11.野郎三人でGO
日間ランキング総合2位ありがとうございます。
まさかこんなにもたくさんの人に読んでいただけるとは思わず大変驚いております。
これからも引き続きがんばりますのでよろしくお願いします。
「よーし! 実質第一回目、優良生会合をはじめる!!」
そう宣言すると、シャロンはパチパチパチと拍手で盛り立ててくれた。ふふん、悪くないな。
「シェーネちゃん気合十分だね」
「まあな! 前回は誰かが大泣きしてなんにも進まなかったしな!」
「わあああシェーネちゃんっ、掘り返さないでよ~っ!」
「あの泣っぷりは……ククッ。見ものだったな」
「セドリック様まで~!」
最近思うに、セドリックの大物感はすごい。自分にとって目新しいものは、なんでも面白いと感じるらしい。笑って受け入れてしまう。
本当は貴族の男が人前で泣くのは、子供であってもとんでもない恥だそうだが(他でもないシャロンに聞いた。)、
セドリックは「あんなに泣いてる奴を見たのは初めてで面白かった」とご満悦。
とんでもない大物。
もしくは、変人だな。
さてさて優良生会である。
俺たち三人は、優良生会用にあてがわれた部屋にやってきていた。
初等部エリアの最上階には四つの個室が並んでおり、それぞれが各学年の優良生に割り振られている。
さっき四年生の部屋の前にルルがいたのが見えたから、俺は軽く挨拶だけして通り過ぎた。
淑女らしい美しい礼だ。そこには何もこもっていない。
ルルは何か言いたそうな顔をしていたが、言葉にならないようだった。
それを待ってあげるほど、俺はお人好しじゃない。
ルルも、ウィルもそうだ。
さすがに連日セドリックの所に泊まることはできず、今はウィルとの相部屋に帰ってきている。
だから彼と顔を合わせることもあるのだが、まあ、俺は軽やかに他者として接している。
だってまだふたりからは謝ってもらってないからね。
まだまだ子供なんだし、謝ってくれたら許そうと思っているのに、まだ「ごめんなさい」がない。
もしかしたら目下の人間に謝るという選択肢がないのかもしれない。
お貴族様である。
「シェーネちゃん?」
シャロンに顔を覗き込まれる。
いけんいけん、意識がトリップしてた。
心配げにしているシャロンのほっぺをうにょーんと引っ張る。その表情はお前にはまだ早いぜ、シャロン!
「いひゃい、いひゃいよシェーネふぁん~」
「うけけ。よーし、それじゃあ最初にあれしよーぜ!」
「ううう……。って、え? シェーネちゃん、何かすることなんてあったっけ?」
「何いってんだよ、たくさんあるだろ?」
「でも、僕先生から何も聞いてないよ? しばらくはすることもないから適度に集まって仲良くなっておきなさいとしか……」
「だからー、あるだろ! 大切なやつ!」
と言いつつオモテ言葉が出てこない! なんていえば良いんだ?
えー、うー、あーダメだわからん! とにかく! つまり!
「俺たちの集まりに、名前つけようぜ!」
つまりこれって、サークルだろ? サークル名つけなきゃ!
「え、えええ?」
「だーかーらー、優良生会合なんてクソつまんない名前じゃなくて、もっとかっこいいのつけようぜ!」
「それって、意味あるの?」
『俺のテンションが、上がる』
真顔で言ってみた。
うっかりウラ言葉が出てしまい意味は通じなかっただろうが、気迫にのまれたのか、
シャロンは生唾を飲み込んで「わ、わかった……」と頷いた。よし、後はこっちのもんだ。
セドリックには確認取らなくてもいい。こいつ、なんでも楽しんじまうからな。いまだってニヤニヤして楽しそうだし。
「よーし、なんて名前にする? シャロンと愉快な仲間達?」
「イジメだよねそれ!?」
「え、気に食わない? じゃあ、大人になってから思い出すたびにのたうまちまわる系の名前にする?」
「絶対嫌だ!」
「ええー」
まあ俺も嫌だけどー。
それからいくつか候補をだしたけれど、ことごとくシャロンに却下されてしまった。なんだよー!
「わかったよ、じゃあセドリック先生のご意見を聞こう。先生、どんなのがいい?」
それまで黙って聞いているだけだったセドリックは、「ふむ」と顎に手を添える。
「――トリアで」
「うおーい、それウラ言葉で『三人』って意味じゃん安直な。もっとこう、響きをかっこ良く…………閃いたわ」
「ほう?」
「――――エストリアで、いこう」
シェーネ、セドリック、シャロン。みんな頭文字は『S』だ。だからエス。エストリア。
といっても他の二人には通じない地球でのお話なのだが……。
「うん、先生の言いなり軍団とかガリ勉ズよりずっといいと思う……」
えー。だって名前からサークル活動の内容がわかるようにするのは基本だろ?
「俺は言いなり軍団結構気に入ってるんだけど」
「セドリック様、エストリアでいきましょう!」
まあいっか。
シャロンからの大プッシュにより、エストリアに決定でーす。
その後、シャロンの提案により、室内の家具や調度品をあれこれ整えることになった。
俺は適当に寝っころがることができればどうでもいいし、セドリックも頓着していないのだが、なんか……シャロンが、本気だした。
部屋に何人もの商人が現物を持って来ては、この家具はどこどこ産の大変貴重な木材を使っていますだの、
この絨毯は最近最も流行っている柄のものだの言ってシャロンに勧めるんだけど……。
品物をじっくりと吟味して、商人にあれこれ指示をだしているところは、
いつもの『The 男の娘』然としたサマからはかけ離れてた。プロだった。なんかの。
実際出来上がった部屋は華美すぎず居心地の良いものとなっており、ぶっちゃけ自分の部屋より過ごしやすい。
もし充分な予算があれば、俺の部屋もコーディネートして欲しいくらいだった。
後は人間関係だけど、これは何とかなりそうだ。最初はシャロンが緊張してしまってあれだったけど、だいぶ改善されてきた。
うんうん。先生方のパシリ役というクソつまんないサークルだけど、なかなか、面白くなってきたじゃねえか。
エストリア、野郎三人で仲良くやろうぜ!