2話「入学式とクラス分け」
ピピピ、ピピピ、カチッ…
「う〜ん。あともう少し」
寝返りを打ち、布団に再度くるまる。
「あと少しじゃなーい!起きろ、響。」
「痛っ!」
止めたはずの目覚まし時計とは別に聞き覚えのある声が部屋に響き、ベッドから布団ごと引きずり落とされる。
「入学式遅れちゃうよ〜。進化剤も打ってもらうんだから早めに行ってギフト見せ合いっこするんでしょ〜。」
「ふはぁ〜、ちあきか。おはよう〜」
と、ぼやけた目を擦ってあくびをしながら幼なじみの地空に言う。
「早く着替えて、家出るよ。もう遅刻ギリギリなんだから、全力ダッシュで学校行くよ。制服出しておいてあげるから顔洗って来な。」
地空はそう言いながら、俺の部屋のクローゼットを空けて登校の準備をし始める。
「おっけー、ありがとう。顔洗ってくる。」
家を出たのはそんな会話をしてから20分ほど経ってからだった。
「よーし、ちあき走るぞ!ダッシュだ、ダッシュ!遅刻だーー。」
「昔から響は朝弱いよね〜。」
「悪ぃな、いつも起こしてくれて。」
「ほんとだよ。いつも遅刻ギリギリで家から走ってるから無駄に体力ついちゃってるんだから。」
「いいことじゃねぇか。最強のホルダーになるには体力も大事だろ。」
「はいはい、それじゃペース上げるよ。」
「おう!遅れずに着いてこいよ。」
そんなこんなで、遅刻ギリギリではあるが学校に到着。その後俺らはギフトを進化させるべく進化剤投与をしに体育館に向かった。
体育館では既に進化剤を打った生徒たちがギフトの内容を確認するため、ギフトの見せ合いを友人たちと行っていた。
また投与前の生徒たちは自分たちのギフトがどのような進化を遂げる楽しみに心を躍らせていた。
「進化剤投与はただいま1時間待ちです。まだの方はこちらの列にお並びください。」
そうスタッフの人に促されるまま俺と地空は列に並んだ。
「すごーい列長いね。」
地空が背伸びをしながら、列の最後尾から先頭をのぞく。
「ほとんどの奴は進化剤打ち終わったみたいだな。俺らで最後なんじゃないか。」
「校門に着いた時誰もいなかったから、そうかもね。」
「これじゃあ、ギフトの見せ合いする時間全然ねぇじゃん、ちくしょう!痛っ!」
「響がギリギリまで寝てるからでしょ!昨日あんなに早く起きて1番に登校するとか言ってたくせに。」
相変わらず地空のげんこつは頭に響く、普通のげんこつと違って脳がほんとに揺れるって感じがする。
「次の方どうぞ。」
げんこつの痛みが治まった頃には俺の番が回ってきていた。地空は先に投与が終わって俺の事を待ってくれている。
「少しチクッとしますね。」
腕に注射針を刺し進化剤を投与する。するとその瞬間体にビリッと電気が流れた感じがして体が少し跳ね上がった。
「大丈夫かい。今なにか体に異変とかなかったかい?」
進化剤を打ってくれたスタッフの人がそう聞いてきた。
「なんか、体に電気が走った感じがしました。静電気よりも少し強い感じの」
「なるほど、電気系か。さっきの子といい今年は多いな。」
「多いって何がですか?」
俺がそう聞くとスタッフの人は
「あとで自分のクラスに行けばわかるよ。はいこれ、君のクラスと出席番号書いてあるから無くさないでね。左の出口から出れば入学式の会場に行けるから、それじゃ入学初日を楽しんでね。」
そう言ってその人は体育館を出ていった。
その後は入学式で校長先生とか生徒会長の話を聞いて、自分のクラスの場所へ向かった。俺ら1年生の教室は学校の1階にあって学年が上がる事に上の階に行くらしい。
「えっと俺らのクラスはNクラス?Nってなんだ。ABCときてN?」
「Nってなにか意味あるのかな?」
「さぁな、おっ、着いたここが俺らの教室か。」
俺と地空は偶然にも同じ教室だった。
どうやら地空も進化剤を打ってくれた人に同じようなことを言われたらしい。
「今年は多いってなんのことだよ。」
俺はそう言いつつ教室のドアを開けた。教室の中を見渡すと、思ってたよりも生徒の数が少なかった。
だいたい人クラス30人はいると思ってたけど、そんなことはないらしい。
地空とのんびり話しながら来たつもりだったが、教室に生徒はあまり揃ってはいなかった。
俺と地空は先に着いた生徒たちの視線を感じながら自分の席に着いた。
すると直ぐに教室のドアが開き、高身長で細身の黒髪のイケメンが入ってくる。
「うん、全員揃ってるみたいだね。初日から遅刻者がいないのはいいことだね。」
その人の言葉を聞き俺は疑問に思った。全員!?
そのままその人は教卓の前に立つと
「はじめまして、今日からこのNクラスの担任になる色無 白人です。これから、、、」
「ちょっと待ったー!」
思わず俺はそう叫んでしまった。
「どうしたんだい?えっと、鳴雷君。」
色無先生は名簿をめくって俺の名前を確認し言った。
「いや、どうしたも何もこのクラス5人しかいねぇじゃん。これで全員って少なすぎない?」
当たり前の疑問だと思う。だって5人だよ5人。少子化にも程があるだろ。というか入学式の時今年も100名近くの生徒が入学って校長先生が言ったんだけど。
「驚くのは無理もないね。わかったではこのクラスの説明からしようか。」
色無先生はそう言うと話を続けた。
「このNクラスのNは英語のnewの頭文字でね。君たちのギフトは文字通り今世界に同様のものが存在しない新しいギフトになってるんだよね。そのため他の生徒たちは似たギフトを持つホルダーからギフトの使い方を教われるんだけど、君たちは自分たちで使い方を見つけていくしかない。だからこのクラスは君たち5人ってわけなんだよね。ちなみに2年生のNクラスは0人、3年生は3人いるよ。」
新しいギフト?同様のものが存在しない?なにそれ
「めっちゃスゲーじゃん、俺ら!じゃあ早速自己紹介しようぜ。俺、他のやつのギフトめっちゃ気になる。なっ、地空。」
「いや、私に振らないでよ。そんなに気になるなら、響から自己紹介したら。」
「それもそうだな。よし、俺の名前は鳴雷 響!ここにいる地空とは幼なじみで、、、」
「私のことはいいから自分のこと言えよ!」
「あ〜そっか、わかった。それで、ギフトは電気系って進化剤打った時に言われたから、電気系ってことでよろしく!みんなで一緒に最強のホルダー目指そうぜ!」
「僕が進行する必要も無いみたいだね。ありがとう鳴雷君。それじゃ次は震道さんお願いできるかな。」
色無先生に指名されて地空は少し驚きながらも、立ち上がり自己紹介をはじめた。
「あ、はい。はじめまして震道 地空って言います。ギフトは物を振動させたりできるらしいです。まずはみんなと仲良くなって沢山思い出作って行きたいと思ってます。これからよろしくお願いします。」
「はい、ありがとう。それじゃ番号順でやってもらおうかな〜。てことで次は出席番号1番鬼飼さん」
鬼飼、珍しい苗字だな。1番ってことは右端のあの子か、なんか大人しそうな子だな清楚系って感じがする。どんな子なんだろ。
「はい、では自己紹介させていただきます。鬼飼 鏡華と申します。ギフトは鬼化、体を鬼のように変化することができます。仲良くしていただけると幸いでございます。色無先生にクラスメイトの皆様これからよろしくお願い致します。」
「これはご丁寧に、次は4番の真壁君」
すると俺の左どなりにいる坊主でガタイのいい男子生徒が立ち上がる。身長は高く180はありそうだ。
「うっす!某、真壁 護と申す。ギフトはバリア、バリアを生成して守る。これが某のギフトでごあす。よろしくでございわす。」
「バリア生成いいね〜。男らしい!じゃあ最後5番の真夢君」
最後に立ち上がったのは特徴的なクマの紫のぬいぐるみを持った子だった。顔は前髪で隠れていてよく見えなかった。高校生にしては見た目は子供っぽい感じだ。
「あ、えっと……あ、はい。真夢 咆魔冷です。ギフトはえっと…、怖い……できます。あの…よろしく……お願…す。」
ほとんど何言ってるか聞こえなかった。結局どんなギフトなんだろう、あとで聞いてみよう。
「よし、みんなありがとう!基本3年間このクラスはこのメンバーになるから、みんな仲良くね。それじゃあ……」
「はい、先生!」
「またまた、どうしたんだい?鳴雷君」
「先生のギフトってなんですか?」
「あー、そういえば言ってなかったね。というか、言う前に君に阻まれたんだけどね。僕のはギフトデリート触れた相手のギフトを一定時間無効にできる。ギフトを使用した授業で君たちのギフトが暴走しても僕が無効にして止めるから安心して授業に臨んでね。」
「すげー、てかそのギフトって先生は進化剤打った時にどうやって、自分のギフトに気付いたんだ?」
「ん?あ〜、僕ね。進化剤打ってないんだよね。小さい頃から備わった体質として触れた相手のギフトを無効にできたからね。」
え、何それ。クラスの全員がそう思った。
いやだってイレギュラーすぎでしょ。基本体質だけだとギフトとして機能しないから進化剤を打つのに打てなくても機能するとか、進化剤打ったらどうなるんだよ。
「それでは、今日やることはこれで終わりかな本当は学級委員とか決めるんだけど人数の関係上、Nクラスは担任がやることになってるから。明日から普通に授業始まるから遅刻と忘れ物は厳禁でよろしく。僕は職員室にいるから何かある子は職員室までおいで。それじゃ解散!」
そう言って色無先生は職員室へと向かった。
地空は席を立つと鏡華に話しかけに行った。このくらすの女子は2人しかいないから早めに仲良くなっておきたいのは当然だろう。
「よし俺も話に行くか。」
そう思って立ち上がった時
「ひ、ひびき君」
俺の名前を呼ぶ声がした。小さすぎてどこからの声かわからずに辺りを見渡すと、後ろから制服を引かれた。
「ん?あ〜なんだっけ、ほめ、ほまり、ほむら?」
「あ、えっと…ほま、ほまれです。」
「あーそうそう、ほまれだ。俺になんか用か?てか俺の方が用あるんだけどさぁ。1つ聞いてもいいか。」
「あ、うん。いい……よ。」
「さっき自己紹介の時聞きそびれなんだけど、ほまれのギフトってどんなギフトなんだ。教えてくれ!」
「ぼ、ぼくのギフトは…その、相手の怖いものを、えっと……ぐ、ぐ」
「怖いものを……なんだ?」
「…げん…する」
「ん?」
「具現化する。」
怖いものを具現化するギフト。彼は喉の奥から言葉を絞り出してそう言った。
「へぇ〜面白いギフトだな。試しに見せてくれよ。」
「え、あ、うん、いいよ…………あれ?」
少しの間の後に、ほまれは急に焦りだす。
「どうした?」
「わ、分からない。見えない。」
「何がだ?」
「僕は生まれつき、人の嫌悪するものを……その、感じるというか、見えるというか……その分かるんだ。でも」
「でも、どうしたんだ?」
「ひ、ひびき君は怖いものはないの?君からは嫌悪というか感情すら感じないんだ。」
「嫌いなものかぁ、昔から好き嫌いはするなって母ちゃんから言われてるからな〜。ないな嫌いなもの。」
そう自信満々に言い放った響に対して、咆魔冷が驚いていると、大きな影が近ずいてくることに2人は気づいた。
「某も会話に混ざってもよかろうか?」
声の正体は護だった。
「おう、もちろんだ。そういえば護のギフトってバリアだよな。やっぱりどんな攻撃も効かないのか。」
「そんなことはないでごわす。某のバリアの強度と大きさは消費する体力に比例するでごわす。某、体力には自信があるので某のためのギフトと言えよう。」
それから3人の話が弾み始めた頃、響を呼ぶ声がした。
「響、そっちも仲良くなれたみたいね。」
「おう、地空も楽しそうに話してたから安心したぜ。」
「もちろんよ、それよりもね。鏡華ちゃんの家、旅館やってるんだって。ね、鏡華ちゃん。」
「ええ、私の母が女将をやっております。」
「へぇ、鏡華の母ちゃん女将さんやってんのか。すげぇな、それよりも鬼化ってカッコイイギフトだな。」
「は、はい。ありがとうございます。」
急に距離を詰め満面の笑みで話す響に、鏡華はすこし照れるように顔を赤らめる。
「いやぁ、具現化、バリア、鬼化ってみんなすげぇギフトだな。そうだ、今日はみんなで一緒に帰ろう!」
「ええ、ぜひご一緒させてください。」
「某も賛成でごわす。」
「う、うん僕も賛成。」
その後5人は学校を出ると、それぞれの趣味や将来のことについて語り明かしていた。
そして最後は今朝と同様、響と地空の2人になっていた。
しかし不意に感じだ殺気に2人は後ろを振り向く。そこには、さっきまで誰もいなかった。だが2人の後ろには、全身傷だらけで満身創痍の男がたっていた。
「み…つ…けた……。」
「ん?誰だ。おっさん。」
その男が発した微かな声に響は反応する。すると男は右手を振り上げて言う。
「お前を今…ここで」
響は咄嗟に地空の腕を掴み、身を引こうとするが
「殺す。」
遅かった、響はそう思った。こんなにも殺気をむき出しにして、なぜ気づいた時に逃げなかったのか響は後悔した。そして死を覚悟した。
時間かかりましたが、第2話完成です。
キャラメイクに時間使いすぎました笑笑
第3話もお楽しみに!