6・5・1:ワルコフ対自動屋台
2016/11/20 22:12 色の表記を統一。
2016/04/28 9:03 一文削除、設定変更は無し。すみません。
2016/04/26 15:38 多少、調整。
2016/04/26 15:12 17回目、更新しました。爆誕、何ソレ? 美味しいの?
「先生、とりあえず、最悪の事態は回避って事でいいの?」
俺は、深刻そうな顔して言葉を絞り出す。
「そうねー、ワルさんが滅多な事してぇ、自動機械の群体システムにぃ異常でも起こしたらぁ、大変な事になったかも知れないけどぉ」
先生は、子供のような声で返事をしながら、小皿を人数分、並べていく。
ヴァリヴァリヴァリ!
先生の背後で、凄まじい放電が放たれる。
「アタシ知ってる、ソレ、前に姉さんが、かり出された奴でしょ?」
禍璃はテーブルに並んだ小皿に、”分厚いカリカリベーコンとアスパラがゴロゴロ入っているポテトサラダ”を取り分けている。
なんか妙に手際が良いなコイツ。
シュシュルルルルルルッ!
”自動屋台”へ向かう先生の目と鼻の先を、白い円筒が一瞬で通り過ぎる。栄養ドリンク剤くらいの大きさで、ブルーのラインが入ってる。
「そぉー、2年前のぉ、”自動機械群OS事件”はぁ、けが人一人でなかったけど、完全復旧まで3カ月かかったからねぇー」
次に先生は、出てきた”魚の煮付け”の乗った皿をつかむ。
「コレも貰いまぁす」
ゴツい腕時計のパネルを、金目鯛の、バカでかい目玉に向ける。
俺たちは緩衝エリアのほぼ中央、自動屋台と、すぐそばのテーブルを行き来している。
ピッ! チャリーン♪
ふつうの端末決済じゃ、”チャリーン♪”なんて鳴らない。
これは、スタバ内通貨の、”宇宙ドル”で払った時だけ出る効果音だ。ジオフロント内部や、その敷地都市の一部では、ほぼ公用通貨と化している。
”特区外”で、先生って呼ばれてる人が、”チャリーン♪”させてたら、白い目で見られるトコだけど、ここ”VR特区”では逆に、ステータスとさえ言える。
先生の前を通り過ぎた円筒は、複雑な軌道を描いて旋回する。吹き出す白煙を風に流しながら、テーブル下の禍璃の足の間を通り、飛び去っていく。
「でも、仮想空間からワルコフにいくら攻撃されても、実世界の自動機械には傷一つ付かねえんじゃねえの?」
と、刀風。
ドドドドガガァン!
爆発したっぽいので、そっちを見たが、ワルコフ健在。オットットットと、歌舞伎の”見栄”を切り、爆煙をかわしている。
「ソレがねえ、んーっとね。簡単に説明すると……」
先生は顎に握り拳を当てる。
”自動屋台”から、次々と発射されていく、少しずつデザインの違う白いドリンク瓶。
「私たちにはぁ、身体性って有るじゃなーい?」
先生は、右手に”煮付け”の乗った皿を持ち、左手をニギニギさせ、テーブルへ歩いてくる。
目尻を下げた刀風が、先生と同じように左手をニギニギしてやがる。
ワルコフは四方八方から飛来する、複雑な軌道のすべてを読み切り、かわしてやがる。
赤い魚の乗った皿を、俺たちが座るテーブルの上に置き、「先週ぅ、講座でぇやったところですよぉ。覚えてますかぁー?」と言って、空いた席へ座る。
その時、遠くの方から、ガシャガシャガシャンと、重いモノがぶつかる音がしたので、一斉に振り向く。ワルコフが細長い棒を地面に突き立て、周囲に雷撃を放ってた。トポロジックエンジンの”待ち状態”の放電とは比べものになんねえ範囲に飛び散ってる。
何だ、ワルコフか、と俺以外全員がテーブルへ向き直り、会食準備が再開される。俺も自動屋台の端に、くっ付いてるドリンクサーバーから、お冷やとオレンジジュースを見繕う。
さっきの重い音は、白いミサイルが地面に次々と突き刺さりひしゃげた音だ。見た感じよりも重量設定が大っきーのかもしれねー、なんて考えるのをやめ、先週の講座内容を頭の中で検索した。
「目を閉じて、自分の腕を伸ばしたときに、頭の中にある伸ばした腕の感覚、の事で良いんですよね?」
俺は、オレンジジュース3杯、お冷や1杯をテーブルに置いていく。
「んー、大体、合ってるわね。そう。その頭の中にある、素の状態の体の形や大きさや、曲がる角度ナンカの事だと、思ってちょうだい。……あれ? 先生のジュースは!?」
先生は自分の前に置かれた、お冷やを不思議そうに軽く持ち上げて見ている。
「左端のドリンクバーの所に、お酒も有ったから、そっちがいいかなと思ったんで、とりあえ……」
先生は、禍璃の顔を一瞬見て、いきなりダッシュ!
外で飲むのは止めてー! 姉さんの事、おぶって帰るのもう嫌ーよ!
先生に負けじとダッシュする禍璃。
こう言うところは、ふつうに姉妹っぽい。
ヴァリヴァリヴァリヴァリヴァリヴァリ!
またバリバリやってんのかと再びワルコフを見た。
さっきまでの、ワルコフの身長程度の金属棒じゃなかった。
それは、モールドの向こうに生えてる非暗号回線用の電波塔と同じくらいの高さがあり、最上部に何かノズルのようなモノがついてる。
爆煙と土煙が晴れ、テクテク走る”自動屋台”が丸見えになる。
ちなみに、緩衝エリアに土は無え。
「あ……」俺の口から声が漏れた。
またもや全員がワルコフを見る。10メートルほど離れた所に”自動屋台”が逃げるように走っている。
「アレが、彼ら、自動機械さんの、いわば身体性ですぅ。便宜上ぉ、リグ・モデル・スキーマとかリグ・スキーマ、仮想空間の記述言語によってはリグ・コントローラなんて呼びまぁす」
先生はテーブルに座り、黄金色の液体をなみなみと注いだコップを大事そうに置く
「それ、一杯だけだからね」
禍璃の厳しい声が先生の声に続く。
トントントーーーン!
とワルコフは棒を持ち、その場で、ジャンプした。
頂点で、スラスターに点火。
ドドドドド。
全く同じ仕草で見上げる笹木姉妹、オレンジジュースを一気飲みしながら見上げる刀風、口を半開きにして見上げる俺。
ワルコフは30メートルほど上空から、槍投げの要領で巨大な五寸釘のような……巨大なら五寸じゃねえけど―――
古い映像みてえな、横縞のノイズを出す、”自動屋台”が、巨大五寸釘に、撃ち抜かれた。
満足したのか決着が付いたのか、ワルコフは、空中で背泳ぎをしてその場から距離を取ってる。
「「「「終わった!?」」」」
口をそろえた瞬間。
五寸じゃねえ巨大な釘の耳から、天空に向かって噴射開始。
シュドドドドドッドドドドド!
噴射はワルコフの推進力と同じ色だ。けど、その勢いは凄まじく、噴射と言うよりも天空へ向かっての砲撃と呼んでもいいぐらいだ。
巨大五寸釘は沈降を開始し、”自動屋台”は無惨にも小さな爆発に包まれてく。
ぼかんどんばんどっかん!
五寸釘が地面に埋まり、”自動屋台”は地面に縫いつけられたまま、緩衝エリアの幅と同じくらいの大爆発を起こした。ソレは、破壊以外の機能を持つとは到底想像できねえ代物で、頭の中を真っ白にするには十分だった。
呆気にとられたままの俺たちに、先生が言葉をかける。
「仮想空間にー、構造身体性をー、別名保存してぇ、そこから先はぁAR映像そのものが思考しますぅ」
刀風でさえ、ビビって微動だに出来ない、凄まじい爆風の中、先生は、全く気にせず、説明を続けてくれる。暴風の中でも聞こえるのはそう言う調整機能が多少、効いてるんじゃねえかなと思う。
「そして、仮想空間からの攻撃に対し迎撃・防衛する仕組みですぅ。まあ、コレは講座で来月くらいにヤるところだからぁ、まだ、覚えなくていいんですけどねぇー」
子供みたいな声だけど、まがりなりにも、大人すげえなと、俺は、素直に感心し、先生を見直した。
その顔には……その顔には、トレードマークのメガネが無かった。
俺はARメガネをいったん外してかけ直す。
爆煙は消えたのち、再びノイズ混じりに復活した。
俺はARメガネを外して、制服の胸ポケットに畳んで仕舞う。
禍璃と刀風も俺に習う。
「やーいい天気ねえー」と禍璃。
「本当だな。一時はどうなることかと思ったぜ」いや、刀風、問題は解決してないぞ。”自動機械の群体システム異常”って、こう言う事で起こるんじゃ無えのかぁ!?
「そういや、コウベはどこ行った!?」
俺は、顧問や、部員に習って、当たり障りのない話題を振った。




