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ハーミリアの魔術譚  作者: 茅野 遼河
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新世界の治癒の魔術士(5)

「ドゥーグさんが魔術士? ええええええ!」


「声がでかいぞ」


「いや、けどその……。体格といい雰囲気といい魔術士っぽく……」


「魔術士らしい体格や雰囲気ってのはなんだ? 別にそんなのに決まりはねぇ。そいつが魔術士ならそれが事実だろう?」


「それはそうなんですが……ドゥーグさんに魔術って必要なんですか?」


ハーミリアは何かに気付いたように立ち上がり、ドゥーグへと近づき、体をじっと見つめる。


「ドゥーグさん……もしかして体が悪いんですか?」


「何言ってんだ。ドゥーグさんなら元気じゃないか」


ドゥーグがハーミリアの発言に目を見開き、肩を強く掴む。


「嬢ちゃんの目には……いったい何が映ってるんだ?」


「え? え? どういう……事ですか?」


ドゥーグに睨みつけられるようにして肩を掴まれている内に、質問の意図はわからずとも、とりあえずされた質問に答えることにするハーミリア。


「え……っと、ドゥーグさんの体を見たら、そのたくさん魔術文字が出てたんでもしかしたら体が弱いのかな〜、なんて」


「魔術文字が見えた……? やっぱりか。嬢ちゃんが魔術士なのはこの剣の直り方でわかったよ。これはもはや人の技術じゃなかった。ありゃ確かに俺の剣だったが、新しい物を作ったような直り方。そんなん実現すんのは魔術くらいだって事だ」


「そうですよね……魔術士から見たらバレバレですよね。えへへ」


「ただ嬢ちゃん、この魔術は元々出来たわけじゃない。なんとなく出来た、そうじゃねぇか?」


ハーミリアは微笑み俯いていたのに、そのドゥーグの発言に目を見開きハッと顔を上げ声を荒らげる。


「どうしてそんな事がわかったんですか!」


「嬢ちゃんは特別だ、魔術文字が読める。今はまだ感覚的になんだろうが、それは誰にでもできる事じゃねぇ。ましてや発動してる魔術を視認出来るなんてのは俺は聞いたことがねえ。あのレガシィでも出来なかったしな」


「レガシィ……?」


聞き覚えのない名前に首を傾げるハーミリア、それでも聞き覚えこそないが、何か心当たりのある名前に眉を下げる。


「『原初』の魔術士。国に情報を提供してる魔術士。だよな、ドゥーグさん」


「ああ。まさかベインが知ってるとわなぁ」


「一応ソフィアの母……リリィナさんから聞いてたんで」


「おめえ。リリィナの知り合いだったのか」


ドゥーグはベインの口にした名前にどこか懐かしさを感じるような表情を浮かべる。

そしてドゥーグは自分にかけている魔術を解き、近くの椅子に腰をかける。


「俺とレガシィ、それにリリィナは仲間だった。俺とレガシィが戦い、リリィナは物を作り困ってる人を助けた。だが、リリィナのそれが不味かったんだろうなぁ。俺らは国に目を付けられた」


「でも、なんでソフィアのお母さんじゃなくてレガシィさんが……?」


「俺らの犠牲になったんだよあいつは。あいつは『原初』の魔術士。攻撃も創作も補助もすべての魔術が使える500年近く生きる魔術士。だからリリィナや俺の代わりにやつが国の道具になりやがった」


「でも、なんでそんな話を今……?」


「止めてほしいヤツがいるんだ。俺にはどうにもならねぇ。レガシィは動けない、リリィナの所在は不明」


「でも、ドゥーグさんにどうにもならないものをハーミリアでどうにか出来ると思うんですか?」


ドゥーグは杖を手にしながらヨロヨロと立ち上がり、ついている杖すらガタガタさせながら立っているその姿は実に弱々しいものだった。


「俺をこんな体にしたのはそいつだ。つまり力でどうにか出来る相手じゃねえって事だ」


「それっていったい……」


「そいつの詳しい話は後でする。この近くの廃城にそいつが作り出した厄介なのがいるんだが、俺も協力する。手伝ってはくれねぇか?」


「廃城の厄介なの? この街で噂になってた黒い悪魔とかいうやつですか?」


「ああ。」


今この小さな街ハストリアには厄介な事件が起きている。国の兵士も何人か対処に向かったが、廃城へと行った兵士は一人として帰らず。

夜にはその悪魔が街へと現れ人を襲っているらしい。幸い、夜の間だけ街に現れるため、ドゥーグが朝まで足止めをして何となっているが、それも限界に近付いてきているらしい。


「こちらは魔術士とはいえ人間。だがもはや相手は尽きることない体力の怪物。暗さで姿はよくわかってないが、あれは生き物というかも難しい」


「でも、私は何をすれば……」


「嬢ちゃんは常に俺の傷を治してくれればいい。俺は自分の体を壊すつもりで全力の魔術をかける。それでやつを力でねじ伏せる。そいつを作った本体ならこうはいかねぇが、あれは作られた道具に過ぎねぇ。壊す事は出来ずとも2度と動かねぇようには出来るだろうよ」


「そういう事なら……ベインさん。もちろんいいですよね?」


「ああ。ドゥーグさんが困ってるっていうなら断る理由なんかない」


「恩にきるぜ。今は休んでくれ、今夜も俺が何とか凌ぐ。明日の朝、あの怪物をどうにかする」


「え! けど、もう限界なんじゃ……」


「俺はハストリア最強の戦士だ。1日ぐらい何とかしてやらぁ」


始まる黒い悪魔との戦い。そして、これがハーミリア……彼女の運命を大きく変える出来事になるのだった。


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