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50.打ち明ける時

ロキはすぐに私をベッドに寝かせた

私に造血剤が処置されると自らも隣に横になる

肘を立ててそこに頭を乗せるとじっと私の様子をうかがっているのが分かる


「本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫。少し休んでれば問題ないと思うし…」

そう答えてもロキは心配そうな表情を崩さない


「…ロキに先に聞いてもらってもいい?」

「あぁ」

頷いてもらったのはいいけど、どこから話そうかと思案する


「…私がこっちに来た日、私のステータス見せなかったでしょう?」

「そういやそうだな…」

当時を思い返し頷いた

あの日ステータスをオープンして見せたのはイモーテルのみ

私は歌姫のスキルを持っていないという事のみを伝えた


「あの時、見せたらめんどくさい事って言うか…まずいことになりそうだなって思ったの」

私はそう言いながら自分のステータスの隠蔽を解除する

「でもギルドカードは見たことあるだろ。特におかしな点は無かったはず…そういや称号は表示されてなかったか?まさかお前本当は歌姫を持ってたとか…?」

「あはは、違うよ。そういうんじゃなくて…見てもらった方が早いかな」

私は閲覧権限を設けてロキにのみオープンした


「…は?」

それを見て呆然とするロキにやっぱりそうなるかと苦笑する

私自身信じられなかったんだから当然の反応ともいえる


「これは…でもギルドカードは…?」

「不思議なことにね、このステータス弄れちゃうんだよね」

そう言いながらステータスの数字を変更する


「勿論実際の数値より上には出来ないけど下げて表示することは可能みたい。それにね、その数値に合わせて実力も補正するように出来るみたいなのよね」

「…」

うん。意味わかんねーって言いたくなるのはよくわかる

私自身補正を掛けた後その辺りの事は一切考えないようにしていたのだから


「イモーテルのステータスを見て、ここの最大値を聞いた時に思ったのは、まずいってことだけだったの」

「確かにこれは…原因は召喚か?」

「多分ね。言ったでしょう?向こうでは高ランク冒険者だったって」

「ああ」

「向こうのステータスの最大値は60なんだけど私は全て50オーバーだったの」

そう言いながら取り出したのは元の世界のギルドカードだ


***

オリビエ・グラヨール(20) Lv:55 Rank:A++

種族:ヒューマン 出生地:ミルトゥ

基本特性:体力:55 魔力:53 知力:57 適応力:51

スキル:覇王:51 インベントリ:52 鑑定:51 隠蔽:51

サブスキル:マナ操作 魔力撃 格闘術 投擲

生活スキル:生活魔法 料理 掃除 裁縫 計算 

魔法属性:火 風 闇

***


「イモーテルは向こうで冒険者登録はしてなかったんだと思う。私は50オーバーの分がそのまま補正値として働いた。そう考えると数値の説明はつくのよね」

「確かにそれは理解できる。でもさっきの説明がつかない」

「さっき?」

「魔法が使えないフロアで武器なしでって…」

王族皆が驚いてた2階層のことだ

そりゃぁ気になるわよね…


「私はマナによる攻撃も出来るから」

「マナ?」

「元の世界で出会った冒険者に教わったんだけどね、体の中を流れる魔力とは別の気を、描いた魔法陣にのせて使う技。それを思い出さなかったらリタイアするしかなかったかな」

「いや、こうなる前にリタイヤしろよ…」

半ば呆れたように言うロキに苦笑する


「…クリアしてカモミを安心させてあげたかったの」

「安心?カモミを?」

何でまた…とでも言いたげな顔をする


「うん。多分カモミが恐れたのは…狙われた私を庇ってロキの身に何かが起きることだと思うの。それなら力を全部使ってクリアして認めてもらおうと思って」

「…」

「でもどこかに油断があったのね。魔法が効かない魔物がいるだろうとは思ったけど、フロア全体が魔法が使えないなんて思わなかった。そんな思い込みをした私のおごりのせい」

「それは…」

「自分の身に起こったことを考えれば絶対は有り得ない。何があってもいいように備えるべきだってこと、思い出した。特に人間の理の通じない迷宮では余計にね」

「…」

ロキは無言のまま私を抱きしめる


「ロキ?」

「こんな思いは二度とごめんだ。もしお前に何かあればあいつらを皆殺しにしても足りない」

「それは…ごめん」

まさかそこまでとは思っていなかった


「もっと前に話そうとは思ってたんだけど…」

「もしそうだったとしてもだ。自分の目の届かないところで大切な人間を失うのは二度と…」

抱きしめる腕に力がこもる

家族を失ったロキだからこそ余計だったのかもしれない


「ごめんね…」

ロキを抱きしめ返してそう言うしか出来なかった


息が詰まった時浮かんだのはロキのことだけだった

私の中にロキを失うという選択肢は無い

見て見ぬふりをしてきたこの異常なステータスでも、ロキといるために役に立つのならすべて受け入れる

この世界に来てから初めて私はそう思っていた


「…大分顔色が戻ったな」

暫くしてからロキが言う

確かに独特の脱力感がかなりマシになっていた


「ロキに話したこと全部伝えても大丈夫だと思う?」

「ああ。召喚のことは俺が話そう」

「ん。ありがと」

降ってくる口づけに応えながら感謝を口にする

こんなわけわかんない話でもそのまま受け入れてくれることがありがたかった


「それにしても…お前が俺より強かったとか…」

「ふふ…でも戦いの時のセンスはロキの方が上だと思うよ?それにこの世界の知識は絶対に敵わないもの。何よりロキがいてくれるだけで安心する」

戦闘や迷宮においては特に、詳細に表示される鑑定でさえロキの知識や勘には敵わない


「お前らしいな…」

そう言いながら向けられる笑みは優しい


「少し眠れ。ここにいるから」

私の体を包み込むように抱きしめなおしながらロキは言う

優しいぬくもりに包まれて私の意識は遠のいていった

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