表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

すし。

転生者『これが“すし”だよ!』


異世界人『魚を生で食べると、こんなにうまいなんて!

 しかも、魚にこんな種類があったとは……!

 さすなろ!』


NIOさん「……は?(憤怒)」

「よ、よくぞ私を倒したな、勇者よ。


 しかしこの私、『海のシオカラーイ』は四天王の中で最弱……四天王の面汚しよ……ガクッ」


 旅を始めて一年が経ち。

 なろ主は遂に、四天王の一角を崩しました。

 素晴らしい快挙です!


「はあっ、はあっ……なんとか倒したぞ!」


 息を切らして仰向けに倒れ込むなろ主。

 本当に強くなりましたね。

 自分のことのように嬉しいです。


「終止圧倒してましたね。

 さすなろ!」


「いやいや、奴隷ちゃんも、本当に強くなったよ……ていうかその魔法、どこで覚えたの?」


「前の中ボスが使ったのを見よう見まねで……」


「て、天才か!?」


 なろ主が私を誉めてくれます。

 嬉しくって、ちょっとこしょばいけど、ここで満足しててはいけません。


『かってかぶとの おをしめよ』


 なろ主が言っていた辺境の村『ニホン』のことわざを思い出して、私は自分のほっぺたを両手で叩きました。

 ……痛いです。


 私が一人でそんなことをしていると。

 何を思ったのか、地面に倒れこんでいたなろ主は、突然がばりと起き上がって。


「よ~し、今日は、お目出度い日本料理にしよう!

 ちょうどココは海だし、魚を取って、アレを作ろう!」


 そんな言葉を発しました。

 多分私を労ってくれているのだとは思いますが。


 ……どうせなら、ニホン料理以外が良いです。


####################


 なろ主が、生魚の切り身を丁寧に切り分け、『す』とか言う調味料で味付けされた『はくまい』にくっつけています。

 くっつける部分に塗ってる緑色の物体は、ニカワみたいなものでしょうか?


 なろ主の一連の動作はまるで職人で、目の前でリズミカルに握られていく一口大の『さかなとはくまい』は、見ている分にはとても綺麗でした。

 あくまで、『見ている分には』、ですが。


「これは、寿司っていうんだ。

 ほら、右から『サケ』『サバ』『アジ』『イカ』『タラ』だよ。

 まだまだ、どんどん握るね」



 聞いたことのない魚の名前を連呼するなろ主ですが。

 私にはそれが『アニサキス』『アニサキス』『アニサキス』『アニサキス』『アニサキス』にしか見えません。


 でも、少しだけ安心しました。

 なろ主なら、「フグの刺身だよ~」とか言う可能性もありましたから。

 ……なあんて。

 流石の『ニホン料理』でも、フグは食べないですよね。


「ご飯の上に、生のおさかな……ですか」


 げっそりする私に、なろ主は

いつもの言葉をかけます。


「まあまあ、だまされたと思って」


 うんざりしながら、ふと目を移すと。

 オレンジ色のプチプチとした宝石箱みたいな『すし』が目に入りました。


「あれ?

 このまるいプチプチ、きれい……」


「ん、それはイクラの軍艦巻きだね」


 生々しい『すし』の中で、一つだけメルヘンな物を見つけました。

 よ、よ~し。


「う……ううう~!

 え~い、ままよ!!(パクッ)」


 口の中に広がる、磯の生臭さ。

 プチプチと弾けた宝石からは、ねばねばした液体がどろどろと流れ出してきます。

 思ったのと、全然違う味です。

 もっと可愛い味を想像していた私がバカでした。

 込み上げる胃酸ごと宝石箱を飲み込みます。


「お、おえ~!!

 何ですかこれ?」


「魚の卵だよー」


 あまりにもあまりな発言に、それは、自然と出た言葉、でした。


「死ね! なろ主死ね!!」


「死……!?」


 流石に酷い仕打ちだったので、私は『すし』完全拒否しました。

 なろ主は、自分で握った二人分の『すし』を一人で食べて苦しそうにしていますが、自業自得です。

 ……ちょっと可哀想なこと、しましたかね?


 ……いえいえ、たまにはコレくらいやらないと!


 あ、でも、卵焼きの『すし』は美味しかったです。

 だからNIOさんはお寿司も好きなんだってば!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ