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ツライ……俺が美少女すぎて。  作者: ハリネズミ
Ⅳ.美少女な俺、楽しい学園ライフ
13/17

13.もっこもこおじいちゃん

 ついつい忘れがちだが(主に俺が)、ここは国内唯一の王立学園だ。

 昔はっちゃけすぎた王様が作った広大な離宮をリニューアルし、初等部から大学部まである学園に仕立て上げている。

 通っている子供たちのほとんどが貴族の次男以下だ。領地を継がない彼らは、将来

 騎士、魔導師、魔導騎士として王に仕えるために教育を受けている。

 そんな彼らを育て上げて行くこの学園の教師達は、ぶっちゃけえらく水準が高い。

 とにかく教え上手な人から、現役時代はその道の最前線にいた人から、エキスパート達が揃っている。

 なのにどうして俺やシャロンが暇を持て余していたかというと、

 初等部一年生の教育内容と自分たちのレベルが合っていないからで、先生方が悪いからというわけではない。

 

 そうして、そんな俺たちの様子を、先生方はキチンと把握して対策を練ってくれていたようだ。

 

 

 

「初等部1年2組、シェーネ=ウュクス=グレイスです」

「おはいりなさい」

 

 

 

 促されて、俺は生徒指導室の扉を開けた。2組の担任であるモコモコ髭のおじいちゃん先生は、ちんまりとした身体をソファーに埋めている。

 

「ほれ、美味しい茶菓子も用意しておいたぞ。まあ座りなさい」

「ありがとうございます」

 

 ありがたく向かいに腰をかけると、おじいちゃん先生は手ずからお茶を淹れてくれる。

 身長が俺の半分くらいしかないので、「失礼」と言って机の上によじ登った。

 異様に小さい身体なので、同級生達が内心気味悪がっているのは知っている。

 でも、ウラ世界の小人を見慣れている俺にとっては、モコモコの愛らしいおじいちゃんだ。ていうかミニサンタ。超ミニサンタ。

 お茶を淹れやすいように手伝うと、「ありがとうのう」とニコニコ笑う。

 

『どうじゃ、学園にはだいぶ慣れたかのう?』

 

 おおおう……!?

 

『じーちゃんウラ言葉喋れんの!?』

『じーちゃん、こう見えてもウラの世界について研究している超有名な学者じゃからのう』

『まじか知らなかったわ!!』

『ふぉっふぉっ、素直な子じゃのう。ウラ言葉で本も書いてるから、今度読んで見るといい』

『ええええ読む読む、絶対読みます!!』

 

 うわあっ、うわあっ、ウラ言葉で会話したの久しぶり! テンション上がりまくりだよ!

 

 じいちゃんが淹れてくれたお茶を飲んでみると、ほんのりとウラの世界でよく飲んでた蜜の味がする。

 わあっ……。ちょっと、なんか、すぐに言葉が出てこない。

 

『お主のことは、実は、3年前……グレイスがお主を召喚してしまった時から聞き及んでいる』

『まじっすか』

 

 グレイスも、かつて学園にいた頃じいちゃん先生にお世話になったらしい。

 ウラの世界から人を召喚してしまったと、真っ青な顔をして学園にやってきたそうだ。

 

『ウラの世界については、まだまだ謎が多い。お主がどうしてウラの世界にいたのかは、

 ワシにもわからんかった。そもそも、グレイスはお主をオモテの世界の人間だと信じておるが、本当にそうなのかも怪しい』

『え、そうなの?』

『生まれは、確かにオモテの世界なのかもしれん。わからんがの。しかし、ウラの世界で、

 ウラの世界の水と食べ物で育ってきたのじゃろう? お主は、もう半分以上はウラの世界のジュウニンになっておるよ』

『お、おお……?』

 

 なんか、難しい話をされている気がする。

 確かに、俺には普通の人間と違う点がいくつかある。

 基本的に果物と野菜しか食べられないし、やたらめったら動物に懐かれる。もしかしたら他にも何かあるのかもしれない。

 

 でも、前世では普通の日本人男子だった俺にとって、自分が普通の人間であるという認識は、

 自分が男であるという認識と一緒で、なんていうか、俺にとっての基本事項で。

 どういう顔をすればいいのかわからない。

 

『…………』

『……すまんのう。ジジイがわけ知り顔で余計なことを言ってしもうた』

 

 シュンとしてしまったじいちゃん先生に、慌てて我に帰った。

 

『いやいやじいちゃんは何も悪くないよ!』

『ウラの世界大好きでの。ちょっと調子に乗ってしもうた』

 

 身体をちんまり丸くして、ヒゲに埋もれてしまうじいちゃん。ほんと可愛いなこのじいちゃん! あんたこそ実は妖精なんじゃねえのか!?

 

『さて、ウラの世界についてはまたぜひゆっくり語り合いたいんじゃが、今回の主な話は授業についてなんじゃ』

『授業ですか』

『正直な話、簡単でつまらんのじゃろ?』

『はい』

 

 即答すると、じいちゃん先生は『うむうむ』と頷く。

 

『お主のように、飛び抜けて優秀な子は時々現れる。そういった子達は、特別に、

 もっと上の学年の授業を取れるようにしておるのじゃ。――シェーネ君』

『はい』

『君にはこれから数日間テストを受けてもらう。各教科の成績を見ながら、

 実力にあった学年の授業を取れるようにしよう。ただ、1年生と比べて上級生になればなるほど授業数が多い。

 自然と、忙しくなってしまうが……その点は構わないかの?』

『暇よりはいいです』

『よろしい。それでは、今日はもう帰りなさい』

『はーい。お茶、ご馳走様でした!』

『ふぉっふぉっ、今度はウラの世界の果実もご馳走様しようかのう』

『まじで!? 約束! 約束だからなっ!!』

『うむ。その代わり、ウラの世界での話を、わしにも聞かせておくれよ』

『りょーかいっ!』

 

 鼻歌交じりに指導室を出ようとして――ちょっと、気になることがあって、振り返った。

 

『つまり、飛び級して行って、通常よりはやく卒業することもあるってこと?』

『うむ……。そういうことも、あるのう』

 

 

 じいちゃんが、なんだか悲しそうな表情をするので、それ以上のことは聞けなかった。

 

 


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