プロローグ―2
俺、金剛勇磨は学校からの帰り道の途中だった。
誰か仲の良い友人と一緒に帰っている訳でも無く、たった1人での帰宅だ。
別に珍しい事でも無いだろうが、そもそも俺に友人などと呼べる様な人は1人も居ない。
俺の学校での立ち位置を一言で説明するなら、それはカースト外だろう。
クラスに居ることには居るのだが存在感をまるで感じない空気みたいな奴、それが俺である。
進級したばかりとはいえ、高校2年にもなってそんな立ち位置に居るのは多分、俺自身に一番問題があるのだろう。
髪が長く素顔はよく見えない、たまに事務的な会話はするけれど当たり障りの無い範囲でとにかく無難。
休み時間はずっと本ばかり読んでいる奴と、もはや誰にも興味を持たれなくなる条件は全て兼ね備えていると言っても良いだろう。
それ故にカースト外。
興味すら持たれない人間にはクラスカーストなんて関係無いのだ。
因みに俺は、これでも友人なんて要らないとかいうタイプでも無い。
ここまで自分から人と関わろうとしていないで何言ってるんだと思われそうだが、そこが俺にとっては難しい。
容姿はしっかりと整えればとんでもなく悪いって程では無いと思うが、自信を持てるほどでも無いので隠す。
会話に関しても空気を読めているのかが気になり、過度に踏み込めば反感を買うのでは無いかと常に距離を保ちながら話す。
全てがこんな感じで動いているからいつまで経ってもぼっち生活なのだ。
自分でも面倒くさい奴だと思うし自業自得だ。
原因に思い当たる事があるのに一歩も踏み出せない。
現状より悪くなることを恐れて何もできない。
その結果が今の俺になってしまったのだった。
救えないのは友人くらいは欲しいと思っているくせに、悪意を持たれるよりはマシだと惰性的に学生生活を過ごしている内に、慣れてきてしまってきているいうことだろう。
そして友人同士で盛り上がっている光景を見る度に毎回後悔する。
ここまで来るともはや笑えてくる。
「帰ってラノベかゲームでもするか」
そう言って、いつも通りのもはや変化の無い日常を続けようとした時の事だった。
(ん?)
もう少しで交差点に差し掛かりそうと言った所で少し先を歩く、俺と同じ学校の制服を着た女子生徒が視界に入った。
(隣の席の……)
彼女は同じクラスメイトで、俺の隣の席に座る生徒である。
(名前、何だったかな……?)
隣の席の奴の名前すら覚えて無い事に内心苦笑いしていると、次の瞬間には衝撃的な光景が目に映る。
「なっ!?」
交差点の向こう側から暴走して来たトラックが、青信号を渡る彼女に向かって突っ込んで来たのだ。
「おいっ!!!」
名前がわからず、とにかく大声で叫ぶものの彼女はイヤホンをしており、どうやら聞こえていないようだ。
トラックに気付く様子は全然無い。
「クソッ!」
俺は急いで歩道に飛び出し、寸前でトラックに気付いた彼女の腕を掴んで背後に入れ替わるようにして投げ飛ばす。
その直後、俺は挽き潰された。
(あぁ、これは助からねえわ……)
絶対に痛いはずなのに、殆ど何も感じない体の感覚に俺は死を悟る。
(はぁ……つまらない人生ではあったけれど、別に死にたいわけじゃ無かったんだけどなぁ……)
隣の席の奴の名前くらい、ちゃんと覚えていればまた違った結果だったかも知れない……。
暗転してゆく意識の隅で、俺はそんな事を思いながら事切れるのだった。
同作者の別作品、【MakeO.S.】や劣等魔導騎士もよろしくお願いします!