210 フロスト砦4
カシゾー将軍が気功士兵団団長のキャルに右手を出した。
「あんたらの実力は分かった。魔法兵団はこちらで処分しておく。済まなかったなぁ。これから宜しく頼むぜ。」
キャルはカシゾー将軍の右手を払った。
「ぬっ・・・。」
「何の冗談かしら?来た早々罠に掛けようとして、済まなかったで済むと思ってるの?」
「いや、これは魔法兵団の暴走だ。あんたらが、魔法使い達を殺して学園都市を奪った事の復讐だろう。」
「その話を信じろとでも言うのかしら?魔法兵団は帝国の国民になったと聞いています。帝国の兵士が、計画的に私達を殺そうとした事実しか有りませんが?」
「うぬ、儂も魔法兵団の暴挙を、防ごうとしたではないか?」
「それが演技では無いと誰が証明するのかしら?」
「回りの兵士が皆証明するだろうよ。兵士も危険にさらされ、危うく砦の入口が崩壊するところだったのだ。」
「帝国兵士の無罪を帝国兵士が証明するって、馬鹿にしてるのかしら?納得する者などいないでしょう。」
「ぎゃっはっは、面白い見世物だったよ。」
そこに現れた勇者パーティー。
黄金の鎧に身を固め、赤いマントが風に靡く勇者リクトと魔法使いナナミ、聖女ミク、剣士カツエー、魔法戦士ドーセツの4人。
俺の隣で、黒いローブを被ったエルフのエリが、勇者パーティーを睨む。
よしよし、落ち着けよ。と思いながら、腕を軽くトントンと触る。
カシゾー将軍が勇者リクトに叫ぶ。
「リクト!何をしていたぁ。居たなら魔法兵団の暴走を止めてくれよ!気功士兵団と揉める事になっちまった。」
「魔抜けの実力を見てみたかったからねぇ。なかなかやるじゃん。魔法兵団が手も足も出ないとはねぇ。どうだい、俺に免じてここは丸く納めてくれ。」
リクトはキャルに話し掛けた。
「私は気功士兵団団長のキャルと申します。どこのどちら様か存じませんが、これは国と国との話ですので、第三者の介入はご遠慮ください。」
「んぬ、俺は勇者リクトだぁ!魔王を倒す者だぞぉ!魔王を倒す為に全人類が協力して貰う必要があるんだ。例外無しだぜ!」
「勇者様でしたか。帝国兵の蛮行を見逃しておいて、今の言葉は説得力はありませんよ。全人類の協力を要請するなら、帝国兵の蛮行を止めて言うべきです。」
「ぐぬ・・・。」
「リクト、キャル様の言うとおりです。私が助けようと言ったのに、魔法兵団の蛮行を見ていた私達に言う権利はありません。ここはカシゾー将軍に任せて引きましょう。」
聖女ミクはリクトに告げる。
「しゃぁねぇなぁ。カシゾーさん、頑張ってねぇ。」
そう告げると勇者達は去った。
「おいおい・・・。行っちまったよ。キャルさん、どうすれば納得して貰えるかねぇ。」
「本日の事は国王陛下に報告させていただきます。陛下の指示が出るまで保留とし、対魔王軍の参戦も保留とします。それまでは、この砦に滞在し、滞在中の食事等は提供していただきます。」
「はぁ、分かったよ。認める。早めに国王陛下に連絡してくれ。」
おお、キャルは成長したなぁ。
交渉もバッチリだ。




