152 帝国軍VS魔王軍の前線
俺達は馬車で帝国軍と魔王軍の前線に向かう。
ドラゴンのドラムに乗って空を飛んだ方が速いんだけど、色々問題があるからね。
町の上を飛んで敵に認定されたら面倒臭い。
ドラムは騎乗用として仲間にしたけど、必要無いか?
なんてちょっと思ってたら、察したらしい。
「儂は馬車を引くことも出来るぞ。」
「ドラゴンが馬車を引いたら目立つだろう。」
「そうじゃな。翼の無い地竜が馬車を引くこともあるが、馬車を引くドラゴンは先ずいないじゃろ。」
エリも同意見だ。
「翼は隠せるぞ。」
ドラムは食い下がる。
「ふ~ん。じゃあ、隠してみて。」
翼を消したドラムは・・・。
大きさを地竜に合わせれば、まあおかしくなくも無い。
どっちなんだ!
そんなこんなで、馬車は翼を消したドラムが引く事になった。
御者はエルフのエリとハーピーのハルカ。
6人乗りの馬車の中には俺と・・・。
ケット・シーのペロ。
雪女のユキ。
ニャルマル商会のシャルさん。
情報屋の小人モヤジー。
魔神パズズのバズは風になって馬車の周りを漂う。
そして、魔王軍について説明して貰う為に、『暗黒の怪奇』からヴァンパイアアルケミストのヨシゾーを同行させた。
帝国軍については、モヤジーに説明して貰う予定だ。
人間のサイズは俺とペロ、ユキ、シャルさん、ヨシゾーの5人なので、割と余裕だ。
荷物はアイテムバッグだしね。
途中の休憩や野営では、馬車を降りてダンジョンを展開して休む。
初めて見たシャルさんとモヤジー、ヨシゾーはビックリだ。
ハルカの料理に舌鼓をうち休憩に入ると、エリとヨシゾーは魔道具の事で意気投合して情報交換をしている。
ペロとシャルさんも仲良しなので、食後の会話が弾んでいる。
そうこうして、数週間進むと、いよいよ前線に近付いて来た。
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前線近くの山の頂上に登った。
近くとは言っても、前線からはかなり遠い。
肉眼では前線の様子が殆ど見えない。
時折、激しい火の手が上がるのが、微かに見える程度。
「こんなところで何をするにゃ。」
ペロが俺の脇腹をツンツンする。
「勿論、前線の様子を見るんだよ。」
「見えないにゃ。」
「エリ、例の物を出してくれ。」
「了解じゃ。」
エリがアイテムバッグから望遠鏡を出した。
魔道具では無い望遠鏡。
魔道具を使って、魔力を感知される事を嫌って普通の望遠鏡を作って貰った。
「これは何かにゃ?」
「その棒の先から覗いてごらん。」
「おおおおおおお!見えるにゃ!」
「太陽は絶対見ない様にね!」
「分かったにゃ。」
シャルさんがわくわくしながら、俺を見詰める。
「人数分用意したよ。エリ、皆に渡してくれ。」
シャルさんは望遠鏡を覗き込むと、直ぐ俺に振り向いた。
「ショータさん、これは売れますにゃ。是非、商会で売らせて下さい。」
「う~ん。まあ、良いんだけど、売り先は限定して欲しいかな。敵になる組織の探索部隊に渡ると厄介だ。」
「成る程にゃ。承知致しましたにゃ。」
さて、帝国と魔王軍の戦いはどうかな?




