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第三話 正真正銘の女神様

「チートが過ぎる」

「とにもかくにも、ステータスが優先か」


 完膚なきまでに叩きつぶすも、完璧なお膳立てをするにも力は必要である。そして悪役令嬢の適性がしりたい。


 ゲーム上ではボタンひとつで開かれたステータス表。現実となった世界ではどうなっているのか。本で調べられるかと思ったが、部屋に置かれている絵本は役に立たない。


「メニューオープン。……ステータスオープン」


 安直のほうが正解だったらしく、ゲームで良く見たステータスが目の前に表示された。魔法的、というより近未来的な半透明で、光る文字盤である。


 『イシス・ラッドルチェンド 称号:許可する女神様』の表示を視界に収めた。嫌な予感がする称号だななんて思いながら、目線を下へと進めれば……


「ええ、もう私は驚きませんよ。なんせ起きたら、絶世の美少女ですから!」


 ステータス画面に表示されたのは、取得したパッシブスキルと、レベルカンストの999レベルと、全ての項目――HP・MP・物理攻撃力・魔法攻撃力、等――カンスト済み。否、『ゲーム上におけるカンストさえ上回っている数値』


 イシスのステータス……取得したパッシブスキル等には見覚えが有った。そう私が永遠と遊んで、鍛え上げた主人公と同じだったのだ。しかし、ゲームに表示されていたカンストの数値は、9,999。

今表示されている桁は、9,999,999。


「おーけーおーけー。アイテムは?まほうは?」


 ステータス画面には御丁寧にアイテムや魔法のタブがある。まずアイテムのタブをタッチすれば、予想がついていたにもかかわらず、呻いてしまう。


 何度も周回し、かき集めたアイテムに嫌でも蓄積する消耗品。周回してようやく手に入るアイテム。ゲーム内ガチャ極小確率のレアアイテム並びに武器、防具、装備品。魔術書に禁書。

 

「あはは………」


 勿論、魔法一覧も同じ状態だ。レベルアップだけではなく、特定の条件を満たして取得できる魔法もあり、ゲーム内に存在する魔法が全て揃った取得魔法一覧。

 ゲーム廃人、ましてや課金廃人が極まった最高の表示であった。良く見れば、ゲームでは見ることのなかった、トロフィーコンプリートの証さえ表示されてる。


 カンスト数値と、トロコンさえ目をつぶれば、親の顔よりみた光景だ。有る意味安心さえする。

 

「カンスト数値……はなぜ?」


 ぐるぐると思考を巡らす。あくまで、この手持ちにレベルは『主人公』のものだ。なぜ主人公のステータスを持って居るのかと、考えたが、プレイヤーの私が悪役令嬢の中に入った際に、全部引き継いだとした言いようがない。悪役令嬢のスペックと、主人公のスペックが足された。と考えるのが自然だろう。


「え、まってまって」


 ちょっとまてと考えて見た。恐る恐る装備品の欄を確認すると、装備品を何も付けては居ない状態ではないか。

 

 焦って今服を着ているかと思ったが、間違い無く着ている。いやそんな問題は些細なこと。問題は、何も装備していないのにもかかわらず、そのステータス数値だと言う事だ。


「ほ、ほら物はためしですし……」


 独り言を言いながら、『女性専用の最強装備』を選択し装備をしてみれば、その分跳ね上がる数値。驚き通り越して呆れかえる。チートを上回り、もはや女神様そのものだ。

 装備したが服装は変化無し。装備品の効果だけ数値に反映。では直接装備したらどうなるかと、アイテム欄から、アイテム名をタッチ。予想通り装備品が出てきた。


 選択したのは叡智のティアラ。画面表示の装備品をすべて外した後、頭の上にのせれば、知性のティアラの効果、各魔法消費MP3%ダウンがステータスに付与される。


「……見た目のみ、効果のみをえらべると」


 ティアラを外し、どうやって戻すのかと、ティアラを画面に押しつけたら、中に仕舞われた。これで出し入れの方法は分かったわけだが、まだ、悪役令嬢の武器が判明していない。


 手元にある、各キャラの武器を装備しようとするがどれも出来なかった。アイテムとして出し、装備しようとしたが、掴んで使おうとした瞬間、手から蜃気楼の様に消える。

 どうみたって、適正武器ではないから使えないよ。といった所か。一応、武器装備に欄があるために、装備は出来る筈だが……


 今行える脳の処理能力からして限界だ。私は装備品を、画面に押しつけ仕舞い込み、書き留めた本を抱いてソファーの上で寝込んだ。


「いやいや武器特定しないと!!」


 寝て数秒私は飛び起きた。いけないいけない。武器を特定して、武器を装備しておかなくては。このスペックから、ラスボスさえビンタ一発で死にそうだが……武器があることによって私の心持ちが違う。


 考察班の予測では、タクト、杖、扇、鞭の四種。有力とされたのが、音を紡ぐ意味でのタクト。所謂指揮棒だ。次に、杖と扇が同列。最後に鞭。鞭の形状は議論が白熱した。


「タクト。タクトはないのか」


 部屋をごそごそ漁るかと思った瞬間、無意識のまま頭上に展開されたのは、天殻【テンカク】。

 天殻とは。女神の加護を顕現させた魔方陣。授かった魔術師は、天殻から様々な恩恵を賜る。天の名にふさわしく頭上に展開されるそれは、女神のご威光そのもの。下位、中位、高位とランク付けされているものの、下位でも有るのと無いのでは大違い。


 私は当然、女神が頭上に展開する天殻と同じ物を授かった。証拠に、女神の前髪に刻まれた刻印も、私の前髪にもある。


 手がいきなり輝きだしたので、目を細めながらも見てみれば、光が消えた後に出てきたのは、私が探していたタクトであった。


「お、……おお」


 そうですか、念じるだけで出ますか。


 ステータス画面を見れば、MPの数値が少し減っていたものの、パッシブスキルによる、ターン終了時にMP回復が発動。全快してしまった。

 これは、便利かも知れないと、他の推測武器を考え、私が欲しいと念じれば、同じく手の中に出現する。


 一通り作り出した、タクト、扇、杖、鞭を並べ、手に持つ物の、案の定手からするりと消え落ち、自動でアイテムボックスの中へ。


「何が正解なのか……?」

 

 御令嬢が持つ事を考えて選ばれた四種だったが全て外れ。当然、剣や双剣。魔導杖に魔導銃は装備不可。


 唸ること数分。旋律の女神の設定からもう一度考えるしかないと結論づけた。


 旋律の女神は、この世の全てを生み出し、全てを赦した存在と『表』ではされている。生きているのも女神の赦しがあってこそ、死に迫る苦痛から死を持って安寧を得るのも女神の赦しがあるから。

 では『裏』はなにか。『旋律』の女神は別名『戦慄』の女神。この世界を生み出し、世界の全てを赦しているのではなく、生み出した挙句に、存在して良いよと『許可』を出しているに過ぎない。その『許可』は、女神の慈悲により、生まれた瞬間は『許可』されるが、女神のご意向に沿って突然『不許可』あるいは『禁止』になる可能性がある。理不尽の極みな女神様だ。

 

 この裏の情報全てと、確信を得られるのは、全キャラ攻略後という鬼畜仕様。しかもその情報が載った禁書を手に入れるには、店に並ぶのを待つしか無い。しかも高額目玉商品の低確率出現と来た。これに怒り狂ったプレイヤーも居る。そして、情報を得た後、見方が変わるため、気になってまたキャラを周回する無限ループ。


「正しく、許可、不許可をする女神な訳で……」


 ふ、と思った。我々人間が許可を出すとき、何をするか。もし、それが何かの企画で、紙にまとめられていたのなら。もしそれに、許可を出すなら……なにをする?


『判子』を押すだろう。『許可』か『不許可』かの。


 背に走る悪寒らしき電撃。まさか、そんなと、許可と不許可と刻印された、横に長い判子を作り出した。

 ただ、よくあるありきたりな判子をイメージしたのにもかかわらず、チェスの黒い駒の様な持ち柄に、金の装飾が施された判子が出てきたものだがら、確信した。

 

 無慈悲なる『不許可』が彫られた判子。そして、私の意思で文字が『許可』に切り替わる。


 洗練された女王の駒の様な判子は、私の手の中に確かに存在する。答え合わせに、装備一覧をみれば、装備武器の欄に名前が表示された。


『女神様の御心』


 ここまで堪えた天才的な四歳児の脳味噌だったが、遂にキャパシティーを越えたらしい。私が力無く判子を手放せば、武装は解除された。書き留めた本も自動でアイテムボックスへと消える。


 視界が粘土を混ぜたように、ねじ曲がり、ソファーに倒れ込むと同時だった。異変を感じ取ったのか侍女のアリアが部屋に飛び込んでくる。

 アリアの悲鳴を、どこか遠くに聞きながら、私は意識を手放した


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