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125.思わぬ真実

「オリビエ」

かけられた声に振り向くとソージュを抱いたカメリアが立っていた

横には付き添いだろうアントの姿がある


「ソージュ!会いたかったわ~」

私の方に手を伸ばすソージュを抱き受けギュッと抱きしめる


「珍しく愚図ったものだから…」

「ソージュが?」

それは私もとても気になる


「こいつが愚図るなんてこれまでになかったのにな」

ロキも心配そうに覗き込んでくる


「寂しかっただけならいいんだけど…」

確かに1週間も離れたことは今までにない


「どうしたのかな?」

ソージュの顔をのぞき込む


「あ~」

ソージュは手を伸ばして私の頬に触れた

その途端私とソージュは光に包まれた


え…?

戸惑う中私は不思議な空間にいることに気付いた


『初めましてオリビエ』

頭の中に直接響いてくるような声だった


『私はミルトレス、ミルトゥの神です』

「神…さま?」

あり得ないと思いながらも異世界へ来ている身であることを考えればどこか受け入れてしまう自分がいる


『はい。ソージュの魔力を借りてようやくあなたに直接関わることが出来ましたが時間がありません。あなたのいた世界では時間は止まっています。できる限りの事を伝えたいのでそのまま聞いていただけますか?』

「…わかりました」

こんな変な空間に呼べるのだからただの人ではないのは確かだし、正直意味不明だけど時間がないなら聞けることは出来るだけ聞いておきたい


『”ミルトゥの鍵”という称号はある時期を基準にし、最初に生まれた各世界の血を引く子孫に与えられるもの。そしてその称号は役目を果たすまで子孫に受け継がれます』

「…つまり私はそのどこかの世界の血を引く子孫ということ?」

『その通りです。あなたはこのフーシアの血を引く者です。”カギ”の称号を持つ者は誰かがその世界に召喚されるタイミングで同時に召喚されるよう設定しました。そして称号はミルトゥを出た際、ラ・ミルトゥの名と共に表示されるように調整しています』

設定したり調整したり…つまり私には何かの役割があるということ?


『”カギ”が召喚されたのをきっかけに次元ホールの修復が開始され、次元ホールを維持していた魔力が徐々に”カギ”の体内に取り込まれるようになっています』

「元々魔力は多かったけどそれ以上に必要なのかしら?」

『必要になると言った方が正しいでしょう。私以外の神が次元ホールの消滅に気付くのは次元ホールが塞がる直前のみ。召喚を好む神は次元ホールの消滅を拒み、”カギ”を滅ぼそうとするのです』

「滅ぼす?私を?」

『次元ホールが塞がる前に”カギ”が滅べば、二度と塞ぐことは出来ないのです。”カギ”にはそれだけのものが引き継がれていますから』

「私に次元ホールを塞ぐための何かが引き継がれてるってこと?」

『そうです。次元ホールを塞ぐにはその世界の血を引く者の魔力が必要です。それもかなり膨大な魔力です。だからこそ”カギ”として引き継げるよう設定しました』

つまり逃れることのできない運命ってことか…

私がフジェの町を不思議なほど受け入れられたのはその血のせいなのかもしれない

そんなことを考えていた私に彼女はさらに続けた


『あなたはかつて戦争の真っただ中でミルトゥに召喚され、娘を救うことが出来なかった女性の血を引いています。彼女は最後の時までフーシアに戻ることを望んでいました。その想いの強さが魔力となり”カギ”に引き継がれているのです』

その言葉に脳内で以前見たやけにリアルな夢がよみがえった

あれはおそらくその女性の記憶だ

あの思い全て気がが魔力となったならとてつもない力になるような気がする


「そもそも何でミルトゥは召喚なんて?」

それがなければその女性が召喚されることも私が変な運命に巻き込まれることもなかったはず


『ミルトゥを創ったのは私を創った創造神です。彼はこれまでにない世界を作りたかった。その為にミルトゥに様々な世界の者を呼び寄せました。それがミルトゥの始まりなのです』

「まさか…ミルトゥには異世界人しかいない…?」

『その通りです。しかし時がたつにつれ問題が起きました。ミルトゥに繋がる次元ホールが増えすぎたため集団で召喚されるようになってしまったのです』

確かに20~30人単位で召喚された話は増えていた


『そのため空間に大きなゆがみが生じました。このままでは大変なことになると次元ホールを塞ぐ計画を進めました』

「簡単にできる事じゃないわよね?」

『その通りです。次元ホールを閉じればこちらに呼べないだけでなく向こうも呼べなくなるということですから。ミルトゥは特殊です。ミルトゥから召喚された者は他の世界から召喚された者より優れていると、既に多くの世界の神に広まっているのです』

「つまり次元ホールを閉じる行為自体を妨害したい神も多い…?」

それなら私が狙われるという最初の言葉に納得がいく


『神が一人の人間に働きかけることは困難です。たいていの場合その者のいる町や国、場合によっては世界をまとめて滅ぼそうとするのです』

「まさか超迷宮の出現は…」

『神々が取る手段の中で最も多いものです。迷宮の出現、そしてスタンピードはかなり多くの世界で起こり得る事象として知られています』

「そんな…」

私がいるせいでスタンピードが起こるというのだろうか…


『すべては神々の責任です。あなたはそれに巻き込まれたに過ぎない』

「でも…そのせいで傷つく人が出るってことでしょう?」

『それはあなた方次第です』

「どういう意味よ?」

あまりにも予想外の言葉に苛立ちをそのままぶつけてしまった


『過去に迷宮を抑えることができた”カギ”もいるのです。中でも召喚された者と力を合わせることで対処できたケースが多いのです』

「召喚された者…イモーテルと力を合わせるってこと?」

『必ずしもそれが正解とは言えませんが…今回出現した迷宮は特殊です。私には特殊であることしかわかりませんが被害規模は世界全体に及ぶでしょう』

「まって。世界全体に及んだら神はどうするつもりなの?」

『…またこの世界を作り直すでしょう』

「そんな…」

私は足元から崩れ落ちた


『そうならない…どうか…おね……』

途中から声が途切れ空間が戻っていく


「あ~」

気付けばソージュが私の頬に触れていた

そう言えばこっちの時間は止まってるって言ってたっけ…


「ソージュ…」

小さな温もりを抱きしめる

この温もりを失うなんて絶対に嫌だと思う

何としてでもこれから起こるスタンピードを抑えなければならない


「大丈夫か?オリビエ」

「…うん。ソージュも大丈夫だと思う」

きっと神の何かのせいだったんだろうと思うから

でもこうして抱きしめることができたからこそ自分のやるべきことが明確になった気がする

カメリアに連れられて帰っていくソージュを見ながらそう思った

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