第一章4 『青年、過去に縛られる』
九月二十一日十三時 佐藤陸
「ねえ、陸」
「ん? 」
「陸はなんでそんなに死にたいの? 」
そんな事を紗良が聞いてきた。
なんで。なんでか。なんでって言われてもな。
親にもそこそこ愛されていて、そこそこ友達もいて、可愛い彼女もいる。
なのに何故か死にたい。漠然としない死にたさが僕を襲う。
僕はその死にたさが怖かった。怖い。生きるのが怖い。死ぬのが怖い。でも死にたい。
「分からない。逆になんで紗良は生きたいの?」
「えー。それはね。ないしょ」
*
八月二十日十時 佐藤陸
眩しい。カーテンから漏れた陽の光に目を細めた。
カーテンを閉め直すために窓際に向かう。
カーテンを閉めようとするとふと窓の外が目に入る。
そこには、近くの中学生と思わしき男女二人が歩いていた。
二人の距離感的に恐らく、交際しているだろう。
そんな事を考察していると、頭にあの日の記憶が輪廻する。
紗良と僕。二人が生きていたあの頃。楽しかった。
紗良がいなくなったあの日、僕も死んだんだ。死んだ。死んだ。死にたかった。
今でも死にたいと思う。でも紗良との約束が僕を蝕む。
死にたい。死にたい。死んでしまいたい。全てを投げ出してたい。
僕はそんな人間だ。紗良がいなくなってからの僕は空白だ。空っぽだ。虚空だ。
でも紗良との約束を果たすため、僕は生きる。
この約束が紗良との唯一の繋がりなんだ。
僕と紗良との約束。これだけは棄てられない。
僕は生きる。死にたくても。汚くても。綺麗に醜く生きる。
ため息をつき、椅子に座る。そして積んであった本を読む。
隣で紗良が微笑んでいる気がした。
自分の語彙力の無さに泣きたくなってくる。
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後々のプロットとの齟齬があったため、小説家の話は無くなりました。