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ハーミリアの魔術譚  作者: 茅野 遼河
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新世界の治癒の魔術士(4)

「そういえばベインさん。次に行くハストリアってどんな町なんですか?」


「小さな街だ。人もそんなに多くないが、確かそこにも魔術士がいるって聞いた事はある」


「え! そうなんですか! ぜひ会ってみたいですね」


「どんなやつなんだろうな。小さな街だし、意外ともう会ってたりしてな」


ハストリアまでの道のりはモンスターも弱く、基本的にはスライムばかりだ。ベインが群がるスライムを次々に始末しながらハストリアへと向かうハーミリアとベイン。


「そういえばあの猫は良かったのか? お前に懐いていたのに」


「旅に出るには危険すぎますよ。お母さんが飼ってくれるとは思ってもみなかったですけど」


「そうだな。確かに連れて行くにもまだ小さすぎる。俺もお前のフォローで手一杯だしな」


「す、すいません。あっ、あれですか? ハストリア」


木で作られた柵こそあるが、白い塗装をされた建物が数えられるだけ見える小さな街があった。

大きな風車や街中を流れる小さな川、どこか落ち着く雰囲気があった。


「ああ。あれがハストリアだ」


「そうなんですか! じゃあ、早速……ってスライムが! スライムがいっぱい!」


「ちっ。流石にこの数は厄介だぞ」


「ふんっ!」


しっかりと鍛えられ大きな筋肉質の男性。白い髪はしっかりと固められオールバックになっていて、白い髭が整えられている。

右目は傷跡により見えない様子。

そんな一見鍛えられた年配がスライムを拳一つで倒してしまうのだからハーミリアもベインも驚く事しか出来なかった。


「大丈夫かぁ?ガキ共……ってベインじゃねぇか」


「あ、ドゥーグさん!」


「え……? え? 誰」


「自己紹介はあとだな。ちょっと待ってな嬢ちゃん」


ベインは銃で、ドゥーグは拳で群がる大量のスライムを次々に倒していく。ベインももちろん凄いが、銃を使って倒すベインの横で拳一つで次々になぎ倒すドゥーグの姿はより凄くハーミリアの目には写るのだった。


×××


「ふぅ……っ!それにしても久々にあの数を相手にすると疲れもするもんだな」


「ドゥーグさんでも疲れるんですね」


「あ、あのそれでベインさん。そちらの方は……」


「俺はドゥーグだ。ベインにはよく剣のメンテを頼んでる、いわゆるお得意さんってやつだ」


ベインの肩をガシッと強く叩くように掴み、少し笑いながら自己紹介をする屈強な男の名はドゥーグ。

ベインの鍛冶屋のお得意さんであり、ハストリア1の戦士でもある。


「すごいですね……ドゥーグさん」


「若い頃はもっと凄かったんだがな! 俺も老いたもんだ。それでベイン。俺の剣、どうだった?」


「まさかあんな綺麗に真っ二つとは思いませんでしたけど、元通りですよ」


「おおっ。こりゃあ見事なもんだ……?のう、ベイン。」


「はい?」


「これは本当にお前さんが直したもんか?」


ドゥーグは自分の剣を隅々見渡していると、途中でその顔付きは険しいものとなり、ベインを睨みつけるような形になる。


「ドゥーグさん。なんでもわかるんですね、実はそれ、こいつ……ハーミリアが直したんですよ」


「嬢ちゃんが……。お前ら旅に出てる様だな。疲れてるだろう、家に寄っていかないか?」


「あ、それは是非。俺はもうクタクタで」


「ああ。そうだろう。ついて来い」


ベインとハーミリアはドゥーグに案内され、ドゥーグの家へと足を運ぶ。

小さな街はみんなが知り合いのような雰囲気に包まれており、とても心地の良い街だとハーミリアは思った。


×××


「ふあーっ! つかれたぁー」


「お前はほとんど歩いてただけだろ」


「お前は厳しいやつだなぁ! ベイン。まあ、んな事より、だっ。嬢ちゃん、魔術士だろ」


「ぶふっ!」


「べ、ベインさん汚いですよ!」


ドゥーグに出されたお茶を盛大に吹き出し、あちらこちらをお茶だらけにするベイン。

それを必死にタオルで拭き取るハーミリア。


「その反応……ビンゴってとこか」


「いや、ドゥーグさん。なんであなたが、その魔術士の事を……」


「ああ? お前、この街に魔術士がいるかもってのは聞いた事あんだろ?」


「いや、まあ」


「普通の人間がいくら強くたって拳一撃でスライムを倒せると思うか?」


ドゥーグは立ち上がると手元にあった何十キロもあるダンベルを片手で持ち上げベインを見下ろす。


「俺がこの街の魔術士ってやつだ」

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