140 気功士ミクとアヤ
Cランク冒険者パーティー『紅の戦士』の冒険者6人が、気功を修行中の2人の女性を差し出せと、訳が分からん事を言ってきたので、4人を倒した。
残る2人は気功士の女の子であるミクとアヤに任せる事にした。
ミクとアヤは冒険者と初めて対峙して、戸惑っていた。
魔物以外と戦うのは初めてだった。
生まれた時から、魔法を使う人々に苛められ続けた。抵抗すると倍になって帰って来た。恐怖心が甦る。
俺に発破をかけられ、剣を構えたが、直ぐに切り替えは出来ていない。
「くっ、俺達を舐めてんのか?魔抜け2人程度に負けるかあああああ!」
『紅の戦士』リーダーのトシは瞬足で踏み込み、一瞬の抜刀で剣を薙ぎ払う。
瞬間、ミクとアヤは身体が勝手に動き余裕で躱していた。
「あれ?意外と遅い・・・。」
そして、反射でミクが剣の腹をトシの顔面に叩き込む。
「ぐおおおお、つっ。」
そのスピードは速く、カウンター気味に入った打撃をトシは認識出来なかった。
「な、何だ?何があった?」
トシは倒れた身体を起こし、首を振る。「まだやれる。」そんな目をして、ミクを見上げる。
「馬鹿な!魔抜けの動きじゃない。」
「やれる!」アヤは自信を持った。
(今まで苛められた分叩きのめす。)
アヤはトシの脇をすり抜け、もう1人の冒険者に向かっていた。
アヤの踏み込みは、トシより速く、そして鋭かった、驚愕の冒険者。
冒険者の構えた剣を薙ぎ払い、腹に横蹴り、蹴り飛ばす。
冒険者はあまりにも強い衝撃に、剣を飛ばされ、腹を蹴られて、くの字になって吹っ飛ぶ。
「ぐほっ。」
四つん這いでアヤを見上げる。
「魔抜けの速さじゃない・・・。
そんな馬鹿なっ!魔力で身体強化している、俺の剣を飛ばすなんて?」
攻撃したアヤもびっくりしていた。
「Cランク冒険者ってこんなに弱いの?」
「嘘だあああああああ!」
冒険者は我を忘れアヤに掴み掛かる。
アヤは剣を左手に持ち、右拳を強く握り気を充填していた。
そしてカウンターで、顔面に渾身のパンチを入れた。
吹き飛ぶ前歯。
首が後に曲がり、もんどり打って倒れる。
「そ、そんな?ま、まさか、お前等、き、気功士か?獣人国から冒険者ギルドを撤退させた。あの・・・。」
トシは恐怖に怯える。
4人の仲間を一瞬で倒した、圧倒的な強さのエリとユキ。
仲間をぶちのめした気功士。
自分と対峙するもう1人の気功士。
皆がトシを囲む。
戦う気力が無くなったトシは、両膝をつき、頭を抱える。
「あわわわわわわ。」
ミクが剣を構えて、ゆっくりトシに近付き歩いて行く。
「ひ、ひぃ。」
「さあ、立って、私と貴方の戦いは終わっていないわ。」
ミクが少し笑いながら剣を向ける。
「た、助けて下さい!」
トシは怯えて震え出した。
トシは土下座して、許しを請う。
「すいませんでしたあああああ。」
「えっ?もう、終わり、なの?」
唖然とするミク。
「うっそおおお。ショータ様の課題だったのにいいいいい。」
ザシュッ!!!!!
ミクはトシの目の前の地面に剣を突き刺す。
「ひいいいいい。」
トシの股間から、生暖かい液体が垂れ流された。
「あああああああ、すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません・・・。」
ひたすら謝るトシ。
俺はトシの目の前に立った。
「さて、この2人を連れて行こうとした理由を、教えて貰おうか?」




