4話「獅子王」
先の見えない深い暗闇の中、少年は男と対峙していた。
「見つけた。」
男は言う。殺意のこもった、その言葉には今まで感じたことのない恐怖を感じた。
「やめろ。」
少年は必死に逃げる。
「今ここで.....お前を」
「来るなっ」
「殺す。」
「やめろっ!」
悪夢を見た。初めて死というものに恐怖を感じた日の夢を、セットした目覚ましよりも早く起きるなんて何年ぶりだろうか。少年は身体中が汗で濡れてることに気づき部屋を出る。
台所で鳴雷家特製のお茶を飲み、心を落ち着けてリビングの時計を眺める。
「5時……か。早く起き過ぎたな、久しぶりにランニングにでも行くか。」
そう言って少年はジャージに着替え家を出る。
1時間ほど走りいつも休憩に使っている公園のベンチに腰を下ろすと、自分が通ってきた道の方から見知った人影が近づいてくる。地空である。
彼女もまた悪夢にうなされ気分転換にランニングを楽しんでいた。
「おはよう、地空。」
「おはよう、響もランニング?」
「おう、なんか早い時間に目が覚めちゃってな。」
「同じだね。私も昨日のことが夢に出てきて起きちゃった。」
「今日さ、朝礼が終わった後のNクラスのギフト演習で絶対にギフトを使いこなせるようになってやる。」
「うん、響ならできるよ。まあ私も負けないけどね。」
「よし、そうと決まったら家に帰って学校行く準備するか!」
「うん。」
「続きまして、校長からのお言葉です。」
司会を務める生徒がそう言うと...
ザ、ザーーー
少しのノイズの後に体育館のスピーカーから機械の音が喋り出す。
「皆サン、オハヨウゴザイマス。今年デコノ学校モ50周年ヲ迎エマシタ。ナノデ皆サン良イ1年二シマショウ。
以上デス。」
「これにて朝礼を終わります。生徒は担任の先生の指示に従いそれぞれの教室に戻ってください。」
俺らNクラスは担任の色無先生の指示に従い、教室ではなくある場所に向かっていた。
「はい、到着。ここが今から、いやこれから君たち」が3年間お世話になる演習場Nだよ〜。少しボロいけど気にしななくていい、僕がこの学校の生徒だった頃からこんな感じだから。」
そこには、穴の空いた箇所を埋めるかのようにセメントが塗られ他の壁とは色の違う箇所が複数存在している壁、新品のものから割れたものまである窓、そして蜘蛛の巣。
これをボロいの一言で済ましていいのだろうか、そう考えていると先生が続けて話し出す。
「この演習場NはNクラス専用でね。Nクラスって毎年あるわけじゃないから、こんな感じで整備が行き届かないことがあるんだよね。ちなみに君たちは12年ぶりのNクラス、つまりここは12年間ほぼ放置されてたことになるので演習を開始する前にまず掃除をしようじゃないか。」
「そうと決まったらやろうぜ。ピッカピカにして演習だー!」
「某も響殿に賛成でごわす。」
「私もお掃除がんばらせてもらいますわ。」
「ぼ、ぼくも掃除頑張ります。」
「私も響に負けないくらいピッカピカにしてやるわ〜!」
「みんなやる気があってよろしい。さすがに制服でやると結構汚れると思うから、このジャージに
着替えてしまおう。」
「「「「「はーい」」」」」
「ふう、ひとまずこんなもんか。」
額から流れる汗を拭い響は一息つく。どれくらい時間がたっただろうか、響は演習場の時計で時間を確認する。
「11時...30分!?」
(掃除し始めてから2時間経ってね。そんなにやってたの!)
「はい、じゃあそこまで。演習の時間なくなりそうだし、皆んなお腹すいたでしょ。」
先生の言葉を聞き、生徒たちは作業をする手を止めた。
「学食の道案内ついでに昼食をとりに行こう。掃除用具は元の場所に戻しておいてね。戻した人から外に集合。」
「「「「「はーい」」」」」
「よっしゃー!昼飯だ!」
「学食広〜。鏡華ちゃん何食べる?」
「私は、こちらの和風定食をいただこうかと。」
「お!鏡華殿もでごわすか。某も和風定食にしようと思っていたでごわす。いや、こちらの獅子王サイズの
ラーメンも魅力的であるな〜。咆魔冷殿は決まったでごわすか?」
「ひっ、えっと、ぼ、僕はお母さんがお弁当作ってくれたから、それを食べるよ。」
「母ちゃんの作ってくれた弁当か〜。うまそうだな、後でひとくt...いて!」
咆魔冷のお弁当を貰おうとする響の頭に重い一撃が地空から放たれる。
「マジで頭割れるかと思った。なんで昔から地空のゲンコツはこんなに痛いんだよ。」
「それは響が毎回怒られるような事ばかりするからでしょ!咆魔冷君怖がってるじゃない。」
「いいいいいや怖がってないよ。それよりも.....」
「それよりも、どうしたの?」
地空が咆魔冷に聞き返す。
「えっとね。」
(言えない。あのゲンコツの方が怖いなんて言えない。)
「地空のゲンコツの方が怖いよな〜、咆魔冷。」
(言っちゃったー!しかもなんで僕に聞き返すのー)
「え!?咆魔冷君そうなの?」
「そそそそんなことないよ。あっ僕、先に先生と席で待ってるね。」
(よし逃げれた。。。)
「よし、決めた。俺獅子王サイズの唐揚げ丼にする。地空は何食うんだ?」
「私は獅s...普通サイズのオムライスにする。」
「今、獅子って」
「いいい言ってない!」
「何、顔赤くしてんだ、地空。」
「次の方ご注文お伺いします。」
店員の言葉で冷静になり地空は前に進む。どうやら響はもう注文を終えたようで、トレイの上には
山のように盛られた唐揚げが見える。
「ご注文は?」
「し...獅子王サイズのオムライスでお願いします。」
「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」
「ガァハッハッハ、今年のNクラスは元気がいいなぁ。なぁホワイト。」
響たちの後ろから発せられたその声は食堂中に轟くほど大きく熱のあるものだった。そして誰もが一度は聞いたことのある声でもあった。
「そうですね、レオ。食事は済まされたんですか?」
「もちろんだ。獅子王サイズの定食を頂いたよ。」
「相変わらず大食いですね、レオは。」
「君が少食なだけだろ、ホワイト。」
「まぁ、確かに。それよりも、みんな紹介はいらないと思うが彼がNo.1、獅子王の名を冠したホルダー獅子王キングレオ。」
その言葉を聞き、響たちは我に返り後ろを振り返る。
テレビでもラジオでも街中ですらも聞き慣れた、その声は生で聞くだけで圧倒され思考が停止するほどのものであった。
「ガァハッハッハ、その通り私がキングレオだ。」
大まかな全体の構成を作っていたら半年以上経っていました(汗
ここからどんどん書き進めていくので、お楽しみに!