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2人の犠牲者

気がつけば、セレナさんはその場に崩れ落ちていました。


「セレナさん?!」

私の声に反応してルカさんとカランもセレナさんを見ます。


「どうしたんだ?!」

「セレナ!?何があったの!?」

「分かりません!多分、ダメージを受けているようですわ‼私が回復魔法をかけます‼」


私たちは急いでセレナさんの元に駆け寄ります。そして私はセレナさんの手をとります。

………え?

「冷たい…?」

「「え?」」

まるで死人の手みたいですわ!?


「と、とりあえず回復させますわ‼『……この者の体力、魔力全てを回復させたまえ。リサート!』」


これでセレナさんも回復…!?

「っ!?な、何で回復しないのですか!?」


この魔法は現時点で言うと、私の残っているほとんどの魔力を使います。だから、いくら四桁といえども、ほぼ全回復できるはず!!


回復魔法は、命が短い人…要するに瀕死以上の、もう生きられない人には効かないのです。

…まさか。


ブンブンと首を横に振り、不安を打ち消しました。


そんな分けない!!セレナさんに限って…あんな、チートの塊の人が

……死ぬわけ....


「う…うぇ…う、うわあああああああん!!セレナぁぁぁ!死んじゃ嫌だぁ!!」

カランが大声で泣き始める。


「ちょ、カラン!泣かないで…くださ…ヒック」

カランにつられて私も、涙がポロポロと零れました。


「せ、セレナさ、んは死んでな、んかいませんわ!!うぅぅぅ」

何故こんなに涙が出るのですか!?


ルカさんも必死で涙を堪えてる様子。…多分、みんなのお兄さん役だから、泣かないように堪えてるんでしょう…。


何でこんなに涙が出るのか、

……本当は、わかっていますわ。

セレナさんがもう…もう…

「う、うぅぅぅ…うわぁん!!

何でですの!?何でセレナさんが死ななくちゃいけないのですか!?セレナさんは悪い事してません!!一生懸命戦ってたのに…何故ですの?」


仲間を失った悲しみ、魔王に対しての怒り、これからどうすれば良いのかと言う不安で一杯な私達に

「あの方」の声が聞こえました。


「………セレナ?」


***************************************

SIDE セレナ


……真っ暗。

何にもない。闇のみ。

これが…

──死後の世界──


「……貴様、何故いる?」

この声…

私は、はぁー…と溜息をついた。

「こっちが聞きたいよ」

ゆっくりと後ろを振り返ると、

やはり、と言うべきか。

魔王がいた。


「…さっさとどっか行ってよ」

「お前こそどっか行け」

「動けないもん」

「奇遇だな。私もだ」

「…………」

「…………」


沈黙。

…いつまでここに居れば良いんだろう?

こんなとこにずっと居るとか…発狂しますよ、私。


「おぃ…毒舌王女」

「何よ、魔王(笑)」

「……貴様…。まぁいい。呼ばれているぞ?」

「……はぁ?」

意味が分からない。ここに居るのは魔王と私だけ。

……一体誰に呼ばれているというのか。


「…バカめ。頭の回転が遅いな。…どうやら、あっちの世界の奴らがお前を呼んでいる様だ」

「………?」

「黙って耳をすませてみろ」


上から目線でムカつくが、とりあえず言われた通りにする。

すると、何かくぐもった声が聞こえてきた。


「……アーロン様!?何故ここに!?」

「あぁ…。今やっと、魔王の魔法が解けたんだ。…アンナはどうしたんだ?」

「あ…アンナ?」

「セレナの昔の名前だ。この名前を知っているのは、俺しかいない

…それで、どうしたんだ?」

「それが…魔王を倒すために、『王者の絶対魔法』を使ったのです。だけど…魔王を倒したその後に急にその場に崩れ落ちて…」

ルカが冷静に状況を説明する。しかし、その声は震えていた。

リリィとカランの泣く声も聞こえてきた。


「なん……だと?」

信じられないと言わんばかりのダー……アーロン。


「………」

「どうした?コメントなしか?」

俯いてしまった私に声を掛ける魔王。そんな奴をギッと睨む。


「う…うるさいわね!!大体あんたが……あんた…」

我慢していた涙が堰を切ったように溢れた。

……分かってる。コレがあいつと私の宿命だと言うことは。

魔王に生まれた者は、嫌だろうが何だろうが『魔王』をしなくてはいけない。

それは『勇者』にも言えたこと。

世界は勇者が女だろうが男だろうが関係なく、その器があれば誰でも良い。

だから私は選ばれた。

前世の記憶を持つ、チートだから。

結局、誰も悪くないのだ。

悪いのは、世界。

言ってしまえば、目の前にいる男も犠牲者。


「…そうだな、私のせいだろうな」

「……は?」

魔王だって自分が世界の犠牲者だって気づいているはず。

なのに……何を言っているのか?


「では、その償いとして貴様を生き返らせてやろう」

「何言って……」

「全部、悪いのは私だ。この世界の犠牲者は貴様『だけ』だろう?ならば、私の最後の力で生き返らせてやろうではないか」

ニヤリ、と口の端を釣り上げて笑う魔王。

その表情を見て、私は気付いた。


「───っ!!まさか、あんた…!な、何言ってんのよ!?あんただって犠牲者……!」

「はて、何の事を言っているのかな?……では、毒舌王女。さらば」

こいつは、一人で泥をかぶろうとして居る。そんなことをしたら、絶対にココから出られない!


「ちょっ……待って…魔王!!」

「さらば。セレナ。いや、アンナよ」

私の体が光だす。

そして私は…意識を失った。

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