プロローグ―3
「ここは……?」
気がつくと俺は真っ白……いや、真っ黒?
相反する色のはずなのに、何故かどちらとでも認識出来そうな不思議な空間に居た。
遙か彼方には円と棒の様な物が、薄らと羅列しているように見える。
「確か俺はトラックに挽き潰されて……」
だが俺の体には何の外傷も見当たらなければ痛みも感じない。
いや、痛みどころか何も感じなかった。
「ああ、死んだって事か」
「ご名答、理解が早くて助かりますね」
「……!?」
独り言に反応する声が背後にあったことに驚き、俺は振り返る。
そこには人……いや、人の姿を象った何かが居た。
姿は人間の女性なのだが、その瞳に光は無く無機質で真っ白な人形の様で、明らかに人では無いと感じられるその姿を前に俺は固まってしまった。
「ふふふ、そんなに緊張しなくても良いですよ? 私はただ貴方とお話をしに来ただけなので」
その女性はこちらを見て微笑みながらそんな事を言う。
その言葉をきっかけに、余りに非現実的な光景を前にして停止していた俺の思考が少しずつ動き出し、その結果1つの結論を導き出した。
「神様って奴なのか?」
訂正、俺の思考はまだ止まっているかもしれない。
今のはただ頭で直感的に思った事を、そのまま口に出しただけだろう。
だが、そんな俺の呟きにも女性は言葉を返してくれた。
「そうですね、貴方達の目線から見ればその認識でも間違ってはいないかも知れません」
微笑んでいた時は手を口元に当てていた女性は、俺の問いかけを聞くと手を下ろして淡々と応える。
「……厳密には違う?」
俺は理知的な女性の返答に今度こそ段々と平常心を取り戻していき質問を重ねる。
こんな空間に居る存在だ。死神等の言葉も頭を一瞬掠めたが、流石に雰囲気は何処か神々しい。
だから俺は神様だと感じたのだが……。
そして自身を神に近しき存在だと述べた女性はその質問にも返答を返す。
「ええ、決して遠くは無いですが貴方達から見た私を表すに最も近しい言葉は《神》よりも《観測者》、または《管理者》でしょう」