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その4 他プレイヤーとの交流

「未発見だと思われる新スキルを見つけました」

「……本当かい?」

「はい。そのせいでちょっと困っているんです」


 中央市街の喫茶店。その奥の個室で、俺はとある御仁と対面を果たしていた。

 青い巨人、鉄乙女団のサブマスの蒼月さんだ。


 ニワトリとの死闘(笑)の後も俺たちは普通に狩りを続け、素材を持てるだけ持って街に戻ってきた。俺もボーラを使って三人のフォローをしていたのでそれなりに貢献をしていたと思う。俺は寄生プレイで楽をするつもりだったのに、なぜこうなったのか。……まあそれはいい。

 街に戻ってきた俺は、モモに頼んでこの人に連絡を取ってもらい、密会の場を設けてもらった。その際に面倒事が発生したので相談したいことがあると言付けて、だ。


「――それで? わざわざあたしを呼んだんだ。新しいスキルを見つけました~って自慢話をしたいってわけでもないんだろ? 要件をさっさと言ってくれないかい」

「そうですね。結論から言うと、このスキルをまだ公表する気はありません」


 掲示板や攻略サイトで手芸スキルのことを報告する気はない。モモたちにも書き込んだりしないように言っておいた。


「ふぅん。どうしてだい? 独占して儲けようって腹かい?」

「それもあります」


 遠距離から足止めが可能なアイテムだ。これがあれば狩場の環境が大きく変わる。うまく使いこなせば素早いフットワークに苦戦していた相手が途端に雑魚になる。

 実際、攻略サイトを見るとニワトリはヒット&アウェイで縦横無尽に動き回るやりにくい相手だとされている。慣れると動きを読んでカウンターで沈められるが、慣れるまでが大変だ。

 それが足を奪われてバタバタ威嚇するくらいしかできなくなる。当然ニワトリ以外にも他にも有効な相手はいるだろうし、いろいろな手段が取れるというのは強みだ。


「今回の狩りの成果もかなりいい部類みたいなんですよね。ネットの他の人の話と比べるとですけど」

「まだ二日目なんだ、慣れるまでは安定しないもんさ。うちの新人もひいひい言いながら泥にまみれているよ」

「なるほど」


 経験豊富なβテスターたちが指導してくれる鉄乙女団のメンバーでも、やはり多少は苦戦するものらしい。まあ、普通に考えて日常で狩りをするような人種はそうはいないからな。うちの爺さんとかが特殊な部類なのだ。


「そういうわけで独占しようというのが一つ。もう一つは『俺が情報を独占している』と周囲に知らしめたい、というのがあります」

「おや、いいのかい? そういう奴は叩かれるもんだ。公開しろという連中があんたの所にわんさか押し寄せてくるかもしれないよ」


 楽しげに言う蒼月さん。まるで心配なんてしてやいない。


「今更ですから。掲示板で晒されまくりじゃないですか、俺」

「あはは、確かにね! そりゃそうだ!!」


 そう、何を隠そう、俺はすでにネットで晒されているのだ。VRMMOで一、二を争うくらいの有名人だと思われる。

 当然、その原因は昨日の武器屋での発言だ。

 あれがいつの間にかネットのまとめサイトに載っており、俺の外見や喋った内容が大きく広まっていた。

 モモたちへの追求をかわす為の、ちょっとした目隠しくらいになればと思ったのだが、まさかリア充爆発しろがスレの半分を埋めるとは思わなかった。


 しかも言った記憶のないことまであれこれ付け加えられていて、尾びれ、背びれ、胸びれをつけた後に滝を昇って龍になったくらいに噂が一人歩きをしていた。

 『こいつらは俺のもんだ。お前も俺についてくればVRマシン買ってやるぜ☆』が口説き文句の成金バカ男らしい。言ってねえよ。お前が誰だよ。星を飛ばすな。


 昨日、家で初めて見た時は軽くブルーになった。食欲がなくて思わずイワシを半分父親にあげてしまったくらいだ。

 今朝になって後悔したけど。朝食に出てきたがやはり美味かった。


 ……まあ、話を戻すが、そういう状況なのだ。

 そんな俺が今更新スキルの一つや二つ隠匿したところで評判は大して変わらない。むしろ世間の目が俺に集まるならもうそれでいいんじゃないかと、悟りの領域に達してきたところだ。


「俺はいくら晒されようが叩かれようが構わないんですよ。ただ、モモたちが変な連中に狙われるのは勘弁してほしいなと」

「それでうちってことかい。ずいぶんと調子のいいことを言うねえ!」

「すみません」


 目の前の大巨人がサブマスを務めるギルド、鉄乙女団。

 ゲーム内で初めてギルドを設立したことでも話題になっていたが、とにかくメンバーや知り合いの女性の保護に力を入れていることでも有名らしい。

 私たちはゲームを遊びに来ているのだ、ナンパ行為はお断り。

 それがこのギルドのメンバーが掲げる指標であり、ナンパ男への対処法もかなり容赦のないものだという。

 このギルドのサブマスとモモたちが旧知の間柄だと知られれば、モモたちに変なちょっかいを出す輩も減るだろう。


「けどねえ、しっかり守りなって言った途端にこれかい」

「……すいません」


 ちくりと嫌味を言われたが、他にいい方法も思いつかなかったし、俺にとってはそんなに悪い結果ではない。あとは目の前の老婆を納得させることができれば解決だ。


「……それで、さっき言わなかった新スキルなんですけど」

「おや。教えてくれるのかい?」

「ええ、これなんですけど」


 インベントリから一つのアイテムを取り出す。

 ボーラではない。どこにでもあるようで、けれど今までこのゲームにはなかったもの。


 ――【ロゴの花冠】 筋力+2・・・・


「手芸のスキルです。これは草原で取れる花で作ったものですけど、花の種類によって効果が変わる装備品アクセサリーみたいなんです」


 ――【ナニーの花輪】 速度+1・・・・

 ――【ドリアンの花の首飾り】 毒耐性+3%・・・・・・


 テーブルの上に様々な効果を持つアクセサリーを並べる。ひとつひとつの効果は【装飾】スキルなどで作成したアクセサリーと比べると低い。

 だが、アクセサリーは両手、両足、頭、首に装備ができて、その効果が重複する。数を揃えればバカにならない。

 そして、手芸で作れるアイテムは素材代がかからず、器具も必要なく、作ろうと思えば誰にでも作れて量産が容易い・・・・・・のだ。

 ろくに装備も整っていない大人数の新規プレイヤーを抱えるギルド向けのスキルだと俺は思う。


「この情報を対価に、お願いできませんか?」


 サブマスという立場なら、きっとこのスキルの有用性を俺よりももっとしっかりと理解できるんじゃないだろうか。

 いくつかのアイテムを手にとって、蒼月さんが真剣な眼差しでその性能を確かめる。


「……なるほどねぇ。ちょいとうちのギルマスと相談させてもらうよ。これはもらっていってもいいのかい?」

「ええ、見本みたいなものですから、どうぞ持って行ってください」

「そうかい。ありがとよ」


 俺が作ったアクセサリーが蒼月さんのインベントリに消えていく。

 後は結果を待つだけだ。



 最悪、情報だけ持ち逃げされても困らない。

 というか、もしも断られたら新スキルを発見したのは鉄乙女団だー!と言いふらす気満々なのだ、こちらとしては。

 面倒事は人に押し付ける。これこそが寄生プレイの真骨頂である。

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