193 気功士王国建国
冒険者ギルドを接収し、気功士ギルドの本部として使用した事について、市民の混乱は無かった。
名前が変わったぐらいで、やることは変わらないからだ。
冒険者が気功士に変わった事については、寧ろ良い感じで受け入れられていた。
粗暴な者が多い冒険者よりも、真面目で人当たりの良い気功士の方が良いに決まっている。
都市の生活も概ね問題無く、変わらず継続している。
領主変更後、不満がある市民は出国を妨げない事を宣言したが、今のところ出て行く人は少なかった。
誰が領主になっても今の生活が変わらなければ良いのだろう。
親の代から生活している土地を離れ、ゼロから他の土地で再出発する事が嫌だったのだろう。
少数の都市を離れた人達は、領主や魔法兵団の兵士、学園の教師達の家族達だ。
と言う事で、都市内は平穏な生活が続いている。
一方国外においては・・・。
学園都市を占拠すると同時に『気功士王国』の建国を宣言。
民主主義にしようと思っていたのだが、この世界でいきなり民主主義にするのは問題があるらしいので、俺が王となる王国となってしまった。
不本意です。
俺は名前だけ王になり、全権を国王代理のダルアに押し付ける事で了承した。
計画通り、猫の王国、サーキ王国、獣人国、小人国、妖精国は気功士王国との国交樹立を宣言して貰った。
エルフ国とハーピー国は国交樹立準備中といったところか。
帝国は静観の様子。
問題はその他の国だ。
特に学園に王族や高位貴族の子弟が、留学していた三つの国は、気功士王国を国と認めていない。
学園都市を不法に占拠したとして、討伐軍を派遣する勢い。
まあ、想定通りですけどね。
帝国は独自の教育システムを持っている為問題無いのだが、学園に魔法教育を依存していた国々はカンカンだ。
急先鋒の三つの国を始め他国には、秘かに密偵として気功士達を派遣し、情報収集を行っている。
それと同時に魔力が無い者達の受け入れや脱国を支援する為、ヴァンパイア達も暗躍させていたりする。
国交樹立した国や国交準備中の国からは、本人とその家族の了承のもと、魔力の無い者達を学園に受け入れ、気功士の教育を実施。
気功士を着々と増やす予定だ。
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反気功士勢力の三つの国の内の急先鋒、ライル王国。
王の執務室にて、宰相が王に進言していた。
「ひひひ、学園都市が魔抜け達に占領された件ですが・・・。」
「それは本当の話なのかのぅ?魔抜けが魔導師の国を落とすなんて、今だに信じられんぞ。」
「ひひひ、本当の話です。」
「公爵の三男が学園に在籍してたはずだが、殺されたんだろう。」
「はい。ひひひ、それで今がチャンスかと思います。」
「ん?どう言う事だ。」
「ひひひ、学園都市を奪いましょう。」
「な、何と!それは奪えれば奪いたいが、大丈夫なのか?」
「ひひひ、大丈夫ですとも。魔抜けどもは少数の奇襲で制圧したらしいですから・・・。」
「ふむふむ。」
「ひひ、魔法兵団をどんな方法で倒したかは分からないのですが・・・。」
「ふむ。」
「ひひひ、あの魔法兵団と戦ったのですよ、無傷であるはずがありません。しかも魔抜けですから後ろ盾がある訳も無く、数を揃えて軍を派遣すれば落ちないはずがありません。」
「ほほう、成る程のぅ。」
「ひひひ、わが国の公爵の子息の敵討ちと言う名目も立ちますし、公爵を焚き付ければ兵も出すでしょう。公爵に名誉を、国に実利を得るのです。学園の遺産を手に入れれば、我が国の発展は間違いありません。」
「お主も悪よのぅ。」
「いっひっひっひ。」
「がっはっはっは。」




