異世界系作者のバイブル・ブラック
タイトルのブラックに意味はありません。
それでもあれ? と思った人は、CDショップに行ってキングクリムゾンの『Red』というCDを借りてくるんだ。
そして、その中に「スターレス」という曲がある。それを聞いてくれ。
いいかい、クイーンⅡからブライアン・メイを引いて白黒印刷したような、黒っぽいジャケットだ。タイトルは上の方に書いてあるけど、書体の関係で読みづらいかもしれない。日本語版は、そのまま「レッド」だ。
そんなバンド知らないよ、あるかどうかわかんないし。そう思った君、洋楽のロックのコーナーを探すんだ。
断言しよう、絶対にある。ないなら、借りられているだけだ。
童話コーナーでシンデレラが置いてないってことがあるかい? そんな存在だと思ってくれ。
はい、本題いきます。
異世界系、みんな書いてるかい? 私も書いてるよ。
まあ私のは微妙に異世界になり切れていない半端ものだけど、その話はまた今度。
「無職転生」
「冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた」
今日は、この2作品を、異世界系小説のバイブルとして指定しようぜというお話です。共に書籍化されている、超人気作品ですね。
特に「無職転生」は、これを読まずに転生モノを書くべからずと言ってもいいレベルの作品です。
ということで。一つずつ紹介しますねー。
ちなみに私は、書籍のほうについては詳しくありませんので、ご了承ください。
●「無職転生」
少し前までずーーーっとランキング一位の場所にあったので、例え未読でも、タイトルくらいは知っているのではないでしょうか。
キモオタが事故で死に、ファンタジー世界に転生。ルーデウスという魔術師として女の子ときゃっきゃうふふしつつ、世界の底に根を張る存在と戦っていく。そんなストーリーです。
こうして書くとよくある流れなのですが、ルーデウスさんの一生を追っていくという点が少し特殊でしょうか。
幼少期(というか赤ちゃん時代)から、少年、青年、中年……と、誇張ではなく本当に彼の一生を体験していくことになります。
この作品のすごさは、その膨大な設定、情報量。これに尽きます。
がばがばファンタジー、がばがば中世と揶揄されることの多いなろう界ですが、この作品の設定の練り込み具合には、他の作品と圧倒的な差があります。
まるまる一つのファンタジー世界の歴史をかっちり作り上げているため、例えば国同士のいざこざは単に一つの戦争で終わらず、その後の他国のパワーバランスにまで影響を及ぼし、その流れまでストーリーの中できちんと書かれていくのです。
随所に挟まれる小ネタやエロで読者を飽きさせないようにもなっていますし、累計一位の名はだてではありません。
ということで、設定の鬼。
●「冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた」
こちらは転生ではなく、普通のハイファンタジーですね。異世界系というと少し違和感があるかもしれませんけど、勘弁してください。
これは過去に足を怪我して冒険者を引退した父と、現役冒険者(Sランク)の娘の、ハートフルコメディーファンタジー冒険ものでしょうか。ダブル主人公で進んでいくのですが、まあそのへんはいいのです。
私がこの作品をバイブル候補に挙げた理由はただ一つ。
「小ネタやエログロなしの、正統派ファンタジー」ということです。
スキルがどうとかということでもなく、現実に存在するゲームやアニメ、ネットでの言い回し、小ネタが使用されていない。
また、安易にエロやグロ展開でもない。
重ねていうと、登場人物に”悪役”はいても、”ゲスな悪人”はいない。ロールとして悪の役回りをして、他人を殺したりというキャラも当然います。しかし、割とまっすぐな悪です。
うらみで変に性格がゆがんで、裏から手を回したり、快楽のために不必要な残虐行為を行ったりという人がいない。 ――このへんは主観なので、あくまで私の基準になりますけど。
そして大切なのが、「それなのに面白い」ということです。
小ネタを挟んでちょっとした笑いを誘ったり、過激なエロやグロ、うつ展開などを売りにしたり。
確かに簡単にできて、アクセントにもなります。そして、なろうで小説を読んでいると、そういう作品が本当に多いのです。
「こういうネタを入れないと人気が出ないものなのかなー」と思っていた私には、衝撃でした。
ということで、以上2作品を旧約・新約のバイブルとして暫定的に指定しておきます。
普通に読んでも面白いのですが、今回は作者側の視点としてのお話でした。
未読の方はぜひどうぞー。