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ツライ……俺が美少女すぎて。  作者: ハリネズミ
Ⅱ.美少女な俺、学園に入る
5/17

5.ツライ……ツレが可愛すぎて。

「おはようございます。お隣、よろしいかしら?」

 

 翌日。

 食堂で朝食をとっていると(食事は食堂でいっせいにとる。いろんなものが大皿にどっさり乗っていて、それを好きなだけ取る形式だ。)、

 ブロンドの美少女がウィルに話しかけてきた。細くてきりりとした眉毛と高い鼻が、いかにも気位の高いお嬢様っぽい。

 

「ネネ、おはよう。空いているさ。さ、座って」

 

 おおう、サッと立ち上がって椅子を引いてやるなんて……。紳士教育ぱねえ。

 あと、すかさず給仕が来てちゃちゃっと準備してしまうのもすげえ。ここ寮だよね?高級レストランじゃないよね?

 

「あれ、ルルも妹ができたのか? さ、お座りお嬢さん」

「え、あ、その……」

 

 ウィルがそう言いつつルルが連れてきた子を席につかせると、ルルは自慢気に言い放った。

 

「そうよ!」

 

 いや。

 いやいやいや、違うだろ。

 なにが「そうよ!」だよ、あーもう。

 

 シャロン泣きそうじゃねえか。

 

「僕あの……僕……」

 

 子犬のように震えてウィルを見つめるシャロン。

 ちなみにシャロンの今の服装は男子制服だ。

 しかし、初等部の制服は男女とも上着はまったく同じ作りで下がズボンかスカートかの違いだから、

 パッと見シャロンは、まちがいなく可憐な美少女。どんまい。

 

「シャロン君、おはよう」

 

 仕方なく助け舟を出すと、シャロンは首が痛くなるんじゃないかってくらい

「うん! うん! おはよう!」と勢いよくうなずく。

 俺達のやり取りを見てようやくシャロンの性別に気がついたウィルは、バツの悪そうな顔をしてネネを睨んだ。

 

「ルル、男じゃないか」

「まあ、そうかもしれないわね。でもね、見てよウィル、この子の可愛らしさを!

 この蜂蜜色の甘い髪、絵画から抜け出した天使みたいだわ。知ってる? ウィル。天使って、性別がないのよ」

「まったく。先生方もまたうまい組み合わせを考えたものだよ。

 シャロン君、このお姉様にもし何か困ったことをされたらすぐ僕に言うんだよ」

 

 シャロンはポーッと顔を赤らめてウィルを見つめる。馬鹿かお前、その反応のどこが男なんだよ。ウィル苦笑してんぞ。

 ルルはある程度自慢して満足したらしく、興味の対象を俺に移した。

 

「こんにちは、妖精さん。すごいわ、プラチナブロンドなんて!

 私の一族にもプラチナブロンドは時々でるけれど、貴女くらいの歳になると色がついてしまうの。

 その瞳の色も初めて見たわ。綺麗……まるで水晶みたいね」

「ルル、次はうちのお姫様を困らせる番かい?」

「あら嫌だわたくしったら、自己紹介を忘れるだなんて。わたくしはルル=ハナッシュ=ルーズよ。あなたのお名前は?」

「シェーネ=ウュクス=グレイスです」

「あら! それじゃあ貴女が、シャロンの言っていた可愛らしいお友達?」

「ネネ様!」

 

 ボンっとシャロンの顔が赤く茹で上がる。おおー、首まで真っ赤。すごいな。

 ていうか今の照れポイントはどこだ?

 

 よくわからないのでシャロンはスルーしてルルとの会話を楽しんだ。

 だって、美少女からチヤホヤされるなんて男だった時にはなかった体験だからな。

(シャロンは知らん。あいつは例外だ。)役得役得。さあどんどん俺を可愛がってくださいふはははは!

 

 

 

 

 

 

「シェーネちゃん、行こうよ?」

「ええー……」

 

 入学から2日目の今日は、校舎の探険がメインだった。

 一日いっぱいを使って好きなところを回っていい(ただし初等部内に限る)というので、

 それすなわち一日ゴロゴロしててもいいってことだよなと解釈した俺は、手頃な中庭に腰を据えたわけだが、

 俺について来ていたシャロンがそれを許してくれなかった。ピーチクパーチクうるせえ。

 

「ちゃんと回って覚えないと、後で迷子になっちゃうよ?」

「地図はもう頭に入ってるから問題ない」

「ええっ!? すごいなあシェーネちゃん……。でもでも、ダメだよーっ」

「なんで」

「ひとりで回るの嫌だから、一緒に来てよ?」

 

 おいなんだこの甘えたは。しかしまあ、そう素直に言われてしまえば、

 精神年齢はとっくに成人を迎えている俺としては無碍にはできない。

 仕方ないなあと腰をあげれば、これまたわかりやすく喜ぶシャロン。

 こうも素直だと、将来が不安だが……まあいまどうこうすることでもないだろ。

 

 地図をみながらあちこちぶらぶらする。他のクラスの子どもも同じように探険しているので、知らん顔とすれ違うことも多い。

 ただシャロンにとってはそうではないようで、マメにひと言ふた言挨拶を交わす。そうして必ず、俺を紹介する。

 俺の名前にほぼ全員が反応するが、面白いことに、シャロンが「グレイス様から任されている」というと、

 あれこれ質問したそうにしている子どもたちはぐっと口を閉じる。どうして? なんの魔法? とシャロンに聞くと、

「グレイス様の名前を出されちゃ、そりゃあみんな何も言えないよ」と笑う。

 シャロンは素直でわかりやすいけど、馬鹿じゃない。むしろかなり賢いようだ。

 

 シャロンが試験で2位だったことを知ったのは、その日の帰り道だった。

 シャロンは俺が3位だったことを手ばなしに褒めてくれたが、続いて聞いた話で一気に胸糞悪くなってしまった。

 

『はああ!? 1位と2位には褒賞があるってどういうことだよー!?』

 

 どうやら、試験で1位だった者はエテロスを自分で選ぶ権利を、2位だった者にはいくらかの奨励金があったらしい。

 

「え、え、シェーネちゃん、それってもしかしてウラ言葉? すごい! ウラ言葉話せるの!?」

『話せても3位だよちくしょう! ああー、奨励金……ひとり部屋……』

 

 俺が1位だったら絶対『エテロスを選ばない』って選択肢をとったのに!

 

 通りで同点なのに順位をつけるはずだよ。あーあ。

 それにしても、シャロンって貴族の中でもそれなりに高い階級みたいなんだけど、じゃあ1位って、誰なんだろうな。

 


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[良い点] ルル?ネネ? シャロンの同室双子かなんかなのか? ネネって誰だ
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