プラシーボ
左向きに寝返りを打った
目を閉じた
行動ログを記録中
何かが目の前を通過したならそれを目で追っただろうよ
数日に渡る肉体労働の疲れが目に集中していて気だるさが首から上で止まっている
睡魔がやってきてそしてまた暗闇の中へ
音の無い世界を浮遊中
僕の信号を受け取ってくれるかい?
そして途方もない無反応
誰もこんな話信じないだろうね
優秀な巫女を捜している
交信が出来たら
テントを張り彼女と一夜を過ごしたい
大事な巫女様だ汚れさせてはいけない!
何者かの厳しい声が聞こえる
彼女には触れないよ
正確には触れられないだろうね
その声に応答してそのまま眠りに落ちた...
蛸の脚のように四方に別れた道を頭脳派のセイバーに乗せられ走っていた
頭脳派は大の甘党だから駄菓子屋を見つけては美味そうなパンを漁っていた
鉄風は彼に気を使い普通なチョコチップ入りのパンを選んだ
そうそう運命は常に択なんだよ
肉体派だと思った方を選んだら結果は頭脳派だった訳で
もしあっちのデブを選んでいたら肉体派だったのかなって、思うんだよね
肉体派の悪業を頭脳派から聞いた鉄風たちは彼を殺す為にミッドタウンまでやって来た
細長い煙草に火を付けて一服すると
何だかやる気が出てきた
巫女様はコレにまで念を込めて下さったのだろう
この魅惑の煙草を他の人にあげる気は無かった
己のズルさが客観的に見えるのもまた巫女の力のおかげだろう
さて、肉体派討伐に出かけた鉄風と頭脳派に廃墟の遺跡へ向かえと頭脳派を通じて巫女から命令が下った
紹介が遅れた俺はドヨだ
頭脳派はそう言い握手をしてきた
フル装備されたバックパックを2人分もらい
遺跡の外壁を登り内部へと潜入するルートを提案された
ドヨと鉄風は互いに見える範囲で行動を開始
いつ肉体派に襲われるとも分からない
こんな青空の下で死ねたら本望だろうよ
ドヨは笑いながら話している
鉄風は重いバックパックに慣れようと遺跡の地形の学習を始めた
膝を抱えて飛ぶんだ地面に落ちる寸前でバックパックのブーストが起動する
ドヨはまず自分がと手本を見せるように飛んだ
それに間髪入れずに鉄風が続く
下手をすれば3倍の重力が足へとかかる
そうなれば死んだも同然だろう
足を失って勝てる相手ではないからだ
だがドヨはトチッた
ぐあぁあ!足がぁ足がああぁあ!
遺跡内部は空洞化されていてドヨの悲鳴があちこちから木霊して返ってきた
それは亡者から死者への応答のようだった
大丈夫かドヨ!?
鉄風が駆け寄るとドヨは片頬を上げてニヤリと笑う
冗談はよせよ
ドヨは顔を引き締め暗闇の奥にサッと目を向けた
来るぞ!
亡者がイレイザーピッケルを振りかぶり襲い掛かって来る
暗闇に隠れていた遺跡の番人の数はおよそ10数体
生身で倒せると踏んで鉄風はバックパックと連動させた3倍の力を使い亡者を次々と投げ飛ばして行く
亡者の中に黒い影の付いた者がいた
タイスコクボメイチュウセリ
聞き取れたのはその言葉だけだった
何かの合図だろうか?
10数体を倒せばまた次々と亡者が現れた
遺跡はまるで亡者を製造しているかのようだ
黒影の亡者が親玉だろうか
ドヨは1-2-3でショルダーランチャーをぶっ放した
鉄風は遺跡を壊す気か!と怒鳴ったがドヨは別に気にするなと言わんばかりに2発目を放つ
さすがに俺たちも死ぬって!
鉄風は身を屈めながら亡者の攻撃をなんとかガードしている
走れ!!黒影を追えぇえ!
ドヨはドッカンドッカンとやりながら怖気付く鉄風に叫んだ
鉄風は亡者の手首ごと吹き飛んだイレイザーピッケルを右手に持つと黒影の亡者が消えて行った遺跡奥部へ駆け出した
真っ暗闇でも何故か目が見える
目にジョグラを埋め込んだ事は無かった
これも巫女の力なのか?
鉄風は優秀な巫女に守護られていると気づき心強くなった
露の滴る音か血の滴る音か判別できる程聴覚も研ぎ澄まされた
覚醒している?
そのまま息が続く限りもがくように走り
目標を追っていたが
次第に歩いていた
どこまで行けども暗闇は続いて
振り返っても何の音もしない
鉄風はとうとう呼吸が出来なくなってしまった
あなたの願いを受け入れましょう
私の中で眠りなさい
巫女は腹部をゆっくり三度撫でた 終わり




