3:キャラメイカー戦その3
2016/08/17 7:28 重要でもないんですが、作品の根幹に関わる設定がちょっとずつ。ワルコフって何だっけ? よろしくお願いします。
「ザッ―――でもこれ、もし、売るとなると、7万宇宙ドル位にはなるのよねー」
「ザッ―――そおぉ。だからぁ、ただ捨てるのもー、もったいなくってぇ、ついつい貯まっちゃうのよねーん」
「んー―――」
彼は顔と首をひん曲げながらも、点滅するクズ武器の山を、抱えるように引き寄せ、横へ積み上げた。
ドサリ。点線で囲われ、点滅する分厚い図鑑を手にする。
「結構重いな」
点滅してはいるものの、何とかページもめくれて、細かい文字以外は読むことが出来るようだ。
ぺらぺらと捲っていき、最初の1/3くらいまでのパーツが、LV0からでも作れると確認してから、再び、最初のページから、じっくりと吟味していく。
「急に言われてもなー、キャラ作るの、まだまだ先だと思ってたからなー」
という、その声は、楽しげだ。
「ザッ―――だから、少しは攻略関連のフレーム、漁っとけっつったんだぜ」
「だってよ、中途半端に見たら、我慢できなくなるじゃんかよー」
パラパラとめくっていくと、やがて眼に留まる、体中に銃火器を括り付けた様に見える、全身コーディネートされたキャラクタセット。
「これカッケー! ……がとりんぐ・ましなり? これは? 強いの?」
『ガトリング・マシーナリー』
リボルバーソードのライバルキャラクタ。どちらかと言えば剣術の比率の高いリボルバーソードに対し、ガンアクションがメインのキャラクターっぽい。内蔵武器の装弾数が、通常の6倍。内蔵しなくても、リロードするだけで、20%増加する。
「ガドリング・マシーナリーどすか?」
「ザッ―――あてぇは、……直接攻撃が趣味なモノで、……銃器が仕込まれた手足のパーツは、……在庫が乏しいどすえ」
肩を落とす悪夢の処刑人。
「ザッ―――お約束通りの、……300万宇宙ドル分の、……キャラメイキング、……とはいきまへんなあ……」
骸骨顔で、やせ細った巨漢が、意気消沈している。
その肩をポンする、メカ猫耳を付けたヒューマノイド。
「ザッ―――だいじょおぶぅー私の―――”にゃんばる”のぉ喚装用パーツはぁ、全部ぅ、マシーナリー系を改造してぇ、作ったヤツだからぁ、そのまま使えるはずー。頭と胴体以外ならぁ、売るほどあるわよーう」
「ザッ―――わ、やったわ! ……先生ー! えらい大手柄やわぁ!」
「ザッ―――キャラメイクの時はぁ、パーツの縮尺変更もぉ、お金かからないからぁ、課金出来ない状態のぉ、鋤灼君でもぉ、だぁいじょーぶーだしー」
「これは一回決めちゃうと、もう変えられないんすか?」
開いたページに釘付けの彼。一喜一憂する、成人処刑人と成人メカ猫耳を、見もせずに問いかける。
「ザッ―――基本的には、そうどすが、……1人に付き1個だけ生成されるユニークパーツ……ってものが、この世界には有って、……それは、売買することが出来て、……誰でも装備できるモンどすえ」
「最終的には、宇宙ドルさえあれば、再キャラメイクも可能て感じか―――」
「ザッ―――そうどすな、……もっとも基本的なパーツは、……スペイスギルドの売店で買うことも出来ますよって、……どんなにケッタイな作り方しても、……ある程度は普通のキャラに……戻すことが出来ますえ」
「じゃあ、俺、これでいい! ガドリング・マシーナリー。”弾薬庫”っての?」
「ザッ―――渋いところ……行きはりますな。……了解しましたえ」
じゃ、先生、右腕と両足のパーツ提供していただけますやろか?
ゴソゴソする処刑人とメカ猫耳。
「ザッ―――顔とか身長体格は……どないしはりますかー?」
「えーっと。俺のキャラは先生のキャラと、似たような特技を持つ事になるんですか?」
「ザッ―――いいえー。先生のぉ”にゃんばる”はぁ隠し武装を駆使したぁ、格闘戦を得意としてますぅ。装備に反したぁ打撃系のスキルを伸ばすためにー、獲得リソースのぉす、べ、て、を注ぎ込みましたぁー。破産クラスのー無駄使いの賜物なのでぇー、鋤灼君のキャラはぁ、先生のとはぁ全く違うものになりますよぉー」
「ザッ―――姉さん、その話後で、詳しく追求しますからね」
うわ、マガリちゃんっていうか海賊マッチョ、マジ怖い、と画面から消えてくメカ猫耳。
「俺のキャラは、銃火器内蔵型の、汎用アタッカーって感じになりますか?」
「ザッ―――そうなりますなー、……多彩な銃火器を……器用に扱えるっていう、……本来のキャラ特性に……沿うことになると……思いますえ」
「んーっと。大剣背負った海賊に、支援タイプの魔女っ娘だろー。そしてジャングルナイフの処刑人と、先生の猫耳格闘家……」
真剣に考え込む彼。心配げに見守る真っ白い猫達。
「じゃー、体格は俺の初期ボディーそのままで、顔だけ……どうすっかな、……」
次のページをめくると、そこには、”自動機械化サイヴォーグパーツ”の広告ページが。
「ザッ―――それ、知ってるわよ、なんか、俳優の写真とか、本人の初期ボディーの顔を元にして、格好良くサイボーグ化してくれるサービスよね」
「へー。そりゃ、格好良さげじゃん」
満面の笑顔でそのページを指さし、
「じゃコレで」
―――口頭とはいえ、キャラクタメイキングを、ものの数分で終了させた。
「ザッ―――早え! 俺だって、結構悩んだってのに! 優柔不断のお前が!?」
「お前等が、もう、決まってたからだよ。同じ系統のは2人も要らねえだろ?」
「ザッ―――そっか。そういう考え方もあるわね」
まだ映像の外にいる姉を、睨みつけている、海賊マッチョ。
禍璃がキャラを作ったのは、専門家達を除けば、一番最初だ。
確かに選択肢としては、彼よりも、多種多様だったと言えるだろう。
「ザッ―――じゃ、”自動機械化サイヴォーグパーツ”は、あてえがプレゼントしますよって、……鋤灼はんの顔がコレだから、……課金承認っと」
チャリーン♪ 課金した決済音が彼にも届く。
「……一端キャラが出来てから……適応させることになりますえー」
勝手に彼の”初期ボディー”のデータがやり取りされたが、初期ボディーへの、参照までが込みの、”パーティーメンバー”締結なので、まあ問題はない。
「ザッ―――基本パーツが、一式揃って、キャラクタアカウント設定ダイアログが出たら、あてえ達の勝ちどす」
もちろん、何と闘っているのかと言えば、V.R.IDシステムとスターバラットクライアント固有の仕様、に他ならない。
映像空間の中の、処刑人の双眸が光を増したが、映像空間の小さなサイズでは、判別できないだろう。それでも彼は、気合いの籠もった返答を返す。
「はい! よろしくおねがいしまっす!」
『@C @E』タンッ♪
『@C @E』タンッ♪
『@C @E』タンッ♪
次々に受け取り、装備していく。
『@C @E』タンッ♪
『@C @E』タンッ♪
『@C @E』タンッ♪
両手両足頭と胴体。
さあ、できあがった!? と満面の笑みの彼。
その勇ましい姿。
右手が左足で、股間からは、彫りの深い映画俳優のような、渋い男前の頭が屹立している。ガドリング・マシーナリーの基本ヘッドは、4頭身の彼の動きにあわせて上下している。
「なんじゃこりゃ!」
慌てて、自分の体を動かすが、右手の左足で掴んだ、デッサン人形のままの頭が首を傾げるだけだった。
だが、その本体の動きにより、何かのスイッチが入ったらしく、テストヴォイスが再生された。
「俺の弾倉が空になるまで、立っていられるの―――かぁあ!?」
とても、格好良いハンサム声の、音声ライブラリ。歴戦の勇士の雄叫びを前に、崩れ落ちたのは、彼の敵ではなく、彼自身だった。
本来なら、ステータス画面を開けば、自分の姿を詳細に確認することが出来るのだが、今の彼にはステータス画面を表示するための、キャラクタアカウントがない。
鏡もないので、パッと見で確認できるわけではない。対戦空間に立つ4頭身の後ろ姿や、刀風達が映っている映像空間に、時折映り込む、自分の映像を見て、確認するしかない。まあ、それでも点滅する、マシーナリーの顔と眼を開わせることくらいは出来る。点滅するパーツと重なる、初期ボディーは、逆のタイミングで、半透明になっては、再び元に戻ったりしてる。
歪なデッサン人形と、初期ボディーの彼が交互に姿を現している状態だ。
「ザッ―――……それは、あかん」
「ザッ―――……そうね、最低ね」
「ザッ―――……先生、そういうのわぁ、放課後っていうか、夜9時すぎたくらいからならぁ良いと思うのぉ」
「ザッ―――おい、挫けるな! 立てってんだぜ!」
「お、おう……」
両手を付いて、挫折していた彼が、よろよろと立ち上がる。
何事かと、顔の長い猫達は、再び、にじり寄って来た。
『YOU_LOSE!』
前触れ無しの突然の、カワイらしくも気の抜けた声。
再び再び、逃げていく、猫たち。
どうも、この、『チャットで対戦! キャラメイカーズ!』には、ラウンド毎の時間制限が有ったらしい。
そして、アイテムを掴み取る度に減っていき、”装弾数1/1”を大漁に受け取っていた今、彼のライフゲージは殆ど残っていなかった。
ぼへぼへぼへん♪
ダサいBGMとともに、奥行きのある、映像空間が刷新される。
『ROUND2』
彼の戦いは、再び最初から再開された。




