えられていた

先に来ていた特攻の4人と再会したこともあり、上手くなじむことが出来たようだ

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