その一
文法やらがめちゃくちゃかもしれませんが、ご了承ください
私は恋をしたことがなかった。
した事がないというより、恋の仕方がわからなかった。
普通は「一目惚れ」とかあるかもしれないけど、私にはそんな感性なかったんだ。
どれだけ顔がいい男の人を見ても恋人になりたいなんて思わない。そんなのは遠くから見ているだけで十分だ。
とにかく私、姫塚ユウは生まれてから一度も恋をしたことがない。
「姫ちゃんおはよー」
背後から突然現れたこの子は、私の数少ない友達の一人、鈴原やよい。私の事を姫ちゃんと呼んでくる。
「姫ちゃんと同じクラスになれてよかったよー。高校生活楽しみだねー!」
そう、私たちは今日から高校生だ。今日は登校初日。どのクラスか確認した私たちは自分たちの教室へと向かった。
教室に着いてみると、早くもいくつかグループが出来ていた。中学校が同じ人同士集まっているのかと思ったら、どうやら違うみたいだ。教室では「どこの中学校?」やら「アドレス交換しよ!」などの声が飛び交っていた。
私はというと、コミュ力のある、やよいのおかげで、五人グループの仲間入りをする事ができた。私一人だったらぼっちになっていただろうな、そう思うとゾッとする。
「ねー君たちもメアド教えてよ」
声のする方を見ると、そこには数人の男子がいた。その内の一人が、皆の注目の的となっていた。
身長は180センチぐらい、髪は長くもなく短くもなく、顔はというと、うん、いわゆるイケメンってやつだ。
彼がイケメンと分かった途端、私の周りの女子は目の色が変わり「名前なんていうの!?」「次ウチと交換ね!」等、予想通りの展開となった。皆が連絡先を交換し始める。
こう、あからさまだと他の男子が可哀想になってくる。
やよいも「姫ちゃん、この人かっこいいね」と小声で言ってきたが、私は適当に頷いて彼の方を見ていた。
こうして見ると、やはりイケメンだ。中学校ではこんな顔が整っている人はいなかった気がする。いや、男子の顔はあまり見ていなかったからよくわからないが。
あっという間に彼の回りは、女の子だらけになっていた。なんだか鬱陶しそうだ。イケメンはイケメンで苦労しているんだな。
そういえば、私は連絡先交換してないや。まあ、いいけど。
「やよい、ちょっとトイレ行ってくるね」
自由時間はあと五分ほどだ。私はやよいに一言残して、教室を出てトイレへと向かった。
本当はトイレなんかに用はない。ただ、あの空気が嫌だったから抜け出しただけだ。ガヤガヤうるさく、上っ面な事ばっかり言ってるあの空間から去りたかった。こんな風に考える私は、嫌な奴なんだろうな。
私はトイレの前に着くと、中には入らず、廊下で一人携帯を弄っていた。
面白くもない、暇潰し程度のゲームをしていると、足音が聞こえてくる。足音の主が近づいてくる。その人は私と同じようにトイレの前で止まった。
その人は間違いない、さっきのイケメンくんだ。