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第7話 逆鱗、刹那、剣閃―――― ~A girl who is just like a beast~

 たいへん長らくお待たせいたしました――――!!最新話です!!!いやー、もうようやっとかけたって感じですよ、ほんとに。最近というかいつも、テストとレポートに追われてるので、ほんとに描く暇なかったんす!!つらかったーーーー!連日一桁台を刻み続けるアクセス数をなすすべもなく見るしかない日々ーー!でもそれはもうこれで終わりだ!!(もうすぐ期末)まあ、今回も前後編に分けるとか言って、堂々と破っているのですが……。何はともあれ是非とも最後までご覧ください!!

 感想とかくれるとうれしいです!!




 人の上に立つものというのは、決して自分の本心のすべてを他者に明かしたりはしない。




 嘘をつくということではない。彼らが生きる世界にとって、信用は絶対だ。一度自分の言動が嘘だと露呈させてしまったものは、たとえその後どんなに誠実にふるまったとしても、”嘘つき”の色眼鏡で見続けられてしまう。



 ポーカーフェイス。


 ブラフ。


 狂言、etc……。


 自分の本心を悟らせず、なおかつ嘘はつかずに、一切へま(・・)をやらかさずに立ち振る舞う。それが出来ないのならば、人を統べる立場の人間としてはよくて二流止まりだろう。


 本心を悟らせない。『大物』と呼ばれる者たちはそのためならば、自分でさえも利用する。老害といわれようが、狂人といわれようが、幼子といわれようが、結果的に自分の目的が悟られず、頓挫しなければそれでいいのだ。いわば、処世術の基本ともいえる。



 紅葉院 有栖は、真の意味で純真無垢であったころである5歳の時からそれを叩きこまれ、一年後にはそれらのすべてを制御する術を身に着けていた。たとえ自分よりも数倍年齢が上の相手であっても決して物怖じすることなく、自分のペースに巻きこむ。



 か弱く、優しく、暖かく。



 たとえ重要な取り決めの最中であったとしても、彼女はめったにその鋭い一面を表に出すことはない。普段の彼女は、大企業のトップの面影など影も形もない、年相応の幼い少女なのだ。


 

 

 






 なので、彼女がその本来の鋭敏さ、冷徹さの片鱗を見せるということは、それだけ重要なことであるという証拠であるのだ。



「確かに、貴方様は以前のあなたと比べたら『甘く』なっているといっても過言ではございませんわ。かつて、あの子が傷つけられたとき、それを企てた少女たちを罰せず、あの子が望むままになさったことが何よりの証拠です。貴方様ならば、決してあの少女たちを許しはしなかったでしょう。貴方様が、かの数学教師に沙汰を下したように……」


 普段の鈴を鳴らしたような流麗な声色が、さながら極限まで研ぎ澄ました刀のごとく、目の前の老人を貫く。



「……フン」



 蓼園 肇が不快そうに鼻を鳴らしたのは、件の数学教師を思い起こしてしまったからであろう。その教師は、蓼園 肇が必死で守ろうとしている少女を辱め、愚弄した卑劣漢である。



 蓼園 肇は、少女が傷つけられたと聞いた途端、すぐさま彼を追放するように命じた。


『どうして施設の子だった餓鬼が、総帥をバックに付ける事が出来たか想像できるだろう!?』


『立花! お前はどうやって取り入った!? 体を開いたんだろう!? 犯されたんだろ!?』


彼は、自分が少女を護るために派遣した護衛が録音した、甲高い男の喚き声を初めて耳に入れたときのことを今でも思い出す。


 今まで、自分を陥れようと、根も葉もない噂をばらまく輩や、憎しみや嫉みの感情をぶちまけるために喚きたてる人間は数多くいた。


 それらの中でも、特に記憶に残るほど、その出来事は、その下衆は彼を不愉快にさせた。



「しかし」



 過去を追想する目の前の男を引き戻すように、やや大きめに言葉を発した紅葉院 有栖。

 


「しかし、軟弱になるということが悪いことばかりであると決めつけるのは愚かなことです」



 彼女の護衛は、雄弁に語る主を無表情で見下ろす。蓼園 肇の秘書は顔を伏せる。



 当の総帥はといえば特に理由もなく耳をほじくっていた。



「先ほども言ったように、かつて貴方様は自分の胸の内に秘める野望に向かって突き進んできました。それが何かについては触れませんが、その過程で必要とあらば、ありとあらゆるものを犠牲にしてきましたわ。仮にそれが自分の大事な何かだったとしても、何のためらいもなく。それはなぜでしょう?」



 誰も何も応えない。少年も、女性も、老人も。誰も何も言葉を発さず、その次の言葉をただ待つのみ。



 そして、彼女は答えを述べる。







「————それは、貴方様が真に大事に思っているもの、これだけは絶対に失ってはいけないものがなかったからですわ」



 一瞬、ほんの一瞬だけ、蓼園 肇の眉がピクッと動いた。




「人は、絶対に失ってはいけないものが出来た場合、当然何よりもそれを優先して守ろうとします。それが唯一無二のものであるというのならばなおのことです」




 ここから先は地雷だ。普通の人間でも流石にそれは察することができるだろう。




「今まで、貴方様にはその弱点が存在しなかった」



 しかし彼女は止めない。



「いや、それを持ったことがなかった」



 止めない。



「『蓼園の首領(ドン)』と恐れられた蓼園 肇の無敵性はそのような子供だましのからくりでできていた」



 目の前の老人の性質について語るのを止めようとしない!!


 いつの間にか、紅葉院 有栖は自身の語尾のですます口調を崩していた。




「しかし、貴方様は出会った。出会ってしまった。あの少年に……」




 そして蓼園 肇も、もはや好々爺然とした雰囲気も、とぼけた老人も演技しようとはしなかった。



「その結果、貴方様には『あの少年とその周囲の人間』という決定的な弱点が生まれた。しかし、それは弱点でもあり引き金、決して触れてはいけない逆鱗と化した。それはある意味———」



 今の彼は————今の彼はまさに—————







「それはある意味、貴方様にとって一種の強み、武器となった。自分の感情をコントロールし、ただひたすらに冷酷に、合理的な思考を巡らせることが出来る思考回路が出来た。」







 一匹の修羅と化していた———————!!




「例えば、もし―――――」




 そして彼女はあえて踏みに行ってしまう。






 決定的な地雷、蓼園 肇最大の弱点を―――――!





「例えばもし、私が彼女を害そうとしたのならば―――――」






 パチン


 その音は、少女の話を聞いていた無表情の老人の指の先から発せられた音だ。



―――――――刹那。



 それとほぼ同時、いや、まるで同時だと錯覚してしまうほど、あまりにも素早く、凡人の五感では全く認知できないその一瞬で―――――。










 …………10mm、いや3mmだろうか。










 ――――闊達にその舌を奮っていた紅葉院 有栖の首筋に刃が向けられていた。




 あと少しでも奥まですすめば、幼い少女の首は飛んでいたことだろう。



 その刃は刀身の中央辺りを彼女の護衛によってただ掴まれていた。



 彼は、防刃手袋を着用していたので、刀身を掴んでいてもその手が斬り飛ばされることはなかったのだ。



 そして、その彼が悲しそうに見つめる先、この凶刃を繰り出した張本人の方には――――









 1人の少女が居た。

 

 年頃の女子特有の香りを漂わせる金色(こんじき)の髪をふんわりとたなびかせ、さすがに紅葉院 有栖ほどではないが、真っ白でぷにぷにとやわらかそうな肌は、さながら元旦についた餅のようなきれいさである。体格は小柄で、ハムスターのような、ウサギのような、どことなく小動物を連想させた。


 年齢は15、いや、13歳くらいに見えてもおかしくはない。


 何処かの学校の制服だと思われるピンク色のカーディガンに緑のリボン、紺色のプリーツスカートから覗く足は、健康的な肉感と色気を醸し出し、同年代の女子より一回り大きい胸は、その幼い外見とのアンバランスさによって、どことなく危うい印象を受ける。


 紅葉院 有栖や、蓼園 肇の秘書とはまた違う魅力がある実にかわいらしい女子高生だ。



 そんな、どこかの週刊誌のモデルをやっているといっても納得できるような少女は今―――




「やめろ、ユリ」



 刃長60cm弱の打刀を抜き放ち、その目に一切の情を宿さず、ただ目の前にいる標的を討ち倒さんという鋼の意思を持って―――











「は? もとはといえばそこのお嬢様が煽ってきたせいでしょ。おかげで抜きたくもない刀を抜かされてんだけどこっちは」



それを邪魔した少年を睨んで居た――――。


 



 

 

 総帥という人物を自分なりに評してみました。一応りょーさんからはOKもらってるんで大丈夫だとは思うのですが、後でとんでもない爆弾とかあったらやだなぁ…と思いつつ仕上げました。有栖ちゃんドヤ顔で言ってるのでどんでん返しで大外れは悲しいよ…。


 あとはまあ、ようやっと主人公の一人が登場です。とりあえず彼女について書かないと始まらない。もう一人のほうはもう少しお待ちください。


 誤字脱字、矛盾点などがございましたら、ぜひご報告ください。

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