出会いと別れ
家に戻る道中は自然と手をつないで歩いた。彼女が涙を流した理由は僕には正直分からないし、彼女は急に僕が抱きしめた理由も分からないだろう。でも、お互い感じてることは一緒なんだ。何かが通じているんだ。
静かな時間が続いた中で先に口を開いたのは彼女だった。
「なんか、ありがとね・・・。」
「あ、いや、なんかごめん・・・。」
「なんで謝るの?きっと優しいんだね。颯斗君は。」
「そんなこと・・・ないよ。」
なんだか照れてしまった。
「そんな颯斗君に出会ったのはどんなときだったかな?」
「雨、すごい大雨だったよ。」
彼女に初めて会ったときの事は意外とはっきり思い出せる。とても印象が強かったのだろうか。
僕は小さいころ、この田舎にある小さな公園で毎日のように遊んでいた。大雨だろうとなんだろうと僕はその公園が大好きで、その日も土砂降りの雨だったにも関わらず、カッパをつけてその公園に行ったのだ。
普段1人で遊んでいた僕だけど、その日だけは先客がいた。雨に打たれながらも1人楽しそうに遊んでいる女の子。それが咲良だった。
彼女は僕を見つけて「一緒に遊ぼう。」と声を掛けてくれた。今まで1人で遊んできた僕にとって、誰かと一緒に遊ぶ事は新鮮で、とても楽しかった。だから僕は言ったんだ。
「また必ず一緒に遊ぼうね。」
って。
親にバレる事なく部屋に戻り、朝を迎えた。
昨日の綺麗な空とは打って変わって今日は土砂降りの大雨だった。そう、あの日のように。
「颯斗君。公園行こっか。」
「そうだな。」
昔みたいにカッパをつけた方が良いのかなとも思ったけれど、家に無かったので傘をさしていく事にした。恥ずかしながらも彼女の提案で相合傘になった。
「何で相合傘なんだ?」
「いーじゃん。いーじゃん。楽しいよー。」
「濡れるし。」
「そこが醍醐味でしょー。どうせ公園着いたら濡れるよ。」
家から少し歩いてその公園に着いた。
「この公園久しぶりだね。まだ残ってるんだ。」
「本当に久しぶりだな。100年ぶりくらいだ。」
「颯斗君一体何歳だっつーの。でもそれぐらい、長〜く生きられるといいね。」
そんな風に僕のボケに彼女が笑ってくれただけで空気が和やかになった。
「じゃあ私砂場の方で遊んどくから1分後くらいに来てね。」
「え?でも濡れるよ?」
「きっちり再現しよー!はい、1分後ね!」
彼女はそのまま砂場に走っていって楽しそうに遊び始めた。
僕は数メートル程公園から離れる。
ふと下を見た。
「えっ?」
まるで使って下さいと言わんばかりにカッパが畳まれて置かれていた。さっきまで何も無かったはずなのに。普通そんなの警戒して着ないけど、状況からして僕はそれを着た。
1分程経った頃、僕は公園に足を踏み入れた。カッパを着た僕を見つけた彼女が僕を見つけて言った。
「一緒に遊ぼう。」
あぁこれだ。これが最初だった。10年経った今、僕達は再び出会った。
そのまま雨に濡れながら砂で山を作ったりして遊んだ。今でもとても楽しくて、時間が経つことを忘れた。
当時もきっとこんな感じだったのだろう。
「よっしゃ!崩すぞ!」
そう言って砂の山に向かって思いっきりジャンプして豪快に崩したとき、そこに1枚の紙があった。
夢を求む若き男女へここに記す。最後の別れをもう一度。
別れなんて永遠に来なければいいのに。
濡れた服のままどうやって家に帰ろうかと思ったけれど、空は急に陽を見せてさっきまでの雨が嘘のように僕達を照らした。
彼女に最後に会った日はこんな綺麗な晴れだった事を思い出す。
「このまま、別れまで再現しちゃおっか。」
「そうだな。時系列の進み早いな。」
「そうだね。」
咲良が引っ越す日に僕達が別れたのは、神守山の反対側の山にある高台だった。山を少し登ったところに小さなトンネルがあってそこを抜けると海が見える高台に出るのだ。
それが僕達の最後の探検だった。
大分服も乾いてきた頃僕達はトンネルの前に着いた。
「このトンネルを通るのも久しぶりだね。」
「うん。」
「よしっ!じゃあ行こっ!」
彼女に手を引かれて僕達はトンネルの中を駆ける。遠くから光が見えて出口が近づいてくるのが分かる。
そして出口を抜けるとそこには1面海が広がっていた。
「うわぁー!キレイ。」
広大な海とそれを照らす壮大な夕陽。これもあのときと一緒だ。そしてふと思い出した。
「あのとき・・・君は泣いて・・・」
ぱっと横を見ると彼女の目からは涙が溢れでている。なんて美しいんだろうか。彼女のその姿はなんとも例えきれない美しさを持っていた。
「これは感動の涙だよ。」
そう笑いながら言った。
どのくらいこの景色を眺めていただろうか。
帰ろうとしたとき、足元に紙が落ちている事に気づいた。
夢を求む若き男女へここに記す。再会のときをもう一度。
「これは明日だね。」
「うん、そうしよう。」
感謝以外に何があるだろう。僕はこんなにも美しい君にまた出会う事が出来たんだから。




