119 殲滅の旅団のサブマスター
『殲滅の旅団』の拠点3階を3人の女性が歩く。
エルフの『疾風』エリ。
ハーピーの『風刃』ハルカ。
雪女のユキ。
『殲滅の旅団』の団員が次々と殲滅されていく。
そこに現れる老齢の猿獣人。
「貴様ら、やってくれたなあああ!」
猿と言うか、白く長い体毛に面長の顔、開いた口から見える鋭い牙、痩せているが、引き締まった体躯。
狒々だね。
狒々ジジイ。
「俺は『殲滅の旅団』サブマスターのハヤテだ。二つ名は『狒々』。
計画が台無しだよ。どうしてくれる?まあ、弱い奴等は死んでもしょうが無いから、貴様らを『殲滅の旅団』に入れてやる事にするよ。替わりに働けよ。」
二つ名・・・。
そのまんまじゃん。
ハヤテって名前は似合わないなぁ。狒々ジジイと呼ぼう。
俺は気配を消して、狒々ジジイを見ていた。
「断るのじゃ。」
エリの矢が狒々ジジイの額に迫る。
『疾風』の二つ名を持つエリは、弓矢を瞬時に放てる。
しかも速い!『疾風』の弓矢。
その矢を狒々ジジイは右手で掴みニヤリと笑う。不敵な笑み。
エリは連続で矢を放つ。
額、喉、心臓と急所に正確で高速の矢が突き刺さる・・・。
かと思ったが、
「無駄無駄無駄。」
『狒々』は両手で矢を弾き飛ばす。
ハルカが宙に浮き、風刃を放つ。
『風刃』の二つ名を持つハルカ。
ハーピー種の固有スキル風魔法。
背中の羽程度の大きさでは、本来航空力学的に飛ぶ事は出来ない。
そこはファンタジー。
ハーピー種は生まれると同時に風魔法が使える種族である事から、風魔法で飛行可能になるのだ。
赤ちゃんの時から呼吸をするように、風魔法を使い、飛行出来る様になる。
そのハーピー種の中でも、トップクラスを誇る膨大な魔力と、精密な魔力操作から繰り出される風の刃は、瞬時に濃密で鋭く且つ大量に放出出来る。
魔神パズズのバズには負けるけどね。
それは種族間の優劣だからしょうが無い。
いずれにしても、ハルカの風刃は人族や獣人族には、通常逃げることも出来ずに切り刻まれる。
その数百の風の刃が狒々ジジイに迫る。
狒々ジジイは風刃が放たれる前に、横に躱していた。
そしてハルカに踏み込み、跳躍し鋭い爪を振り回す。
ハルカは爪を躱すが、爪が躱した方にズレて攻撃して来た。
ハルカの頬が切れて爪の跡が残り、血が滲む。
「くっ、おかしな技を使うね。」
「無駄だよ。貴様らの攻撃も防御も俺には効かない。」
狒々ジジイは不敵な笑みを崩さず、余裕綽々。
ハルカは蹴りを放つ。
鳥の鉤爪による鋭く強力な蹴りだ。
狒々ジジイは、蹴りを受け流すと、ハルカの背後に回り抱きついた。
胸を揉む。
「おほっ、良い胸だ。」
卑猥な笑顔。
マジで狒々ジジイじゃん。
これはアウトだ。
許せん!
ユキが右手を振る。
狒々ジジイが凍りつく・・・。
と思ったら、後ろには飛び退き躱していた。
ユキの精密な氷魔法はハルカを避けて、狒々ジジイだけ攻撃した様だ。
ハルカに怪我一つ無い。
ハルカがユキに駆け寄る。
「僕は怒ったぞ!エロジジイめ!」
「許しんせん。」
俺も許せん。
名前もエロジジイに変更だ。
ユキはハルカを抱きしめ、エロジジイを睨む。
「むふ~。良い身体の女子達だ。愛人にしてやろう。3人一緒に楽しんでやる。」
エロジジイは鼻息を荒くし、胸を揉む動作で両手の指を動かす。
ふむ。まるで何処をどんな技で攻撃するのか、どこに躱すのか分かってる動きだ。
心を読む様だな。




