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104.ここにもいた

「だったらエリーに声を掛けたらダメかしら?」

「エリー?コニーの奥さん、ミモザの妹だっけ?」

「そう。私と同じ年で前から仕事を探してるの。両親も含めて探してるみたいだけど今のところ働いてるのはコニーだけみたいだから」

この町には人が増えたけど働き口までは増えていない

大半が騎士の家族だからそこまで問題にはなってないみたいだけどね

ただ、他はともかくコニーのところはミモザの両親も一緒に住んでいるから3世帯の大所帯だ

それをソンシティヴュの時より増えたと言っても、コニーの収入だけで支えるのは確かに大変だろう


「それにエリーは向こうではシルバーの屋敷で使用人として働いてたらしいの。主に掃除をしてたって言ってたから、未経験者よりいいと思う」

その言葉に私とロキは顔を見合わせた

こんなところにも亡命者の働き手がいたらしい


「そういうことなら一度声をかけてみてくれる?」

「分かったわ。今日このあと会う約束をしてるから、エリーの返答次第では連れてきてもいいかしら?」

「勿論よ。もしエリーで決まったなら2階と3階の掃除をエリーに引き継いでもらって、エリーに慣れてもらう間にテラスコーナーを整えるわ。準備が出来たタイミングでカメリアにはカフェのスタッフとして入ってもらう…でいいかしら?」

「ええ」

笑顔で頷いたカメリアにホッとする

ミモザの子供が乳児で、同じように乳児を持つ友人を紹介したことから、カメリアはコニーの家との付き合いが始まったという

そこで同じ年のエリーとは意気投合して、休みの日に子供達と共によく一緒に過ごしているようだ

私たちはその後、詳細を詰めてからカメリアを見送った


「ねぇロキ」

「ん?」

「亡命者の元の職業、調べた方がいいんじゃない?」

「は?」

「ジルコットやエリーみたいに埋もれてる職人や経験者、多いと思うのよね」

「…あぁ、確かにそうだな」

ジルコットは偶々ここに来たから引き上げることが出来た

でもそうでなかったら王宮で医局長を務めるほどの腕を持つ医師を、亡命者として保護するだけで終わっていたのだ

国にとっても本人にとってもかなりの損失だと思う


「モーヴが今後亡命者をどうしていくのかは分からないけど、亡命者の中には施されるだけでは嫌だって人もそれなりにいると思うのよね」

「まぁ保護されている状態ってのは自由も制限されるからな」

ロキは頷いた

基本的に保護されているうちは働けないし住む場所を移ることも出来ない

保護されている住民として登録されて、ある意味では管理されてるともいえるのだ

働かなくても生きていけると考える人もいるけど、最低限の物や食事しか配給されないのも事実だ

金銭は含まれていないから好きなものを買うことは出来ない

そうすることで自ら働く意思を持ってもらうのが目的らしいけどね


「適材適所の配置は必要でしょう?大工や料理人なんかも埋もれてるかも」

「…それは早急に引き上げないといけないな。ただ保護して支援するために金を使うより、仕事の対価として報酬を渡す方が意味がある」

前者は亡命者の命をつなぐと言ってもそのまま消えていくお金

だけど後者は、そのお金が市場に循環される


「自立することが前提で支援すれば、国からの支援を徐々に減らしていくことも可能だろうしね。減った分はこれまでの経験があれば自分で穴埋めすることも出来るだろうし」

「その為の経験者ってことか」

ロキが呟くように言う


「うまくいけば亡命者を集めている場所に新しい町を作ることも出来るかもしれないね。大工に料理人、服飾関係の職人、農家もいるだろうし…子供を預ける場所があれば安心して働けるだろうし…ロキ?」

気付くとロキがじっとこっちを見ていた


「どうかした?」

「いや…相変わらずそういう発想は凄いと思っただけだ。影の領主と言われるだけの事はあるな」

”影の領主”って前もどこかで言われたような気が…?


「…それ、どこから言われてるのか謎なんだけど?」

「タマリもモーヴもお前に相談に来てる時点で否定はできないだろ」

「…」

確かに良く相談されるけど、別に好きで相談を引き受けてるわけじゃないんだけど?


「元々俺達の中では亡命者は保護する者という固定概念があるからな」

「まぁ…通常ならそれでいいんだと思うよ?」

「ああ。でもそのせいで大量に亡命者を受け入れることになった3国は身動きが取れていない」

「1国の民が単純に1/3ずつ亡命してるってことだもんね…」

大量どころではないだろう

3国で1国の平民を養おうとしてるのだから簡単なことじゃない

その為の予算が組まれていても、それはあくまで有事の際のこと

せいぜい町1つ分程度の想定でしかない

どう考えてもそれで賄える人数ではないだろう


「国としてはどう保護していくかを考えてるみたいだが…お前は自立させる方法を考えるんだな」

「え?」

「お前のスキル『統率』の意味が何となく分かった気がする。『覇王』は未だにわかんねぇけど…」

「何言って…フジェをここまで支えてきたのはタマリ達だよ?それに色んな案だって私だけが出したわけじゃないし」

「それでもお前がいなかったら俺達は動いてなかった。多分これからもな」

ロキの言葉に戸惑いしか生まれない


私のスキルの事はよくロキと討議してきたけどその意味は未だに解明できていない

元々持っていた『統率』はともかくとして、召喚されて追加された『覇王』と『ミルトゥの鍵』という称号

モーヴを通じて3国の文献にも目を通させてもらっているけどそのスキルも称号もどこにも記載されていないのだ

ミルトゥは元の世界の名前だけに元の世界でなら何かが分かったのかもしれない

でも、当時はラ・ミルトゥの名も、称号も一切表示されていなかった

この世界と元の世界に何らかのつながりがあるのか、それさえも今はまだわからない

結局いつもそこでお手上げになってしまうのだ

いつか判明する日が来るのかさえ分からない


「まぁそのうち分かるだろう」

ロキはそう言いながら合図を出した

その途端シャドウが一人姿を現した


「今の会話は聞いてたな?」

「はい」

「モーヴに伝えてくれ。集めた情報は共有して欲しい」

「承知しました」

シャドウは答えるなり消えた

ロキも私もシャドウに聞かせたくない時は防音の魔道具を使う

逆に言えばそれを使ってない時は聞いててもらった方が楽とさえ思ってる

私達だけの時はそのままシャドウに話を振って会話することもあるくらいだしね

お陰で情報の伝達がスムーズでいい

それが正しいシャドウとの関わり方かと言われれば何とも言えないけど…

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