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74.脱出(side:王宮~フジェ)

「兄さん!」

メイドが一人飛び込んで来た


「ロリエ、良かった」

カトリックはホッとした表情を見せた


「フロックス、妹のロリエだ」

「落ち合えたようで良かった」

「ありがとうございます。あなたとクロキュスさんのおかげだと聞きました」

ロリエは今にも泣きそうだった


「気にしなくていい。カトリック、俺はそろそろ行くが一緒に行くか?」

「いいのか?」

「構わない。お前も称号持ちだ。俺と行動した方が都合がいいかもしれない」

「あぁ、なら頼むよ。あなた方にも世話になった」

カトリックはジルコットと側にいる2名の医師に頭を下げる

称号持ちから頭を下げられた医師はオロオロしている


「やめてくれ。私達はむしろ助けて貰った方だからな」

詳細を聞かされていたジルコットはそう言った

元々カトリックとロリエを王宮から出すのが発端だったのだから間違いではない


「まぁ今はここを出ることが先だな。ジルコット殿、落ち着いて気が向けばフジェに来てくれ。あなたと話すのは思いのほか楽しい」

「承知した。一旦カクテュスの王都にいる知人を訪ねた後に伺わせてもらおう」

二つ返事で頷いたジルコットと医師たちに別れを告げて3人は騎士団を出た

精鋭に手伝ってもらい人形を埋葬場所に運ぶとフジェで落ち合おうと約束して別れた


「馬を拝借するか。ロリエは乗馬は?」

「趣味が遠乗りなので大丈夫です」

「なら3頭だな」

フロックスはそう言いながら厩舎に向かう


「大丈夫なのか?」

「この辺りは王たちのいる場所からは一切見えない。厩舎の管理をしていた者は残念ながら今回の感染症で亡くなる予定だ」

「…お前が敵じゃなくてよかったよ」

カトリックは苦笑交じりにそう言った

「お前らここに住んでたなら特に荷物も無いんだろう?」

「はい。ありません」

「俺もない」

「なら少しでも早く離れたい」

フロックスはそう言いながら馬を見繕う

すでに空は明るくなってきていた


「今から出れば昼過ぎには着けるだろう。ロリエは辛かったら遠慮なく言ってくれ」

「はい。でも兄さんに鍛えられてるので大丈夫です」

「それは頼もしい」

それぞれが馬にまたがり走り出す

緊急事態と称して見張りに立つ者の姿も見当たらない

王宮は問題なく突破し、町を走り抜けて王都を出た


どこかで怪しまれれば面倒になるため、少しでも早くフジェに逃れたいのを3人ともが理解していた

女ながらもロリエは弱音を一切吐かなかった

そのおかげで途中何度か休憩するだけでフジェに入ることが出来た


「身分証を」

フジェに入る検問で当然のように告げられる


「クロキュスの作戦で逃れてきたため身分証がない」

「名前は?」

「フロックス・グリシーヌ。彼らはカトリック・ブリュエとロリエ・ブリュエだ」

「あなた方が…ロキから聞いてます。到着したらこのカフェに来るようにと伝言も」

そう言って騎士はチラシを3枚渡した


「聞いてたカフェの事か?」

「おそらくそうでしょうね」

「あの…」

遠慮気味に声をかけたロリエに騎士が顔を上げた


「身分証がないだろう者のリストがあったりするんでしょうか?」

「その通りですよ。ロキからそのリストは預かってます。勿論、他の2国にも配布されています」

「じゃぁ、王宮にいた称号なしの方は皆…?」

「亡命されたのであればどの国でも受け入れられますよ」

即答されロリエはホッとしたように破顔した


「どうしたんだ?」

「一緒に働いてた子がどうなるか心配だったから」

自分達は手を回してもらっていたと知っているだけに不安だったのだという


「自分も大変なのに優しいお嬢さんだ。歓迎しますよ」

笑顔で迎えられ3人は地図を見ながらカフェに向かった

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