いきなり異世界転移させられる俺の気持ちも考えて欲しい件について
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俺は事故に遭った。
ゲーム屋の帰り道に事故に遭ったとこまでは不思議と覚えている。
それは置いといて・・・。
まずは俺の目の前にいるこの綺麗な女性について教えていただきたいのだが・・・
しかも俺が今いるとこってどこ?何かイスみたいなとこに座ってるし。
と俺が思案していたところで俺の視界にいる綺麗な女性は羽衣のような、ファンタジーあふれる服をたなびかせながら俺に近づくと突然、笑顔になって言った。
「あなたは異世界へと転移する許可を得ましたっ!」
「お断りします」
「えぇ!?」
女性はオーバーリアクションでそれに応じた。
「・・・理由だけ聞いても?」
「一つ。俺は引きこもりだったんだぞ?そんな奴が異世界に行ってもすぐに死ぬだけ。二つ。何で異世界転移してまで外の光を浴びなくちゃならないんだ」
「い、いやですね?あなたは今日ゲームを買いに外に出たわけで・・・」
「あぁ・・・。俺もそのことについては後悔しかない。KONOZAMAで買えば良かったものの・・・。調子に乗って店舗限定販売が欲しかったから外出したら事故ってしまった。本当にKONOZAMAだな、俺っ!」
「そ、そんなに自分を貶めないでぇ!私も一応神様なんですから私の前ではやめてくださぁい!」
「えっ?あなた神様だったの・・・ですか?」
「えっと、一応ですけど」
「マジですか・・・」
一旦会話が途切れると自らを神様と名乗った女性は後ろに振り返り、何かをめくりだした。
「えーと・・・。こんな人は初めてです・・・。『もしも異世界転移が乗り気では無い方には・・・』フムフム。なるほど・・・」
神様はこちらに振り返ると、手に持っていた紙を俺に見せてきた。
俺は上から二行目ぐらいまで見て、
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近衛雪風。汝は不運故の事故で落とした命を異世界にて再び花開かせることをここに許可する。 神様による命落とした人に対して何かするんですよ委員会より
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「いや知らんがな」
「知らんがなじゃ無くてぇ!」
神様が困っている。なかなか可愛いなぁ・・・じゃなかった。
「つまりは俺の世界にある異世界転移ものと何ら変わりはないですよね?」
「そうなんですけど・・・。あっそうだ!」
そう言って神様は目を閉じ、両手を祈るように胸の前に置いた。
しばし沈黙が続く。
1分ほどだっただろうか。
神様はおもむろに目を開けると
「委員会への申請が受理されました!ユキカゼさんは現実世界から何か一つ異世界へともていけることになりました!」
「何か一つ?」
「はいっ!何でも良いですっ!」
「といってもなぁ・・・」
「?」
「俺、誇るものといえばネトゲのステータスとかしか無いし・・・」
「ではそれでいいんじゃないですか?」
「えっ?オッケーなんですか?」
「はい。可能ですけど。ステータスということは全ての能力値にお金、外見まで持っていけますね」
「マジですか・・・!」
異世界転移は随分とユルいらしい。
「装備などは無理みたいです。すみません・・・」
「いえいえ・・・って何で行くことになってんですか」
「えっ!?い、いやだって・・・」
神様が凄く落ち込んだ顔を見せる。
うっ!そんな顔されたら断りづらいじゃん・・・。
「いやまぁ、話ぐらいは聞きますけど・・・」
途端神様は輝かしいばかりの笑顔を俺に見せる。
「本当ですかっ!良かったぁ~」
「で?僕は何て言うとこに転移させられるですか?」
「『反転世界リバース』というところらしいですよ?」
「『反転世界』?」
「はい。これの続きに書いてますよ?」
「え?」
言われて俺は見る。そこには、
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汝、転生する場所は・・・汝と世界の価値観が真逆の世界。
そこで、自らが信じるもののすばらしさをその世界で普及させることが汝の使命である。
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「・・・えっと?」
俺は理解が出来なかった。
何コレ。どゆこと?
「多分、あなたが正義だと思ってることが向こうの世界では悪なんじゃないですか?悪とはいかなくても認められてないとか・・・」
何だよそれ・・・。てことは・・・
イライラしまくる世界ってこと?
・・・・・・・・嫌だぁ!
俺は神様の方を掴み、
「ちょっとそこだけは!そこだけは勘弁してくださいよ!」
「ふえ!?ど、どうしたんですか!?」
「何ですかその世界は!?そのクソみたいな世界は!?」
「何故ですか?」
「そんな世界は現実世界と一緒だろうがっ!俺がやってることがいかにも悪みたいな感じで罰せられるんだぞ!?クソ以外の何だって言うんだよ!?」
「お、落ち着いてください!」
「落ち着いていられるかよ!」
「もうどのみちこの世界に行くしか無いのですから!」
「はぁ!?何で!?」
「この異世界転移はもともと、現実世界で罪人だった人がお仕置きの面もかねての自分の心の悪と向き合うために神様が用意したのですから、異世界転移をやめるということは出来ません」
「・・・ッ!」
自分の心の悪。
その言葉によってあの忌まわしき言葉達を思い出す。
『お前こんなの読んでんの?キモッ!』
『豚は豚らしくしゃべんなよバァカ!』
「・・・つまりはその世界にはびこる『正義』を俺の『悪』で倒せば良いんですよね?」
「そういうことになりますね・・・」
「・・・」
「あ、あのぅ・・・?」
「・・・行ってやるよ」
「へ?」
「その世界に行ってやるよ!そこで俺の『悪』を広めてやるッ!」
「そ、そうですか。ならいいですけど・・・」
俺の気迫に押されたのか神様が一瞬たじろぐ。
俺はそのリバースっていう世界で俺という『悪』で頂点に立ってやるッ!
俺は自分の体が今まで生きてきた中で最高に滾っていることを実感した。
いいぜ、燃えてきたッ!
「じゃあ神様!俺をその世界に早く転移してくれ!」
「あ、分かりました!」
神様は少し俺から離れると先ほど祈るようなポーズになると何やら呪文を紡ぎ出した。
すると、俺が立っていた場所に直径2メートルぐらいの魔方陣が出来た。
今にも発動しそうな魔方陣の中で、俺は神様に聞き忘れていたことを聞く。
「なぁ!」
「はい?何でしょう?」
詠唱が終わったのか返事をしてくれた。
「俺が神様から出された使命を達成出来れば何が貰えるんだ?」
「何でもです」
「何でも?」
「はい。永遠の命も尽きることのない財産も世界丸ごともその全部も!それだけ自分の悪と向き合うことは厳しいものになるということを忘れないようにしてください」
「・・・ハッ!だからこんなにクリア条件がムズイのかッ!良いねぇ!ゲーマーの血が騒ぐぜ!」
「・・・準備は良いですか?」
「あぁ!」
「それでは」
神様は手の平を上へと向け、言った。
「あなたが後悔しない人生を遅れますように!」
案外、この仕打ちも神様のご褒美なのかも知れない。