美しい涙
満月のおかげで夜でも空は大分明るい。僕達は今からそれを1番キレイに見えるところに向かっていた。
あまり時間をかけると抜け出したのがばれる可能性が高まるので、僕は自然と早足になってしまう。
「もうちょっとゆっくり歩こうよ。時間はまだあるんだから。しかも、夜だから足元見えにくいし。」
まぁもっともではあるのだが。
「あんまり長時間抜け出すわけにはいかないだろ。」
「大丈夫だよ。」
なんの根拠を持った大丈夫なのかよくわからない。
「あーそれにしても今日が満月で良かったね〜。」
「なんで今日が良かったんだ?」
「・・・別に。早い方が良いんじゃない。」
頂上に着いた頃にはもう12時をまわっていた。補導されてもおかしくない時間帯だ。
そんな中で空は暗くなってしまっていた。
「曇ってるし・・・」
「うーん。大人しく待とっ!きっと照らしてくれるさ。」
当然今日中に月を見なくてはならないので賛同する以外ない。
数分程経っただろうか、自然と会話も少なくってなんだか少し気まずい。これが思春期の男女というものだろうか。
この空気を変えたくて何か話かけようと思い、彼女の方を向いてはっとした。
こんな暗闇でもはっきり見える彼女の横顔があまりにも美しくて。
そこに月明かりが差して、彼女の顔を照らす。そして彼女は一筋の涙を流した。
僕はそれに見入ってしまって、彼女をじっーと見ていたら、彼女は僕に気づいた。
「ごめんね。なんでもない。何でだろうな。」
なんて言えばいいんだろう。
「あの・・・その・・・大丈夫・・・?」
何が正解かわからない。
「うん、大丈夫大丈夫。・・・あれ?でも何で止まらないんだろう。あ・・・」
無意識に僕は彼女を抱きしめてしまった。あとで怒られてもいいんだ。嫌われてもいいんだ。今は何を言うよりもこれが正解だと思ったから。
「あり、がと・・・。」
彼女は確かにそう言った。そして何故だかこう思った。彼女とずっといていたいって。
僕達2人を完全に光が照らしたとき、1枚の紙が落ちてきた。
夢を求む若き男女へここに記す。初めての出会いをもう一度。
僕達はしばらくここを動かなかった。