247 セイレーンのイリヤ
俺達はドラゴンのドラムが引く馬車に乗って、魔王軍四天王ガルダムの研究所がある、ルーマカ山に向かっている。
「空を飛んで、追ってくる者がいるにゃ。」
ケット・シーのペロが俺に告げる。
「ん、どんな奴?」
「ん~、ハルカに似てるにゃ。有翼人の様だにゃ。」
「ハーピーかセイレーンかな?」
「どちらかは分からんかにゃ。」
「人数は何人?」
「一人にゃ。」
「一人だと脅威はなさそうだね。」
「そうだにゃ。特に襲撃しようとする素振りはなさそうにゃ。慌てて追いかけて来たみたいにゃ。」
「あちきが見て来んすか?」
雪女のユキが言う。
「ん~。どうしよっかな?」
「我ガ殲滅シテ来ヨウ。」
と魔神パズズのバズ。
「いやいや、いきなり殲滅は不味いでしょ。事情は聞こうよ。」
「ん? ハーピー? 僕に任せてー。」
うとうとしていたハーピーのハルカが、馬車の中で立ち上がり窓に手をかけた。
「ハルカに任せよう。」
「承知しんした。ハルカさん、お気をつけてくんなまし。」とユキ。
「はーい。行って来るねー。」
ハルカは窓から飛び立つ。
俺は御者席のエルフのエリに声を掛けて、馬車を止めて貰った。
俺達が馬車を降りると、ハルカがセイレーンと夜空で向かい合って話をしているのが見えた。
程なくしてセイレーンの女性を連れて、ハルカが戻って来た。
「なんかねー、話があるんだってー。後ねー、お願いがあるんだー。」
「初めまして、セイレーンのイリヤと申します。」
「ど、どうも。俺はショータです。」
続いて同行してる仲間も次々と挨拶した。
「で? 俺達を追って来た様だけど、どんなご用でしたか?」
「皆さんがルーマカ山に行くと兄に聞いて、追いかけて来ました。」
「兄?」
「ええ、宿で働いている兄が、ハルカさんに聞いたそうです。」
「ああ、あの宿にいたセイレーンの人だ。」
そう言われて見れば似てるな。
「実はルーマカ山に私達有翼人の集落があるのですが、最近周辺で亜人の失踪事件が頻発しているのです。皆さんも危険があるのでは無いかと思い、お知らせに参りました。そして・・・。」
ん?なんか最後に言い難そうに下をむいたぞ。
「そっかぁ。態々有り難う御座います。」
「いえいえ、兄がその場でハルカさんに、教えられたら良かったのですが、その話を聞いた時は忘れてたみたいで、その後に私と兄が話してた時に気付いたのです。それでですねぇ・・・。」
「成る程。イリヤさんはこの後、また都市に戻るですか?」
「いえいえ、働いてた店が都市の襲撃で潰れたので、避難を兼ねて集落に帰るところでした。・・・厚かましいとは思ったのですが、一人では心配だったので、ハルカさんに同行をお願い出来ないかと思いまして・・・。」
「イリヤさんを集落に、連れていってあげたいんだよー。ねぇ、お願い!」
とハルカがお願いしてきた。
「お、おう、良いよ。女性の一人旅は危険だから、集落まで同行しましょう。」
「本当ですか? 有り難う御座います。」
イリヤはホッとして笑顔になった。
「ショータ様、ありがとー。やったねー。」
イリヤに抱きつくハルカ。
「ほらねー、僕が言った通り、ショータ様は優しいから大丈夫だったでしょー。」
「良かったぁ。」
二人は抱き合ってた。
「取り敢えず馬車に乗りましょうか。」
セイレーンのイリヤも馬車に乗せて、俺達はルーマカ山へ向かうのだった。
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