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47.隣国との交渉

ロキは領主から委任状を受け取り動き出す

「ねぇ、どうやって交渉するの?」

「とりあえず…交渉の前の準備だな」

ロキがそう言って口笛を吹くと一人の男が突然現れた


「!!」

私は思わず攻撃の構えを取る

「大丈夫だ。俺が呼んだ」

「え…?」

驚く私の前でその男は片膝をついて頭を下げた


「流石クロキュス様の伴侶。素晴らしい反射神経です」

「そういうのいいから」

ロキはため息交じりに言う


「失礼しました」

「俺が帰るために条件を出すと言ったらどうする?」

「人道的に問題がある条件でなければ即断で飲まれるかと」

「…お前はこの国の動きをどう見る?」

「お言葉ですが非常に脆いかと。今朝皆様で予想されていたのは9割がた当たっております故」

「そうか…」

ロキはそれを聞きながら何かを考えていた


「条件はこの町を我が国にということでよろしいですか?」

「…無謀か?」

「むしろ優しい条件かと」

返された言葉に苦笑する


「ならそうしてくれ。この町を守ってくれるならこいつと顔を出す。これは領主からの委任状だ」

「流石クロキュス様。これがあれば処理も早く済むでしょう。では」

言葉が切れた次の瞬間男の姿が消えていた


「今のって…?」

「カクテュスの王族に3名ずつ付けられるシャドウと呼ばれる存在だ。嫁いできた母にもついてたし、俺にも生まれた時からついてたらしい。表ざたにはしてないけどな。ちなみにお前にもついてる」

「嘘?!」

「本当だ。さっき俺がしたみたいに口笛吹いてみろ」

半信半疑で吹いてみると…

「ひゃっ…!」

女性が3人突然現れた

一体どこにいたのか…


「お初にお目にかかります。オリビエ様付きのシャドウでございます」

「婚姻が成立した日からついてる。役割としては守ることが大前提で、何か調べたいことがあったら代わりに調べてくれる」

「あ…ロキが色んな情報簡単に入手できるのって…」

「大抵シャドウが調べてる。ちなみに俺付のシャドウはお前のスイーツ渡したら倍以上の働きをしてくれる」

なんて安い…

国の暗部の人間がスイーツごときで倍以上の働きって…

納得したくない何かがあるのは仕方ないと思う


「王族に入った以上拒否権無いからそう言うもんだと思って諦めろ」

「そういうもの…?」

「俺はお前手放す気ないし。それともシャドウがイヤで別れる?」

「別れない」

即答してから顔に熱が集まるのが分かる

そんなやり取りを見てシャドウたちがクスクスと笑っていた


「魔力で波長の合うやつらから選ばれるらしいから気も合うと思うぞ?」

「…3人ともシャドウと呼ぶべきなの?固有の名前はやっぱり危険?」

「まぁそうなるな」

「そっか…じゃぁシャドウ、これからよろしく」

「こちらこそ。ご用命の際はシャドウと声を掛けられるか先ほどのようにお呼びください」

3人はにっこりと微笑んでから消えた

だからどこに消えたの?

そう思いながらも考えたら負けのような気がした


「…時々変だなとは思ってたけど…」

「ん?」

「多分シャドウと話してたのね」

何となく納得できてしまった


「悪かったな。ずっと黙ってて」

「ううん。簡単に言えることじゃないってわかるし…それに私に危害があるなら教えてくれてたでしょ?」

「当たり前だ」

「ふふ…そういうとこ、大好きだよ?」

「お前な…」

勘弁しろよと言うように息を吐き出すと抱き上げられる


「ちょっとロキ?」

「今のはお前が悪い。今日はもう終わりだ」

ロキは私をベッドにおろすとそのまま組み敷いた


「寝れると思うなよ?」

「ばか…」

そう返しながらもロキの首に手を回す

覚えたてのロキの香りと温もりはもう手放すことはできないのだから


「ん…」

いつもと違う何かに目を覚ます


「ロキ?」

いつもなら自分が抱きしめられているはず

でも今、ロキの頭が私の胸元にある

腰に回された手には寝返りを打つことも出来ないほど強く抱きしめられている


幼馴染のダビアさんでさえきっかけがないと思い出せない事実は、一体どれだけ長い間自分の中だけに秘めてきたのだろうか

シャドウとの仲をみればカクテュスを拒否してるようには見えない

ひょっとしたら王宮に勤めていたのも何か理由があったのかもしれない

いつもと違い甘えるように求められたのを思い出す

自然とロキの頭を包み込むように抱きしめていた


「ロキが何者だろうと、何を考えていようと変わらないよ?」

そうささやいたときロキの体が一瞬強張った

「起こしちゃった?」

「いや…」

離れようとしたらさらに強くしがみ付かれる

「…かっこわりぃ」

「かっこいいロキもかっこ悪いロキも、優しいロキも、情けないロキも…どんなロキでも私の気持ちは変わらないよ?」

「…」

「私だってロキを支えたいし助けたい。ロキが気を許せる場所でありたい。無理にとは言わないけど…」

いつもロキがしてくれるようにロキの頭頂部に口づける

するといきなり布団の中に引きずり込まれた


「ロキ?」

さっきまでと逆にロキの腕の中に抱きこまれていた

「絶対離さない」

「うん。離さないで」

「返品はきかないから」

「ふふ…返品する気もないけどね」

2人でしばらくじゃれ合っているうちに外が明るくなってきた


「そろそろ起きるか」

「うん。ご飯作らなきゃね」

簡単に身支度してキッチンに向かう


「そういえばシャドウは食事ってどうしてるの?」

「さぁ、聞いたことねぇけど交代で取ってんじゃねぇの?」

「そっか…シャドウ!」

呼ぶと1人が現れる


「お呼びで?」

「うん。これ、食べないかと思って」

スイーツを3つシャドウに見せる


「まぁ!」

シャドウの顔に笑みが浮かんだ

「…その顔はあいつらが羨ましかったって辺りか?」

「おっしゃる通りです。非常においしいといつも自慢されておりますので」

「そんなにあげてたの?」

どちらかというとそっちの方が驚きだ


「ちょっと無理言うときは大抵…?」

「知ってたらちゃんと用意したのに。でも喜んでくれてるならよかった。希望があれば教えてくれると嬉しいんだけど…」

「贅沢を言えばカフェのケースを端から順に堪能したいと」

「え?」

「どれも目移りするほどおいしそうですので」

「ふふ…ありがとう。じゃぁこれから色々試してね」

そう言いながら先ほど見せたスイーツを3つ手渡す

「ありがとうございます。では」

シャドウが消えた直後足音が近づいてきた


「何だお前ら早いな」

「今降りてきたところだ。ダビア、ついでにそこの窓開けてくれ」

「んー」

ダビアが言われた通り窓を開けると鷹が飛び込んできた

鷹はロキの周りを2周してから何かの封筒を差し出した

「ご苦労さん」

魔力を与えてやると飛んでいった


「今の鷹は?」

「郵便物を運ぶ鷹だ。これは王からだ」

「王がなんだって?」

ダビアが身を乗り出してくる


「…歌姫が脱走したらしい」

最後まで目を通したロキはつぶやくように言う


「脱走?イモーテルが?」

「いや、契約とかどうなってんだよ…」

「3種類とも無効になってたらしい。おそらく召喚された影響か何かじゃないかって。もし見かけたら連絡が欲しいとさ」

「脱走ってよくできたな?」

「イモーテルなら楽勝かも。元々変装はあの子にとって日常だしね。あの子のことだからメイドにでも化けて王宮から出たんじゃないかな?その後は普通の服に着替えて…あの髪さえ目立たなくできれば人ごみに紛れて既に王都を離れてるでしょ」

「まじか…言われてみりゃメイドの顔全部覚えてる騎士なんていないな」

「王族に取ったら爆弾だな。歌姫まで隠したとか独占したとなると…」

「脱走したなんて通用しないものね」

呆れた笑いしか出てこなかった


「そういや、今日カフェはどうすんだ?」

「今回のことが落ち着くまで臨時休業。昨日のうちに噂は回してもらってる」

「それが妥当か」

ダビアは目の前の食事を次々と平らげる


「おはようさん」

「おはよー」

ナハマに続いてブラシュが欠伸をしながら入ってきた

「おはよう2人とも。ブラシュはまた色々調べてたの?」

「ああ。気づいたら空が明るかった」

「あんまり無理しないようにね」

「ありがと」

受け答えはしてるものの理解しているのかは微妙なラインだ


「あ、カメリアおはよう。あなた達もおはよ」

「「「おはよー」」」

「おはよう」

皆であいさつし合う朝はいつも通りの光景だ


「カメリア後お願いできる?しばらく交渉の件で部屋にこもるわ」

「分かったわ」

後のことをカメリアに任せてロキと部屋に戻る


「…早すぎないか?」

ドアを開けた正面に控えるシャドウに驚くよりも呆れているロキ


「で?」

「手筈は整ったと。本日よりこの町フジェはカクテュスの領地となりました。領主は継続、本日昼よりギルドに住民管理を担ってもらいたいと」

「領主への案内は?」

「勿論王宮より使者が参ります。市民権の付与などもある為しばらくの間カクテュスの市民課のスタッフが数名派遣されます」

「ソンシティヴュは納得したのか?」

「昨晩王が自ら出向き納得させたようです。前領主が災害時に支援した資金を着服していた証拠を突き付け返還を求めました。最初は知らないととぼけていたようですが領主交代の際今の領主はその旨を報告、謝罪し、そのための交代であると王からの書面も提出されておりましたので」

他国の王を前に誤魔化そうとしたナルシスの愚かさに呆れる

本気で誤魔化せると思ってたのかしら?


「で、その資金を返済するか領地を差し出すか迫ったのか?」

「そのようです。王は差し出すことで返済から逃れられるならと、二つ返事で差し出したとか」

「…」

私は何とも言えずロキを見る


「ここまでくると笑えるな。で、俺たちはどうすればいいんだ?」

「詳細はこちらに」

シャドウは蝋封のついた封筒をロキに渡した

ロキは受け取ってすぐに中を確認する


「分かったと伝えてくれ」

「承知しました」

頷くとすぐにどこかへ消える


「明日カクテュスの王宮に行く。お前も一緒に」

「…」

覚悟はしていたもののあまりにも急だった


「昼過ぎにここを出る」

「何で行くの?」

「馬で行く」

「そう…」

頷きながらロキを見ると表情がこわばっていた


私はロキに抱き付いた

「…どうした?」

「何でもないよ」

そう答えながら胸に顔を埋めると抱きしめられる


「楽しみ?それとも…」

「半々…会った事の無い親族でそれが王族となるとな…」

「大丈夫だよ」

「?」

「召喚された人間嫁にしたぐらいだもの。王族とは言えこの世界の人だしね」

「お前な…」

ロキは苦笑する


「そういえば王が昨日の晩にって…どうやって行ったの?」

「空間移動だろ。カクテュスでは使える血筋がいくつかあるしシャドウにも最低1人は使える奴がついてるはずだ」

「だから昨日の今日で?」

「そういうことだな」

ロキはカクテュスのことを昔から調べていたらしくかなりの知識を持っていた

私はその中でも基本的なことを出来るだけ教えてもらうことにした

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