2:迎撃開始コフ その1
2016/12/11 11:42 細かい文体を修正。
2016/12/11 3:51 度々すみません、どうにも時間が開いてしまいます。その2は数時間中には投稿します。よろしくお願いします。
「電話? え? あ、俺が掛けたままかもっ」
「『カチャ♪ ―――ミミコフと呼ぶコフにゃ』」
金ピカ頭の足元、驗を振り返る、確認サイズの、ネコミミキャラクタ。その額に、☎がポコン♪
腕のデータウォッチと、頭に乗せたAR対応眼鏡の、両方から聞こえてくる、かわいらしいライブラリ音声。金ピカ頭の履くハイカットスニーカーに添えられた小さい手に、接続完了を表す矢印のアニメーションが浮かんだ。
「コフか、ニャかハッキリしねえけど、キャラ付けが定まって無え感じが、アレの中身っぽいっちゃぽいか?」
腕を軽く持ち上げ、目と鼻の先の、金ぴか頭の足元と通話する少年。
『ミミコフと呼ぶコフ』
宇宙軍正式敬礼をキメる、元宇宙服、もしくは宇宙服由来の何か。
カチッとした乱れのない動きは、ワルコフと同じだ。
通話距離が自動的に算出され、データウォッチからの音声がカットされる。AR対応眼鏡に出来ないことは、データウォッチがしてくれる。驗少年曰く”安物”でも、ソレくらいの機能はあるのだ。
『げっへへっ、……あれ? ワル……―――と思ったけど違う? ……あれー?』
変顔をやめ、眼を眇めて、映像前のフロアの床を睨みつける巨大映像。
米沢首は、ミミコフを初めて見たのだが、ワルコフに類するものだと言うことは、感じ取ったようだ。
その時、背後に映り込んでいる、白焚女史が、少年達の居る地下2階フロアを、一瞥した。
少年は硬直する。ついさっき、”画面越しの視線を正確に交え会話する”という、NPCみたいなまねを実際にやって見せたのだから、この反応も仕方無いだろう。
「おう、こ、こいつぁ、オマエ等の設計制作元でもある、”たこ焼き大介”設計師の手による、試作……えっと何番目?」
話しながら金ピカ頭の側まで歩いていき、再びAR対応面白眼鏡を掛ける。少年は金ピカに向かって、下手な目配せをした。
「へ? あ、……69番、―――じゃ無うて、……対一角獣用の……音響レンズ……を作ったから、……この子は70番目どすえ」
「そういうことだ。仲良くしてやってくれ」
ミミコフを、ワルコフと看破し、正確に識別した、NPCとしての感覚情報を、有耶無耶に出来るほど、AIは柔軟ではない。
たとえ、自己進化型の器用さを持ってしても、仮想人格上の行動原理という物がある。
現に、小鳥は、両目をビカビカ光らせて、難色を示していたが、本人が必要を感じなければ、その方向へは優先順位の変更はされないのだ。
驗と歌色、白焚とコウベ&小鳥。
映像越しの視線が、交差すること2秒。
「へー、そーなんだ、……じゃあ、オマエ、一番、稼働時間少ないから、特選おやつ買って来なさいよね。ギャーッ!」
美少女は、急ににこやかな笑顔を見せたあと、尊大で横柄な態度で、何かのカードを差し出し、威嚇した。
カードは、その辺の自販機でもクイックチャージが可能な、特区発効のスペースドル専用パスだ。ある程度は自由に、行動できるようにと、たこ焼き大介が持たせてやった物だ。
物理的には存在せず、あくまで、仮想空間での少額決済にしか使用できない。
ちなみに、可愛らしい仕草で魔法杖を構えた、PLOTーANの絵が描かれている。
「どうやら、……正確さよりも……目先の先輩風を……吹かすことに、……重きを置いた……ようどすなあ」
コウベの変顔も収まり、ほっとする金色。
「まあ後で、……試験が終わったら、コウベには、ちゃんと説明しときますよ。あれ、宇宙服の中身だって」
ワルコフの存在は、笹木講師からの厳命というだけでなく、出来ることなら隠して置きたいのだ。
”謎VR技術で特許または実用新案”という儲け話が没になるという理由以上に、ハッキング常習犯の、”@warkov”が、部員として所属していては、小言では済まなそうだからだ。
フルダイブVR環境を、インストールできる唯一のシステム、”V.R.IDシステムOS”。
ハードウエア上の量子的特性を応用した”画素”にも対応。
設計思想に位相幾何学を取り入れ、”画素”自体による並列演算を可能とした、量子ビットマシン専用のシステム。
それ自体、量子的な鍵構造となる、リアルタイム通信。”理論上宇宙最堅牢の暗号通信規格”に、幾度となく、進入し続けても、鹵獲も削除もされることなく、現在も連続稼働中の、ハッキングツールの塊。
というか、ハッキングツールそのものと言っても、過言では無いかもしれない存在。
そんな”ワルコフ”を、運営当局である、特区管理者が確認しようと思えば出来ない訳がないのだ。
運営サイドの”プレイ不介入”の原則と、興味本位で、故障個所のコードを改良する事はあっても、改悪することは無い、ワルコフの行動原理。
基礎研究の時代から存在し続けて来た割に実害は無く、むしろ、益虫のような扱いだったのではないだろうか。そうだ、そうに違いないと、推察した笹木環恩特別講師は、私利私欲のために、ワルさんを秘匿するに至ったのだ。
ちなみに、”自動屋台”の、電子防壁替わり、”別名で保存”を撃破したことは、実害にはカウントされない。即時復旧可能なイレギュラーは、ゲーマー特区では日常的に起きている。
ヒソヒソヒソ。
白焚女史を映し出す壁から離れて、小声で話す驗達。
その間に、ミミコフは壁に近寄り、壁に映し出されたカードを直接、引っ掴んだ。
15センチ弱のサイズのネコミミキャラクタが、10倍くらいの大きさの、巨大なカードを持ち上げている。
グギギギ―――分子構造的に、それほど柔軟さのないカードがしなる。
巨大映像の中の美少女は、再び顔面に支障を来した。
―――古来から受け継がれる由緒ある仮面、俗に言うひょっとこのような顔をして、壁越し? にカードを引っ張り合っている。
んぐぐぐぐ。にゃにゃにゃにゃにゃ。双方、ムキになっている。
ビョビョン!
剛性により、カードが元に戻った―――”ミミコフ”ごと。
VRーSTATI◎N地下2階、格闘ゲームと自販機の有るフロアから、姿を消すミミコフ。
「んなっ? ワルにゃっ……モゴゴ」
まだ、背中にしがみついていた、禍璃に、発言を手で封じられる笹木特別講師。
ピンク髪の猫耳メイドさんが映り込むと同時に、カメラがズームアウト。
メイドさんは、その輪郭を、全身をブルブルと振り回し、VRスケールサイズに拡大した。
ヴュワン!
とは言っても、約30センチ。倍にはなったが、実物大とは言い難かった。
「きゃーー!? まーたー増ーえーたー!」
突如、出現した、新たな、NPC反応。
白焚女史は、机の隅から、ピンク色の駒のような物を取り出した。
予定外の乱入NPCは画面から察するに、4体目。
白焚の居る作戦テーブルのある高台。
その下には、駅前にあったコンビニと同じ店構えの、看板が壁から飛び出している。
ARを駆使したVR空間ばりの、戦闘フィールドには、コンビニまでが完備されているようで、―――。
「ほらっ! 行って来なさいよ! アタシ、”烏賊飯”ね。小鳥の分は、何でもいいけど、あんまりおいしく無さそうなヤツね。あと、お金余ったらアンタの分も、買ってきていいから゛ー」
目を見開いて歯を食いしばり、鼻の下を伸ばしたり縮めたりを、繰り返すコウベ。
小鳥に脳天を突かれながらも、注文と横柄な態度は変わらない。
「こらー! 米沢首! ……その顔っ……止めなはれっ!」
再び変顔を披露し始めた、自分に瓜二つの美少女。NPC”コウベ”に抗議する金ピカ頭。そのバイザーをみた、驗少年の顔が引きつった。
接続中のAR眼鏡からは、VRHMDの中の様子を見ることが出来る。
慌てふためく声の調子から察するに、金ピカ頭も、VRHMDの中では変顔をしていたのかもしれない。
わずかながら、背丈の高くなったミミコフが、映像の中から歌色を振り返った。
全長約30センチになり、ハッキリと判別できる様になったその表情が、困惑に満ちる。やがて、野生動物の険しい表情へと変化していく。グルルル。開いた口から、覗く尖った牙。
「おーい! 鋤灼ー。コッチは取りあえず、様子身だぜ。あの、トグルオーガ勢が、どっから、どうやって、何の目的で来たのかハッキリするまではなー」
「おーう! って聞こえねえのか、……コウベ伝言しろ!」
「ふ、ふーんだ! ”げっへっへ”の言う事なんて、聞かないんだかんね」
名指しで、構われたのが、嬉しかったのか、照れる表情を隠そうとする変顔の美少女。
てめえ、まだやってんのか。俺ぁそんな、笑い方してねえだろっ!
会話型アブダクションマシン。いくら、会話を元に自己改変を進める高性能AIと言っても、稼働時間は一週間にも満たない。
心の機微と言う物を、再現できても、少年の機微に対処が出来るわけではない。
寄り目で、頬を膨らませ、顔の両サイドで、手のひらを高速回転。
歌色が再び、両手を振り回して激高する。
「アンタはん! ……そんなんどこで……覚えて来はったん? ……ええかげんに、……しなはれっ!」




