第4話 そうなのか!なるほどニュース ~Let's start sukiyaki party!~
投稿遅れて申し訳ごさいません。この回苦戦しました。普段池〇彰見ないので……。へたくそですみません。半脳少女はストーリーが濃密なので苦労します……。
9/21 22:00 文章がひどく乱れていたので、一部修正しました。話の内容に影響はないのでご安心ください。
11月4日 土曜日
「おとうさーん、ご飯だから降りてきてー!」
「はーい、今行くよー」
土曜日。今日は仕事が休みだったので一日中家でゴロゴロ過ごしていた。もうそろそろ腹がいい具合に空いてくるころ合いだ。
一階から聞こえてくる娘の声に呼ばれて降りてくると、すき焼きの食欲を刺激するにおいが俺を包んだ。
「おおー! すき焼きか! いいねぇ~!」
広く四角い食卓に乗っている鍋にはぐつぐつと野菜が、白滝が、そして肉が鍋いっぱいいっぱいに煮込まれていた。
なんとまあ、こんなにたくさん。お財布大丈夫?
「今日牛肉が安かったから、奮発しちゃった」
そういって妻はあざとく、いや、可愛らしく舌を出す。もう30も半ばになる女が何やってんだか。可愛いからいいけど。
「もうおなかペコペコだよ~」
そういう息子たちはすでに食卓に着いていて、俺が席に座るのを今か今かと待ちかねている。我が家はみんなが席につくまで食べてはいけないという決まりがあるのだ。はいはい、そんな子犬みたいな目でものほしそうに見つめなくても父さんはちゃんと座るから。
まあ、そんなこんなで全員が食卓に着く。これが日常、これがよくある週末の一場面。なんてことのない食事風景だ。
「「「「いっただっきまーす!」」」」
家族みんなで手を合わせ、お肉争奪戦が始まる。
「お肉もーらい!」
先手を打って出たのは息子だった。
「あ~! お兄ちゃんずる~い! 私もお肉食べる~!」
「こーら、喧嘩しないの」
娘が兄と張り合うように肉を掻っ攫っていく。
「「だってぇ~」」
「もう……ほら、お父さんもなんか言ってよ~」
「別にいいだろ、そんなの。食え食え。早い者勝ちだぞ~」
「「あ~! お父さんが一番お肉たくさん取ってる~!」」
「はっはっは、早くしないとお父さんが食べつくしちゃうぞー」
「「ずっる~い!!!」」
目の前で繰り広げられるわが子たちの可愛らしい肉の取り合い(戦争)を傍目で見守りつつ、肉の感触をゆっくりと味わう。
うん、美味しい。やっぱ肉は国産だな、外国の肉は安いがマズくてとても食べられたものじゃない。無論いつも食べられるわけではないが、たまにだからこそいいのだ。毎日国産の肉をふんだんに食べるとその味に慣れきってしまう。美味しいものを美味しく食べるには頻度の調節が大事なのだ。
そんなどうでもいいことを考えながら、俺は近くにあったリモコンでテレビの電源を入れた。
『さて、この話題については皆さんも一度はテレビで聞いたことがあると思います。えー、このところ『再構築』という言葉が注目を浴びています。今日はまあ、そういった話を取り上げるのですが、これはそもそも一体どういうものなのか、またこの現象が我々に及ぼす影響とは何なのかについてをメインとして解説して参ります。今日は皆さん、どうぞよろしくお願いいたします』
ああ、この時間だったっけ。
この時間は、とある有名なジャーナリストがMCを務め、最近の社会問題などの様々なニュースをゲストの芸能人と一緒に解説する、といったコンセプトの番組だ。案外為になる情報も多く結構気に入っている。
どうやら今日のテーマは今話題の『再構築』のことらしい。
『そもそも、この再構築、という言葉がどうして今話題になっているのか、皆さんはご存知ですか?』
『えーっと、確か……』
『なんか、男の子が…ね?』
『女の子になっちゃった……んだよね?』
『そうそう』
若干自信なさげに断片的な答えを出すゲストたち。自分も実はよく分かっていない。確か…
『まあ、確かに大体はそうですね。えーっと、『蓼園 肇』という名前は~皆さんご存知ですよね?』
『ああ~』
『蓼園グループの……』
『総帥……だよね』
『はい、現在の蓼園商会会長であり、蓼園グループの事実上CEOの蓼園会長ですね。えー皆さんには『総帥』という名前のほうが馴染み深いと思われます』
蓼園 肇。
無論知らないわけがない。
桜庭、波多野、紅葉院、雪ヶ原、etc……。
誰もが名前ぐらいは知っている数多の大企業。
蓼園は、その中でも上位に入るであろう。それだけ巨大なグループなのだ。
何を隠そう俺の勤めている会社の一番大きな取引先は、蓼園グループの子会社なのだ。蓼園 肇を知らないものは社会人はともかく高校生にもいないだろう。
蓼園 肇が動くということは日本が、世界が動くということと同義といっても過言ではない。……さすがに持ち上げすぎか。
『えー、実はこの『再構築』の問題には、この蓼園会長が大きく関わっているんですよ。どういうことかというとですね、彼は、去年ある一人の少年を撥ねてしまったんですよ。いえ、実際には撥ねた、というよりは、少年が轢かれた車にたまたま乗り合わせた、というもので、意図的ではない、ほぼ事故のようなものだったんですね。ですが、蓼園会長はこの事故の責任を取って、蓼園商会の会長を辞任してしまうんですね。これは当時かなり話題になりましたよね~』
『ああ~』
『あったあった』
『やばかったよね~』
その事件は俺も知っている。取引先の会長が急に辞任したとかいってうちの会社でも当時結構騒がれてたっけ。もうあれから一年以上たつのか……。
『それでですね、この事故によって亡くなったといわれていた少年、立花 優くん、ていう子なんですけれども、この優くんが実は生きていたのですよ。しかもこの時、本来男の子であったはずの彼はですね、女の子の身体になって、復活したんですね』
ええー、という声がスタジオから聞こえる。反応が薄いのは、ここまでは周知の事実であるという証拠だ。
『彼はもともと事件の当事者として蓼園会長とはつながりがあり、彼の遺族、いや、遺族と言われてきた立花家の皆様も、蓼園会長にたくさんの援助を受けていたので、元々世間からは注目されていたんですね。さらに、皆さんも一度は新聞とかで見たことだあると思うのですが、立花くんは大変可愛らしく、いやでも周囲の目を引き付けてしまうのです。だから、彼が性転換してしまったという事実は、このままだとばれてしまうのも時間の問題だったんですね。そこで、蓼園会長や立花家の皆様は、彼を「養護施設から引き取った養子」だ、と公にすることで、立花くん……失礼、立花さんだという事実から周囲の目を逸らそうとしたんですね~』
へぇ~、という声が漏れる。なるほど、長い間隠し通せたのはそういう理由があったからなのか。よく考えられてたんだなぁ……。
「おとうさ~ん、このおじさんなんて言ってるの~?」
「難しくてわかんな~い!」
ははは。お子様たちには難しかったかな?
「ここら辺の話はお前たちにはちょっとまだ早いな」
「「教えて~」」
「あ~はいはいわかったわかった。あとでちゃんと教えてやるから」
我が子たちの好奇心、恐るべし。それを大事にし続けたら将来は大物になれそうだな……。
おっと、うっかり親の欲目が出てしまったか。
そこから先は、彼がどうやって苦労して学校に復学したのか、その軌跡について述べられていた。
そして、彼女が秘密を世間に知られてしまった経緯も……。
『しかしです、えー、ちょうど二週間前くらいの10月21日にですね、とある雑誌社、主にゴシップ記事を扱っている会社ですね。この会社に、彼女が性別を偽っていたという事実を世間にさらされてしまいました。え~なぜ、秘密が知られてしまったのか。彼女はどうなってしまったのか。皆さんもご存知だと思われます』
そう、彼女は、彼女と蓼園会長のスキャンダルを探っていた記者によって、半ば脅しの形で公に曝されてしまったのだ。
雑誌社は、表向きには「病院が人体実験を行っていた。また、蓼園 肇もそれに関与していた」という疑惑を正義の心によって糾弾する記事を、実際には『再構築』を行って危篤状態から復帰した少女を曝しあげて利益を得ようとする汚い大人の欲望が詰まった記事を民間人に向けてばらまいたのだ。
その時は、今までの騒ぎの比ではないくらいに大騒ぎとなった。
その日、少女が通っていた学校は文化祭の最中だったが、たちまち動画サイトの投稿者が面白半分で学校内の生徒に事実を広め、感想を聞いて回るという事件が起き、その後、怒涛の勢いでTV局やら新聞記者やらが一気に学校に押し寄せてきたらしい。
あまりにも収拾がつけられなくなってしまい、学校側は急遽文化祭を中止し、生徒を自宅に帰らせるという処置をとった。
また、彼女が本来住んでいた家には石が投げ込まれ、窓ガラスが割れるという事件も起こっていた。
彼女の『再構築』の異常さに嫌悪を示した何者かの犯行だ。
それは、それまで彼女に集められていた羨望のまなざしは、嫌悪と好奇の視線に代わってしまったのだという他ならない証拠だった。
学校側は校長と少女の担任は真実を知っていたということを公表し、周囲の批判を浴びたが、当の校長は、
『今、貴方がたは何をなさっておられますか? 不幸な事故により、長い意識不明に陥り、目覚めた時には姿形が大きく変わり、後遺症さえ抱えていた。そんな子どもがその事実を隠して通学し、誰が糾弾できましょう? 戸籍を偽造し、隠した事には非があるかも知れない。ですが、私にはその理由はよく解ります。真実が明らかになった瞬間、貴方がたマスメディアはどういった行動を取られましたか? 今現在、彼女を……、だた1人の少女となった少年を相手に何をなさっておられますか? その胸に手を当て、自身に問い掛けてみると宜しいでしょう』
と、大勢のマスコミの前で気丈に語った。
また、少女を支える者たちは、今までの少女の生活を映したビデオを動画サイトに投稿し、「少女は化け物ではなく、普通の人間だ」という事実を周囲に理解してもらおうと画策した。
その後、彼女は家族や親しいものと共に住む場所を変え、厳重な警備の元再び生活を再開したが、やはり世間の目は残酷だった。
かつて、彼女を『学校のアイドル』だと持ち上げていた連中の大半は手のひらを返し、遠巻きに少女を観察していた。彼女にかかわった人物にちょっかいをかけるものも出始めた。
『さあ大ピンチ。そこでですね、この状況を打破するために蓼園会長は、ある計画を思いついたんですよ。それは何か、誰かわかる方はいらっしゃいますか?」
司会がゲストに向かって尋ねる。少し間の悪い沈黙が流れる。
すると突然、その状況を打破するかの如く、
『あ! わかった!』
と今話題のお笑い芸人が叫んだ。
『さて、なんでしょうか?』
『記者会見を開く!』
『正解です』
『よっしゃ!』
そう、記者会見だ。
蓼園会長は、まず辞任していた会長職に再び帰り咲いた。
『儂の復帰を歓迎しない者も無数、居るだろう。思う事もあるだろう。しかし、儂に力を貸して頂きたい。儂が今年の始め、会長職から退いた理由はあの少女の存在故だ。彼女の秘密を……、いや、彼女自身を守る為には身軽である必要があった。そして、秘密が暴露された以上、今度は権力が必要だ。困難に直面するあの子を守る為、儂に今一度、力を与えて欲しい。あの子を差別と偏見から守りたい。蓼園グループは差別と偏見の撲滅! それを強く訴え続けてきた! まさか、それを知らぬ訳ではあるまいな!?』
そう言い放ったことにより、蓼園会長に異議を唱えることは事実上差別主義者のレッテルを張られるということを周囲に知らしめた。
さらに、少女自身のイメージを改善するため、少女を記者会見の席に座らせることにしたのだ。
少女は、この記者会見を断ることも出来た。しかし、彼女は自分のために周りの人物が動いてくれていることに答えるためとでも言わんばかりにその記者会見に出ることを決意したのだ。
そして、彼女が記者会見で質問に答えている様を映した映像が流れた。
少女は、大勢の視線を受けながらも一生懸命質問に答えていた。
「かくしてて――ごめんなさい――」
「ボク――立花――優です――」
映像に写る少女は、愛らしく、健気で、どこか儚かった。十人中十人が振り返るという表現がぴったりだろう。それ故に、大勢の前で涙を流す姿は見ているこちらまでもがその感情の渦に巻き込まれそうだった。
「このおねーちゃん可愛いー!」
「おとうさん、この子、どうして女の子になっちゃったの?」
息子は顔をほのかに赤らめてテレビの画面を食ういるように見つめ、娘は俺にそう聞いてきた。気が付けがもう既に肉は半分以上食い荒らされていた。わが子ながら恐ろしい。
「たぶん今から説明してくれると思うからしっかり見てなさい」
「「はーい」」
『え~、では次に、『再構築』とは具体的に何なのかということを紹介していきたいと思います』
CMが入り、鍋の方に目を戻すと、すき焼きはほとんど残っていなかった。
この男は、ただのモブです。この先のお話にはほとんど関わりません。
FGOのボックスガチャイベントももう終わりですね……。この次も説明回です。ほんといつ本編に入れるのでしょう……。誤字、脱字、間違った文章表現、矛盾点などがございましたら至急ご連絡下さい。