103 獣人国酒場前1
熊獣人を酒場の外に放り出すと、後ろから虎獣人の男が近づいて来た。
「俺は殲滅の旅団に所属しているCランク冒険者のタイキチだ。お前は強そうだな。特別俺の下働きで雇ってやろう。」
「はぁ?」
此奴、頭が行かれてるんじゃないの。
「生意気なベアゾーも懲らしめてくれたしなぁ。」
そして馴れ馴れしく肩を組んで来た。
それを見て熊獣人のベアゾーが睨む。
「くっ。」
ベアゾーは俺に握りられて痛めた右手首を押さえている。
「おい、ベアゾーこれに懲りたら、二度と俺達に逆らうな!」
なんて虎獣人のタイキチが言い始めた。
俺は身体を回転して、タイキチから離れる。
「ん?」
タイキチは俺を見る。
俺はタイキチの顎に右拳でフックを放つ、目にも止まらぬ速さ。
脳震盪を起こして崩れ落ちるタイキチ。
「何だ此奴馴れ馴れしいな?暫く寝てろ。」
「えっ?」
驚くベアゾー。
「おい、ベアゾー。此奴と二人で酒場と女性達にお詫びして、弁償しとけよ。」
俺はベアゾーを殺気を込めて睨む。
「は、はい。」
俺はそのまま酒場を去ろうとした。
「おい、待てよ!」
酒場から数人飛び出て来た。
虎獣人の男と豹獣人の女、兎獣人の女の3人だ。
「俺はタイキチの仲間、殲滅の旅団のCランク冒険者タイスケだ。」
虎獣人の男が声を掛けて来た。
「同じくCランク冒険者ジャガミ。」
と豹獣人の女。
「同じく私はラビコ。」
と兎獣人の女。
「で、何の用だ。仲間をやられて敵討ちか?」
振り向いて問い掛ける。
「騒ぎを起こしたタイキチが悪いので、敵はどうでも良いが、お前強いな。」
「そうでも無いよ。」
「いやいや、タイキチをワンパンで倒す実力は良いぞ。」
「そうねぇ。殲滅の旅団に入れてあげてもよくてよ。」
その時、兎獣人の女から、厭な雰囲気の何かを感じた。
悪意のある視線で無理矢理覗き見られてる感じ。
「この男、魔抜けよ!魔力が全く無いわ。」
「!」
鑑定は防止してるはずだから、魔力探知か。
「魔道具で消してるからね。」
何とか誤魔化してみよう。
「馬鹿言わないで、魔力を完全に消す魔道具なんて無いわ。消す必要も無いしね。」
面倒だな。どうしようか?
「ふ~ん。魔抜けか。魔力で身体強化しているタイキチを一発で倒したとは、驚きだな。」
「何か裏がありそうね。拠点に連れて行って調べましょう。」
「気を付けて、魔道具を使ってるのかもよ。」
「所詮魔抜けだろう。タイキチが油断してただけだ。大した事無いさ。有効利用してやろう。」
「拠点で飼ってる魔抜け共と一緒に、飼ってあげるわ。」
拠点で飼ってる魔抜け共?
虎獣人のタイスケと豹獣人のジャガミは、暢気に会話を続ける。
「そうそう。クズの魔抜けは、有効利用しなくちゃね。」
「油断しないで、鑑定が効かないから、何か魔道具を持ってるわよ。」
兎獣人のラビコは警戒している。
頭を振りながら、顎を押さえて虎獣人のタイキチが起き上がった。
「此奴、魔抜けだったのか、お仕置きしないとな。」
タイキチは右拳を左手の平に当ててやる気充分。
ベアゾーは痛めた右手首を押さえて困惑顔で見ている。




