表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

127/140

116.スイーツバイキング

「おはようオリビエ」

「持ってきたわよ」

そう言って入ってきたのはローズとイリス、カプシーヌ、アカシア、アマリリスの5人

ランだけは今日屋台に出てるのでここにはいない


「おはよう。結構な荷物になってるわね?」

それぞれが両手に抱えるようにして大量の荷物を持っていた


「前もって渡してる分があるとは言ってもね」

「そうそう。初めてのことだし張り切っちゃった」

大福を作るアカシアとケーキを作るアマリリスは特に張り切っている


「まぁ2人はあの場で色々作るのは厳しいかもね…」

「でしょう?だから今回はリサーチにもいいかなって」

「気に入ってもらえたのを順に出していってもおもしろそうでしょう」

「そうね。ぶっつけ本番で屋台で試すのは流石に厳しそうだもの」

屋台には厳しい決まりがいくつもある

その中に、調理をするのは1人のみという項目があるのだ

売り子や呼び込みの子は手伝いを用意してもいいけど、下準備なしであの場で一から一人で作るのはかなり大変だろう

ある程度儲けが出ないことには設備をよくすることも出来ないから余計かもしれない


「だからね、今回の話は凄くうれしいんだよね」

今回の話、それはスイーツバイキングを行うことだ

随分前から考えてはいたけど実行に移すのは今回が初めて

カメリア達には1か月前から声をかけていて、1週間前から少しずつできたスイーツを持ち込んでもらっている


「結局1時間半で2,000シアだっけ?」

「そうだよ。1時間は流石に短すぎるって言われたけど2時間は長すぎるかなって」

「席に着いたら長いこといたい気もするけど、並んでたら短くてもいいからって思っちゃいそうね」

「そう言う意味では1時間半はちょうど中間取ったって感じだね?」

「でも1時間半をどうやってはかるの?」

「このテーブルランプが時間をはかる魔道具なの」

キャンドル型のランプを手に取って見せる


「これが?」

「そ。お客さんが席に着いたらスイッチを入れてね。このランプが消えたら時間が過ぎたって合図だから」

普通のキャンドルで燃え尽きたら終了の形も考えたけど、人が動く場でそれはあまりよろしくない

風圧で火が消えることもあるし何より危ない

時計なんかはうるさいし…と考えていた時に商人に教えてもらったのがこの魔道具だ


「こいつその商人に魔道具作った人を連れて来いって要求してたぞ」

ロキが呆れたように言う


「何で?」

「こんな素敵なもの作れる人なら他にも色々作れそうだと思わない?」

「…まぁそれは確かに…」

「お前また住人にするつもりだろ?」

「だめ?」

「…ダメとは言わないけどせめてちゃんと確かめてからにしてくれ」

「わかった。ロキがOK出した場合だけにしとくね」

そう答えると何故か大きなため息を吐かれた

首をかしげる私をカメリアが残念なものを見る様に見て来るのは、私の気のせいだと思っておこう


「さて、開店まで1時間半、スイーツを並べましょう」

空気を切り替えるべく声を張り上げる

打ち合わせは何度もしてきたし、ある程度並べ方も決めてある

あとは手分けして並べるだけ

並べる場所は2か所

店内とテラスコーナーの片隅だ

席数はさほど多くないから随時追加するのを前提に1種類あたり5個ずつしか並べない

補充は随時頻繁に行うことにした

用意する数を揃えているから何が人気があったかは残ったもので判断することになる


使うお皿はハリーにお願いして作ってもらった

直径20cm程の正方形で5mmくらいの仕切りを残して9つに区切ってもらった特注品

ゼリーの様に水気のある物でも一緒に装える仕様にしてもらったのだ

1度に取れるのは9つまで、おかわりはお皿の交換制だ

そうすることで取りすぎて残される分を減らすこともできるし、お客さんが集中して並べてある品が一気になくなることも防ぐことができる


「ハリーは本当にすごいお皿を作ったわよね?」

「作ったって言うよりオリビエに作らされたって感じだけどな」

「それでもこうやって形に出来るのは凄いわ」

「オリビエ、ハリーにはどんな報酬を渡したの?」

みんなが興味深々でこっちを見て来た


「それなんだけどね…」

「ん?」

「ハリーに何がいいって聞いたら今日用意してるスイーツ全種類って答えが返ってきたわ」

「…スイーツ全種類?」

「私達6人とオリビエたちの全てってことよね?」

「でも全部一口サイズよ?」

「うん。だから全種類味わいたいんだって」

「そんなのでいいの?」

みんながその言葉に同感だとでもいう様な顔だ

私も正直そう思う


「面白いものを作らせてもらったからそれで充分だって言うのよね…」

「なるほどねぇ…」

「あ、じゃぁせめて全種類1つずつじゃなく2つずつにしましょうよ?」

カトリーヌの意見にみんなが賛成した

結局報酬は全種類を2つずつにするということでまとまった



そして開店時間

カフェオープン時の様にかなりの人が並んでいた

「中々の人数だな?」

「うん。何かちょっと懐かしい」

まだ1年半も経ってないのに随分前のように感じる


「あの頃よりこの家の人も増えたし、お客さんも顔なじみになったのよね」

「正直あの頃はここまでになるとは思ってなかったよ」

「そう?」

「ああ。それなりに客も入って続くんだろうとは思ってたけど、今ではこのカフェはこの町の中でもかなり有名になってるもんな」

「町だけじゃないわよ?カクテュスの中でも有名だってフェイが言ってたもの」

「カクテュスで?」

それは流石に驚くわよ?

町と国では規模が違いすぎるもの…


「騎士や商人が結構出入りしてるでしょう?そのせいみたいね」

「冒険者も一役買ってるみたいだしな」

口々に飛び出す言葉に呆然としてしまった

でも嬉しい気持ちは溢れてくるもので…


「自分が楽しんでるだけなんだけどね。でもそれが皆の為になるなら嬉しいわ」

「それじゃぁ今日は皆と楽しみましょう」

カメリアがそう言うと皆が頷いた

扉を開けて開店を伝えると順に思い思いの席に座っていく


「一度に取るのは9個まで。その後はお皿の交換です」

順にお皿を渡しながら説明する


「ねぇ、今日出てる商品を今度リクエストして作ってもらうことは出来る?」

「もちろんです。その時は3日前までに注文してください」

今でもリクエストは結構な頻度で入る

特に屋台の商品が多いかもしれない

週に1回しか屋台には出てないということで、自分の希望するタイミングでそれなりの量を確保するのは難しいかららしい

屋台で残ったものはこの店に運ばれてくることも広まってるけど、それだと数が足りないこともあるそうだ

今では屋台商品専用の注文用紙をカフェと屋台それぞれに置いてある

担当が違っても情報はちゃんと伝わると広まってるおかげでその利用率も結構高いのだ


「ひょっとして屋台で出すのも時々変わったりするのかしら?」

「そうですね。今日の印象を参考にそういう日を設けるのも有だとは思ってます」

「屋台は元々商品固定でやってますから毎回変わると逆に戸惑われそうですからね」

「確かにそうね。あると思って買いに行ったら違うものになってたなんてちょっと悲しいかもしれないわ」

お客さんは苦笑する


「だから変えるなら決まった日ですね。毎月決まった週をそう言う日に当てる感じかしら」

「それならいいかも。料理教室みたいに張り紙しといてもらえば問題ないものね」

お客さんは張り紙を結構見ているらしい


「このバイキングも定期的にしてくれるの?」

「一応そのつもりです。年に数回になるとは思いますけどね」

「…そうよね。流石に毎月なんて無理よねぇ」

その言葉には苦笑だけで返した

イベントは頻繁にするとすぐに飽きられるものね

数か月に1回程度で丁度いいはず

その辺りも含めて皆と相談になるだろうけど…


「やっと順番が回ってきたわ」

「エメル、マーシェリーも来てくれたのね?」

「当然でしょう?」

「私たちがこんな楽しそうなイベントを逃すわけないじゃない」

2人は何を今さら?とでも言いたそうな顔で言う


「ありがとう。制限時間は90分。このランプが消えたら時間だからね」

「可愛い魔道具ね!」

「私も欲しくなっちゃうわ」

魔道具は武骨なものが多い

インテリアとして使えるようなものはごく僅かだろう

これは職人の勧誘を頑張らないといけないかしら?

「一度にテーブルに持ってこれるのは9個まで。おかわりはお皿の交換になるからそのつもりでね」

簡単な説明だけして店内を見て回る

そこら中で笑顔がこぼれている空間にこっち迄嬉しくなったのは言うまでもない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ